[携帯モード] [URL送信]

ハルノヒザシ

玄関や風呂は片付けた。

残すは母さんの部屋のみ。

部屋の前に立った俺は小さく深呼吸をする。
六年間、この部屋に入ったのは数えるほど。
懐かしいこの場所でこの部屋だけが異質。
この部屋だけが、俺を拒む。

でも母さんはもうここには来ない。
俺はゆっくりと扉を開けた。

ここだけ他人の家のような匂いがする。

母さんが何時も付けていた香水の匂いが…。

殆ど帰って来なかった母さんの部屋は驚くほど生活感がない。

汚れていない白い壁。
汚れていない白いベット。
汚れていない白いカーテン。

その白さが目に染みる。

母さんのお気に入りの鏡台だけがこの空間から消えている。

クローゼットの中も綺麗に空っぽ。

俺はカーテンを外し、ベットから布団を外す。

全部、全部捨ててしまおう。

残されたたモノは母さんにとって必要ないものばかりなのだから。

残されたモノは母さんにとっていらないものばかりなのだから。

残されたモノは母さんにとって見捨てたものばかりなのだから。

作業を終えて母さんの部屋を出た時
俺は深い深い溜め息をついた。

[*前へ][次へ#]

24/78ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!