木手永四郎専用部屋(短編)
沢山愛して・・・・・2007/06/23↑
「別れたくない・・」
その一言さえも言わせてくれない強い瞳・・・
理由さえも聞かせてくれない・・・
ただ・・・別れてくださいとそれだけ言って部屋から出て行った・・・。
永四郎の背中が妬きついて離れない・・・・
なんで引き止めなかったの・・・・・?
今頃になって溢れてきた大粒の雫・・・
そばにいさせて・・・
何にも言わないでキスして・・・・・
髪を撫でて・・・・
肩を抱いて・・・・・
眠るまで・・・・・
隣にいて・・・・・
裸足のまま永四郎の家へ走った・・・
今会わないと・・・・
今引き止めないと・・・・・・
何もかも終わってしまう・・・・・
ケシテ尋ネテハイケナイ永四郎ノ部屋・・・・
駐車場には永四郎の車・・・・
ピンポーン〜
震える手でインターホンを押す・・・・
アタシガキテハイケナイバショ・・・・
ドアが開き・・・・
驚いた顔の永四郎・・・・
「サワー・・・どうして来たんです?」
「・・・・会いたくて・・・・」
面倒臭そうにため息を吐き・・・つめたい目であたしを見下ろす・・・・
「迷惑です!」
胸に刺さる永四郎の言葉・・・・
「別れるなんて言わないで・・・お願い・・・・」
「その話はさっき終わったはずでしょう?」
「・・・・えいしろ・・・お願い・・・」
奥で女の人の声がする・・・・
当然だ・・・・
ココは永四郎と愛妻の家なのだから・・・・
あたしは愛人・・・
愛人だった・・・・・
永四郎の性欲の捌け口・・・・・
「迷惑です!帰ってください」
バタン!!!!!
ドアの向こうで声が微かに聞こえる・・・
「誰だったの?永四郎さん・・・」
「新聞屋ですよ!」
新聞屋・・・・・
血だらけの足を引きずってトボトボ行く当てもなく彷徨う・・・・
頭の中は優しい永四郎の言葉が繰り返される・・・・
甘い言葉・・・・
優しい瞳で・・・・
いつか言ったよね・・・
この関係を終わらせるつもりはないと・・・・
愛人でもよかった・・・
貴方が奥さんと別れなくても・・・・
ほんの少しの時間でも永四郎があたしを見てくれるなら・・・・
会いたい時に会えなくてもいいと思った・・・
部屋で永四郎からの電話を待って・・・・
静かに招き入れて・・・
嘘でも愛してますと言ってくれた・・・・
心も体も溺れて・・・・
眠るまで傍にいてくれた・・・・・
もう戻らない時間・・・・・・
もう二度と触れられない・・・・・
もう明日なんていらない・・・・
何もかもいらない・・・・
これが定め?
行き着いた公園で嗚咽を漏らし意識を失った・・・・
「ゴーヤーさん?ゴーヤーさん?」
誰かがあたしを呼んでる・・・
誰?
永四郎?
やっぱり戻って来てくれたのね・・・・
「ゴーヤーさん?ゴーヤーさん?」
うっすらと目に入ってくる映像・・・・
白衣の男・・・・
知らない人・・・・
「ゴーヤーさん妊娠してますね!夜あんなところで寝てたら死んでしまいます!」
その男はただの医者・・・・・
妊娠?
あたしが・・・?
永四郎の・・・・・・
10ヶ月後・・・・
あたしは未婚のまま男の子を産んだ・・・
同じ日にもう一人、男の子が生まれた。
名札には木手の文字・・・・・
同室の彼女は木手の愛妻・・・・・
彼女が眠りについたのを確かめ子供を入れ替えた・・・・・
ねぇ・・・永四郎・・・大切に育ててね・・・・
沢山愛してね・・・・
あたしと永四郎の赤ちゃん・・・・・
沢山愛して・・・・・
あたしは入れ替えた永四郎と愛妻の子供を連れて姿を消した。
END
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