ハルノヒザシ
2
元々住んでいた頃から俺達の家には物が少なかった。
普通の家にあるであろう沢山の写真も小さい頃読んでいた本も、俺達の家にはなかった。
あるのは最低限の物だけ。
最初からシンプルな部屋だった。
でも住んでいた頃は俺の勉強道具や、夏が読みかけた雑誌があちらこちらにあり、それなりに生活感があった。
そんな中で毎朝起きて、朝飯作って、学校行って、帰って来て夕飯作って、夏と食べて、そして寝る。
時々、喜介や夏の友達が来ることもあった。
そんな生活が約六年。
高校出るまで変わらないと思っていたのに。
今、俺達の居場所はここじゃない。
帰る場所はここじゃない。
懐かしい匂いがするこの場所に
もう戻っては来れない。
もう戻って来てはいけない。
俺はリビングに立ち尽くす。
無造作に置かれた段ボール箱。 もう使う事のないダイニングテーブル。
カーテンが外された窓。
ああ…
今日俺達は
再び帰る場所を
失うのだ。
六年前のように…
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