木手永四郎専用部屋(短編)
学校が終わったら・・・・・・ 2007/09/16↑(中編)編集8/23
「どうして俺に会わずに帰るんです・・・・?」
顔を上げるのが怖かった・・・・
腕を引かれ制服の胸に包まれる・・・・
「借りたものは本人に返すのが礼儀ではありませんか?」
優しい低い声が降ってくる・・・・
鼓動が耳から伝わる・・・・
太い腕がきつくあたしを包んで離さない。
こんなにも時間が止まればいいと思った事はない。
木手の左手が耳に触れる・・・・・
暖かい指先がゆっくりと髪を撫でて俯くあたしの頬を捉えた・・・
近づく吐息・・・・
家から遠くない公園の片隅・・・
誰かに見られているかもしれないとは思いつつ・・・
拒む事をしない身体・・・・
優しく触れた唇がもうどうなってもいいと・・・・
離れていく温もりに心はきゅんと音をタてる・・・
「学校が終わったら、また会ってもらえませんか?」
木手の腕の中で小さく頷くと木手は腕を緩めた。
小さなメモをポケットから差し出すと、優しく微笑んだ・・・・。
「メールでも構いませんから。」
木手はそのまま学校へと戻っていった・・・・。
あたしはその場に座り込んだ・・・・・
夢でも見ていたんだろうか・・・・
でも手の中には確かに木手のメモが残っている・・・。
080−58xx−9034
go-ya-man.xxxxx.58@xzweb.ne.jp
綺麗な文字で携帯の番号とアドレスが書かれていた。
学校が終わるまでの数時間が長く思えた・・・。
家で家事をこなしながらも心ココにあらずで・・・
あたしは舞い上がっていた。
ガチャ!!!!
「サワー・・・・」
何でこんな時間に・・・・・
「はぁ〜〜〜〜〜サワー・・・来週から中国に転勤になった。」
旦那の言葉に耳を疑った。
来・・・週・・・・・・?
中国・・・・・・・?
あたしも・・・・・?
行かなきゃいけないの・・・・・・?
「お前も付いてくるよな・・?」
「・・・・・・・」
あまりに突然の事に言葉も出ない・・・・
頭は真っ白で・・・・
「おい!!!聞いてるのか?」
「あたしも・・・?」
「当然だろ?必要な荷物だけ持って明日出発だ!用意しろ!」
「明日・・・・?」
「分かったらさっさとしろ!」
「はい・・・・・・」
何も考えられなかった・・・・
この後木手に会う事も出来ない・・・・
ココで行かないと言えたらどんなに楽か・・・・
旦那がいてはメールさえも送れない・・・
ホントにこのままもう会えない・・・
会わないほうがいいのかもしれない・・・・
初めから許されるはずのない事・・・
木手は高校生・・・・・
あたしは人妻・・・・・・
あたしは黙って荷物を詰めた。
翌日中国行きの飛行機に乗ってあたしは日本を離れた。
あれから8年・・・・・・・
あたしは34歳になった・・・
中国に行ってからの旦那は忙しくほとんど家にいることはなかった・・・。
何度も木手の携帯にメールしようと思ったが時間が経てば忘れられる・・・・・・そう思って木手の幸せを願った。
久しぶりの日本・・・・
空港に降り立ち荷物を受け取ると歩き出した・・・・
沢山の人の中・・・・・
客室乗務員がパイロットらしき人となにやら立ち話。
綺麗な女の人・・・・・
あたしはそんな事を思いながら横を通り過ぎた。
長い長い廊下をキャリーを引いてホテルに向かう。
ガシッ!!!!
「ゴーヤーさん」
不意に腕を捕まれ振り返った・・・・・
「・・・・・・・・・・」
「ゴーヤーさんですよね・・・・・?」
「はい・・・・・・」
「誰・・・・・?????」
[前へ][次へ]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!