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ハルノヒザシ

その頃図書室では…

「えー、僕も結構弱いですよー」
「いや、多分俺の方が弱いね」
俺と神田君が呑気に騒ぎながら腕相撲の自らの弱さについて語りあっていた。
望月先輩がカウンターにいるため奥で働いている俺達はどうしても気が抜けて喋ってしまう。
鬼の居ぬ間になんとやらだ。
「だってー、僕本気で今まで誰にも勝った事ありませんし」
「俺なんか小学生には負けるし、女の子には負けるし…」
二人共、一歩も譲らずいかに自分が弱いか力説する。
何してんだろ、俺達。
「じゃーそこまで言うなら一回勝負しましょうよー」
一旦作業の手を止めて、神田君が近くのテーブルを指差した。
「いいよ。本当に弱いからね。俺は…」
俺も作業の手を止めてテーブルに近づき、神田君の手を握る。
俺より手小さいな。
「よーい、ドン!」
神田君の声と共に俺は腕に力をこめる、が神田君の腕は傾く事は無い。
じわじわと俺の腕は傾いて行くけど。
うわーズルい。弱いとか言っておいて強いじゃん。
いや、俺が弱すぎるだけなのかもだけど。
ギリギリの場所で最後まで粘るが、それも長くは続かない。
遂に俺の手がテーブルへと触れた。
「やったー、初めて勝ちましたよ、僕」
嬉しそうに神田君が歓声を上げる。
それは、よかったね、と俺が口を開こうとした時

「そりゃ、よかったな」

と後ろから冷たい声。
ギョッとして後ろを振り向くとそこには望月先輩の姿。
神田君と俺の顔からさーっと血の気が引いて行く。

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あきゅろす。
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