ハルノヒザシ
6
「んじゃ、夏も外出届け出せよ。バスの時間知ってるか?」
ああ、と夏が頷く。
「じゃあ、寮の前でな。それじゃあ…」
「あ、兄貴ここどうしたの?」
じゃあな、と言って去ろうとする俺を夏が遮り、自分の口を指先した。
「ああ、壁にぶつかって自分で噛んだんだ」
先程黒滝さんに言った言い訳を俺は繰り返した。
「あ、そ。ドジだな、兄貴。ボサッとしてんなよ。じゃーな」
夏が手を降りながら道場へと戻って行く。
おー良かった。あんま話題にされなかったぞ。
「部活頑張れよー!」
夏の背中にそう言いながら俺はホッと胸をなでおろした。
「お待たせー!ありがとうー三好」
くるりと三好の方を振り向くと、怪訝そうな顔をした三好が目に入った。
一瞬で無表情に戻ったけど。
「弟君。今日は何だか大人しいな」
帰りながらボソリと三好が呟く。
まぁそう言われるとそうだったような。
「まぁ、部活中だったしな」
大して俺は気にしない。
「まぁ、気をつけていけよ。遠いんだろ」
「おう、お土産何がいい?アレ買ってこようか。小学生がよく持ってる観光地には必ずある竜のゴツいキーホルダー。それとも提灯?」
「いらねーよ、馬鹿」
ゆっくり楽しんで来い。
久しぶりなんだろ?
そう言いながら三好は笑った。
よし、お土産は湯飲みにしよう。
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