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木手永四郎専用部屋(短編)
欠けた時間  6/4↑








いつかこうなるって分かってた。








出会った頃から貴方はあたしの前から居なくなるってそんな気がしてた・・・







永四郎の心はいつも何処か他の物に引かれてた
あたしを見てる様で見ていない
雲のように掴めない存在をあたしはただひたすら追い続けたんだ。









永「サワー、俺は・・・」

「・・・・永四郎っ!いい、何も言わなくてもいいよ。」






突然その日はやって来て、分かっていたとは言えあたしの心は孤独感、喪失感に溺れていく
でも、泣いたところで何も変わらない
あたしの涙で永四郎が言い出した事を変える訳がない・・・・

別れよう。

短い言葉に目をそらした、永四郎は何かを言いかけたけど、それを遮った。
何も言わなくてもいいよ
何を言われても悲しくなるから・・・
愛してたなんて言わないで、寂しくなるから


別れに理由なんて要らない


「ね、携帯貸して?」

永「え・・・・あぁ・・・」


差し出された携帯を手に自分のメモリーを探し出す、自分の携帯も取り出し永四郎の名前を出すと永四郎に差し出した・・・・



「さよなら。」




あたしの言葉に悟った永四郎はボタンを押した
あたしも、メニューボタンを押しデーターを削除した。

きっと離れた寂しさでメールしてしまいそうだから




【削除しました】



その文字がまたあたしの心を悲しくさせたけど、涙は出てこなかった。
お互いに携帯を戻すと、そのまま背を向けて別れを迎えた・・・

















一人になってやっと、涙が零れた
好きだった・・・
永四郎の心があたしを見ていなくても、それでも良かった
好きだった・・・
本当に





何日かして平古場に聞いた話、


凛「永四郎嫌いで分かれたんじゃないさ〜」

「・・・・」

凛「サワー、今はテニスの事だけに集中したいからや〜に寂しい思い・・・」

「平古場っ!!!!聞きたくない!」

凛「わっさいびん・・・・」

その話が本当かどうかなんてどうでもいいんだよ
永四郎が別れたいと思った事は事実なんだから
理由なんて聞いたら忘れられなくなる・・・・
出来る事ならもう二度と会いたくない
顔も見たくない、声も聞きたくない・・・
いつまでも貴方の後姿を捜してしまいそうだよ
出来るならこんな気持ち忘れたい
もう誰も好きになんかならない




思いを振り切るように永四郎が好きだった長い髪を切った
貴方が好きだった物は全て捨てるよ
貴方が触れたものも全部捨てるよ
無かった事にしてあげる・・・








次の日理科室を出ると永四郎のクラスが移動してくるのが見えた。
すれ違うのも嫌だったから、非常階段で降りる事にした・・・・・ 













永「サワー、その髪・・・・」


永四郎は一人非常階段を上がってきてあたしを見るなり目を丸くした
あたしはその横を無言で通り抜ける、
狭い階段で少しだけ触れる制服
少し階段を降りたあたしの腕はしっかりと永四郎の手に捕まれ鈍い痛みが走る

視線を合わせる事なんて出来るわけも無い


心臓がドクンと音を立てて胸を締め付ける


永「どうして、切ってしまったんです?」

「・・・・」

永「俺が好きだったからですか?」

「・・・・・」

永「サワー」

「関係ない、永四郎には関係ないでしょ?」

永「・・・・・」


いつも永四郎を追いかけたあたしはこんな言葉を吐いた事は無かった、
永四郎の手を振り払って階段を駆け下りた
今更声なんてかけないでよ
優しい声でどうしてなんて言わないで


もう貴方の影を追わないと決めたんだから・・・








夏が過ぎた頃


女1「ねぇ〜あんた凛とより戻したの?」

女2「うん!全国終わったから!」

女1「何それ!」

女2「ん〜大会前に晴美が部員に女と別れろっていったらしいよ!」

女1「(゜Д゜) ハア??」

女2「なんでも、やった〜のホンキ見せろとか言ったらしいよ〜んでみんな一応形だけ別れたみたいな・・・」

女1「あんたそれいつ聞いたの?」

女2「凛がより戻そうって言ったときに聞いた〜」

女1「それホントなの〜?」

女2「甲斐君も知念君も言ってたし、皆より戻すみたいよ?」

女1「へ〜〜〜〜、でも良かったじゃん!」

女2「うん!も〜〜〜ラブラブよ〜!!」

女1「はいはい!」









その日の夕方委員会の仕事で遅くまで残っていたあたしは、一人学校を後にする
校門で後ろから来る足音に気づくが気にも留めなかった、疲れたから早く帰りたい・・・
足音はどんどん近づいてくる
少し怖くなったあたしは走り出した、
ヤバイ追いつかれる









腕を捕まれ怖くて声も出ない


永「サワー」

「え、永四郎・・・・」

永「すみません、怖がらせてしまいましたね。もう遅いので送ります。」

「・・・・・」

腕を離してゆっくりと歩き出す永四郎の後を少し離れて歩いた
永四郎の背中は少しだけ小さく感じた
消えそうなオーラは今はない
確かにここにいる




ゆっくりと歩く帰り道、家につくまでの間言葉を交わすことは無かった。



家の前まで行くとあたしは自宅の門を開けた


「ありがとう、送ってくれて」

永「いえ、」

「じゃぁ・・・」




















永「また明日・・・・お休みなさい。」


END


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