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ハルノヒザシ
9・※実際に存在する曲名やグループ名が出てきます。やばそうだったらこの部分はカットします。
中林さんが歌いだす。
普段より低めな、耳に残る掠れ気味の声で…。

『 In My Life 』

中林さんが歌ってて始めて知ったんだっけ。
その曲もビートルズも。
ベットの上で膝を抱えながら歌声に聞き惚れる。
始めて聞いた時からずっと好きだった曲。
中林さんがアコギ一本で弾き語りしてるのが凄くカッコいいと思った。
今も凄くカッコいいと思う。

〜過ぎて行った者達への愛を私は忘れない〜


俺も、忘れません。絶対に…。

元から短い曲だ。
あっというまに中林さんは歌い終える。
部屋に残るギターの余韻。
ふぅと息を吐き出す中林さんの吐息。
俺はなんとなく顔があげられなくて膝を抱えたままだ。

最後、これが最後。
俺が自分に言い聞かせたように。
中林さんが言ったように。
ポカンと心の何処かに穴があいたようだ。

「お前は優しーからな。正直心配だよ、春日。騙されたりとかしそうでさ」

横から中林さんの声が響く。

「夏月はその反動かなんだかあんな憎たらしくなっちゃってるけど。まぁ春日に甘えてんだろうな」

俺は顔をあげない。

「お前は誰にでも優しい。正直俺なんか一年お前を見て来てお前が本気で怒ってる所なんか見た事がない」

だって…俺は…できないんだもの。

「でもな、みんなお前に惹かれる。その優しさに惹かれてく」

…。

「俺達じゃなくてもお前の側に居てくれる奴は沢山いる」

…。

「平気だよ。春日。お前なら。何処へ行ったって」


だからそんなにずっと悲しそうな顔するな。
中林さんの手が優しく俺の頭を撫でた。


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あきゅろす。
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