ハルノヒザシ
4
玄関や風呂は片付けた。
残すは母さんの部屋のみ。
部屋の前に立った俺は小さく深呼吸をする。
六年間、この部屋に入ったのは数えるほど。
懐かしいこの場所でこの部屋だけが異質。
この部屋だけが、俺を拒む。
でも母さんはもうここには来ない。
俺はゆっくりと扉を開けた。
ここだけ他人の家のような匂いがする。
母さんが何時も付けていた香水の匂いが…。
殆ど帰って来なかった母さんの部屋は驚くほど生活感がない。
汚れていない白い壁。
汚れていない白いベット。
汚れていない白いカーテン。
その白さが目に染みる。
母さんのお気に入りの鏡台だけがこの空間から消えている。
クローゼットの中も綺麗に空っぽ。
俺はカーテンを外し、ベットから布団を外す。
全部、全部捨ててしまおう。
残されたたモノは母さんにとって必要ないものばかりなのだから。
残されたモノは母さんにとっていらないものばかりなのだから。
残されたモノは母さんにとって見捨てたものばかりなのだから。
作業を終えて母さんの部屋を出た時
俺は深い深い溜め息をついた。
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