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ハルノヒザシ


三十分後。
かなり大量に作ったカレーはあっというまに無くなっていた。
だいたいは小木さんと夏の仕業だと思う。
大学生と中学生が張り合うなよ…。
大森さんと大家さんはテレビの前で酒飲みだしてるし…。
何かごちゃごちゃだ。
何時もこんな感じだけど。
じゃあ、おつまみでも作って、その後片付けようかな。
かたんと立ち上がりながら俺は皿を運び始める。
「あっ、春日。手伝うよ」
隣の和室で小木さんと夏の取っ組みあいを面白そうに眺めていた中林さんが俺に気づいて手伝ってくれる。
「何か作るの?」
「あっ、ハイ。おつまみでも作ろうかと」
皿を運び終わり、机を拭いてきた中林さんが、冷蔵庫を覗いている俺を見ながら言う。
「春日の料理久しぶりに食べれて嬉しかったよ。相変わらず料理上手いねー」
「ありがとうございます!明日もいるんでリクエストがあったらどうぞ」
俺は引っ張り出してきた漬物を切りながら言う。
後、味噌とこんにゃくを炒めようかなー。
「春日と夏が居なくなっちゃって寂しいよ。いきなりだったもんなー。学校には慣れた?」
「ハイ、結構楽しいですよ。全寮っていうのも。ルームメートもいいやつですし」
そうか、と言って中林さんが隣で笑う。
やっぱカッコいいよなー。モテる訳だ。
「春日、口どうしたの?随分腫れてるけど」
「あぁ、これ、壁にぶつかったんですよ」
すっかりお馴染みになった言い訳を俺は口にした。
うーん。なかなか腫れがひかない。
「痛そうだね」
不意に中林さんが俺の顎を掴み上に向けさせた。
「消毒してあげよっか?」
消毒…?
スッと近づいてくる中林さんの顔。
えっ、何何?こんな展開昼にもあったぞ。
動けずにポカンとしたまま中林さんの顔を見上げる。
中林さんの目付きがおかしい。絶対酔ってるよ!この人!

「な・か・ば・や・し・さん!?」
その時突然後ろからの声。
俺達が振り向くとそこに居たのはやっぱり夏。
笑顔全開で手に一升瓶も持っている。
「なーに、してるんですか?さて、飲みましょうよ」
普段は使わない敬語の夏。
あっ、こりゃ気に触ったようだな。
「ちょっ、放せよ。お前は小木と騒いでろ!」
「嫌ですー。中林さんも飲みましょうよ。潰しますから」
夏は中林さんの首を掴まえそのまま引きずって行ってしまう。

夏、未成年の飲酒は禁止なんだよ。
俺は一人台所に取り残された。

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