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ハルノヒザシ
6・(風間視点)
不意に俺の上から前田が離れた。
「立て」
と言う前田の冷たい声。
言われなくても立ちますよ。
痛みのせいでうまく動かない上半身を支えながら足の勢いだけで立ち上がる。
だらりと下がる俺の意思では動かない両腕が揺れ、激痛が走った。
足が力を失い、その場に膝をつく。
ちくしょう、マジでエグい事するな、前田も。
しかし…
スゲーな。反則なぐらい強い。
俺だってかなり自分でも強い方だと思うぜ?
何処から来るんだろう、この圧倒的な差は。
ハハっ、敗北なんて久しぶりだな。
うつ向いたまま、ペロリと乾いた唇を舐めた。
本当に、楽しい…。
痛みが屈辱が敗北がゾクゾクと俺の身体をさいなむ。
それさえも強者と巡りあえた喜びを倍増させるだけ。
何度でもお相手願おう。
俺の闘争心が焼け尽くされるまで。
恐怖し、断念し、背を向け逃げ去るのは俺の本能が許さない。
何度でも敗北しよう。
この楽しさがまた味わえるなら。
膝をつき、顔を伏せる俺の前で止まる前田の足。
そのまま屈みこんだ前田の視線と、顔を上げた俺と視線が合う。
同じ高さにある視線。
だか、余りにも高くから注がれる強者の、勝者の視線。
何事か考えているように、一瞬前田の視線が泳ぐ。

「やっぱ、止めとこ。兄貴に感謝しろよ。そして俺にもな」

そう言って前田が俺の身体に手をのばした。

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