ハルノヒザシ
2
「俺、風間来海っていいます。今度から中三に編入してきました」
銀髪の少年が歩きながら自己紹介をする。
「ああ、俺は前田春日。高二だよ。よろしくね」
俺がにっこり笑って言うと、漢字をどう書くか質問された。
俺が春の日と書く事を教えるとへぇーと言うようにクルリとその大きな目を動かす。
「じゃあ、はるちゃん先輩ですねー」
はるちゃん先輩か…。初めてそんな事を言われた。
そうやって呼んでいいですかー?と無邪気に笑うので俺は断れるはずもなく頷く。
「俺の事はくるみちゃんでいーですからー」
くるみちゃんか。可愛いしあってると思う。
でも俺は今まであった事の無いノリでタジタジだ。
話し安いっちゃ話しやすいんだけどね。
校庭の横を通り過ぎ、高校の寮と高校ん通り過ぎ、ようやく中学の寮が見えて来た。
場所は知ってるけど入った事は無いんだよね。
「ここが中学の寮だよ」
「へー結構新しいっすねー」
俺が入り口まで案内すると、くるみちゃんはポカーンとした顔で寮を見上げる。
「じゃ、ありがとうございましたー。助かりました。はるちゃん先輩!」
「ああ、どういたしまして。早く慣れるといいね」
ペコッと頭を下げながら礼を言うくるみちゃん。
意外と礼儀正しいなーと思いながら、俺が答えるとスッと腕を握られた。
何だ?と不思議そうな顔でくるみちゃんを見れば、ニコッと八重歯を出しながら笑う顔と目が合う。
「また、会えるといいですね。はるちゃん先輩」
そう言って右腕の手の甲にキスされる。
えっ、どこの紳士?
「…!?…」
思わぬ行動にびっくりして目を見開いていると、軽く手を振りながら寮へと入って行ってしまうくるみちゃん。
あ、くるみちゃん夏と同じ学年じゃん。言うの忘れたな。
しばらくしてショックから立ち直った俺は、帰りながら呑気に考えた。
うん。深く考えないのが一番だ。
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