[携帯モード] [URL送信]

ハルノヒザシ
8・(風間視点)
また、耳に響くゴキリと言う音。前田の手が先程自ら外した俺の関節をまた元の位置にはめこむ。
「…っあ…」
叫びたい痛みを俺は必死で堪えた。
戻す方が痛い。
「いい…、止めろ、自分でやるから…」
そのままもう片方の腕に手を伸ばす前田に喘ぐように言う。
片方の手が動けば、もう片方はどうにかなる。
もう、いいから。ほっとけよ。
このまま痛めつけるならいい。このまま立ち去るならいい。俺は止めない。
俺は完全に負けたのだから。
だが、くだらない情けをかけられるのが一番俺のプライドを傷つける。
「いーから。強がるなよ。素人がやると筋とか痛めるぜ」
「テメェはどうなんだよ」
「俺?、俺はいんだよ。昔沢山練習したからなー」
俺が完全に戦意喪失したのを見て、前田が気楽な声で言う。自分が圧倒的に上に居るから出せるその余裕。
しかし、練習ってお前…。
やっぱ、相当な場数踏んでんだろうな。
カキンと嫌な音がしてまだ骨がはめこまれた事を伝える。
俺は歯をくいしばり、激痛からあがりそうになる声を飲みこんだ。
「あんまりすぐに動かさない方がいいぞ」
そう言いながら前田が立ち上がり、さっさと扉を開け出て行こうとする。
「俺は警告したぞ」
最後に振り返って言う前田。
「俺は無理ってちゃんと言ったぞ」
薄く笑いながら俺が答えると前田は釈然とした笑みで俺を一瞥し教室を出ていった。

第二ラウンド
風間来海VS前田夏月

前田夏月の完全勝利

[*前へ][次へ#]

24/102ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!