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木手永四郎専用部屋(短編)
朱様リク「全部消してあげますよ・・・」 2007/09/19↑(前編)編集8/23
別に好きなわけじゃない・・・・
呼ばれれば家に行く・・・
彼女がいる事は分かってる・・・
でも断れない・・・






「帰る」


「あい!!気をつけてな〜〜〜」
ベッドに寝転がったまま手を振る・・・・
行為が終わると凛はいつものように冷たく手を振る。


ゴーヤーサワー・・19歳の春・・・・・
帰り道はいつもどこか寂しくて、いつまでこんな関係が続くのかとため息しか出ない・・・
でも・・・いつも凛の誘いを断れない・・・
どう言うつもりであたしを呼んでるのかも分からない。別に好きなわけじゃない・・・

でも嫌いじゃない・・・

してるときだけは優しいから・・・・・
してるときだけはあたしを必要としているように思えるから。








休みのある日またあたしの携帯が鳴る・・・・

「はい・・・」

「サワー〜〜暇さぁ〜何してるんばぁ〜?」

「別に何もしてないけど・・・」

「会いたいさぁ〜」

「会いたいじゃなくて腹減ったでしょ?」

「あはは!わかってるあんに〜〜〜〜!待ってるから!!!じゃぁや〜〜」


はぁ〜〜〜またこのパターン・・・・
あたしは家政婦か・・・・?

そう思いながらもどこか呼ばれたことが嬉しいのかもしれない・・・・
心のどこかでこの関係を楽しんでいるのかもしれない・・・・・






数週間ぶりの凛の家は散らかり放題・・・
ゴミもそのまま・・・

「凛・・・あんた少しは片付けたら???」

「へ???だってサワーがやってくれるからいいやっし〜〜〜!!」

「あっそう・・・」

彼女は片付けないのかな・・・
そんな事を思いながらゴミを片付ける・・・
あっ・・・彼女との写真・・・・
凛すんごい笑顔だ・・・・


「凛・・・彼女見たら怒るよ!」

「あい!!悪い!その辺に置いといて欲しいさぁ〜」
その辺って・・・・
こんな凛を見ると彼女じゃなくてよかったと思う。
ゴミと一緒に写真なんてひどい男・・・
テレビの上には可愛い貯金箱にピンクのペンで「結婚資金」と書かれ小銭が入っている・・・
彼女の字だ・・・・
こんな小銭でどんな結婚式を挙げるつもりだ・・・
心で突っ込みを入れながらその横に写真をおいた。

一通り片付け掃除機をかける間、凛はゲームに夢中。

「凛〜〜!!何食べたい???」

「カレー!!!」
話だけはちゃんと聞いてらっしゃるのね・・・。

あたしは材料を買いに近くのスーパーに向かった。

凛のマンションを出る時にエレベータの出口で男とすれ違った。
ガッチリしたメガネの男。
どこか怪しげで、アンダーフレームがキラリと光る。
知的な顔立ち・・・・凛とは大違い・・・
スーツの似合ういい男だった。



スーパーについて材料を選ぶと凛の家に急ぐ・・・。
ゴーヤーでも買ってきたらよかったかな・・・
こんな時の材料費も、当然あたし持ち・・・
あたしは凛のお母さんか???
あたし何やってんだろう・・・・・



ブツブツ独り言を言いながらも、ご飯を食べた後の凛の顔を思い浮かべるとあたしは嬉しかった。
どんなまずい料理も凛は美味しいと平らげる。
文句一つ言わない・・・・
凛のご馳走様って顔が好き・・・・









ガチャ!!!!


「ただいま〜〜〜〜」
開けた玄関には男物の靴が一足・・・
高そうな靴・・・・


なにやら楽しそうな声がするな〜〜なんて思いながら部屋のドアを開けると・・・
ソファーでゲームをしている凛と・・・・・
(; ̄ー ̄)...ン?
さっき出口であったいい男?????
はしゃぐ二人はすごく仲良くて楽しそう!!



ふと・・・いい男が振り返る。
永「お邪魔しています。」
ペコリと頭を下げられた・・・・
つられて頭を下げる。

凛「お帰り!!あい!永四郎やっし!昔からの友達!」

永四郎さん・・・・・

「・・・・ゴーヤーです・・・・」

凛「何照れてるさ〜!!サワー腹減った〜〜〜」

「うん・・・分かってる・・・」

あたしは小さなキッチンでカレーを作り始めた。
タマネギが嫌いな凛の為に微塵切りにして炒める。
ニンニクも炒めたし、今日は豚肉。
野菜は小さめに刻みひと煮立ちさせる・・・
ご飯のスイッチも忘れずに入れたし。


凛「サワー〜〜〜まだ〜〜〜〜???」

「まだ!!!」

凛「今日は豚肉???」

「うん」

凛「うまそ〜〜やっし〜〜〜〜」

「待っててもう少しだから!!」

こんな時間があたしにとっては楽しいのかも知れない・・・・

ようやくできたカレーを皿に盛りテーブルへと運ぶ。
もちろん永四郎さんにも!


永「美味しい!!」

凛「だろ〜〜〜〜????サワーの作る料理は何でも上手いやっし〜〜〜!!」

永「平古場君はいいですね。こんなに美味しいものを作ってくれる彼女がいて・・・」

凛「あい!永四郎サワーは、彼女じゃないんど〜」

永「おや!そうでしたか!失礼しました。」

あたしはただ黙ってカレーを食べた。
前に甲斐君が来た時もこんな感じだったし・・・

その後は、凛と永四郎さんの昔話に花が咲いた。
テニスをしていた頃の話。
スパルタ監督の話。
昔の彼女の話・・・。
19歳の男の子らしいなぁと思いながらあたしは皿を片付けるべくキッチンへと向かった。






「手伝いましょうか?」
凛から一度も言われた事のない言葉・・・
ジャケットを脱いだ永四郎さんはまた一段と男前で優しい目をしていた。

「いいですよ!すぐ終わりますから!」

永「いえ!手伝わせてください。俺が洗いますから!」
そう言うとあたしからスポンジを取り手際よく皿を洗い始めた。
腕まくりした姿がたまらなくきゅんとさせる。

「あっ!!」

永「なんです??」

「ネクタイ濡れちゃう!!」
永四郎さんの手は泡が付いたまま。
あたしはとっさにネクタイを捕まえた。

永「すみません!!」

「外しましょうか?」

永「ええ!お願いします。」
あたしは永四郎さんとキッチンの間にゆっくりと入ると首元に手を伸ばした。
太い首・・・・厚い胸板だな・・・・ヤバイ距離近いな・・・・なんて一人でハアハアwwしながら、ネクタイをスルスルと緩め優しく引き抜いた。 苦しいだろうとボタンに手をかけた・・・

永「気が利く人ですねゴーヤーさんは・・・」

「え??」

永「苦しいだろうと思ったんでしょう?」

「はい・・・」

見上げた永四郎さんの顔はニッコリと優しくて、深い色の瞳にクラクラしそう・・・・
なんでこの人・・・・こんなにも人を引き付けるんだろう・・・・・怪しいオーラだな・・・・・
恥ずかしくなって急いでボタンを二つ外した。

有難う御座いますと言った永四郎さん・・・。
あたしは凛にはない物を感じていた。

永「ゴーヤーさん?」

「サワーでいいですよ?同い年なんですから!」

永「ではサワーさん・・・本当に・・・その・・」

「ん??」

永「平古場君の彼女ではないのですか?」

「うん・・・凛の彼女は奈々って言う人・・見たことはないけどね・・・」

永「サワーさんは、平古場君の事が好きなんですか?」

「え???なんで?」

永「だって・・付き合ってない男の家でご飯を作るなんて好意がなかったらしないでしょう?」

「・・・・・・嫌いじゃないけど・・・・ほっとけないって言うか・・・なんて言うか・・・いつの間にかこうなってた・・・お母さんみたいなものかな!!!」

永「サワーさんはお付き合いしてる男性はいないんですか??」

「いないよ・・・・残念ながら・・・(苦笑)」

永「そうですか・・・じゃぁ俺が手を出しても構わないって事ですね?」

「え・・・・・????」

永「冗談です!」

「も〜〜〜〜〜〜!!!!」

ドキッとした・・・・。
凛とは何もかもが違う・・・・・
片づけが終わる事が少し寂しく思えたのはきっと気のせいだろう・・・・。








キッチンから出ると凛はソファーでぐ〜すか寝ていた。
こいつ・・・・・・((o(>皿<)o)) キィィィ!!

永「俺は失礼しますね!カレー美味しかったです!」

「ありがと!」

永四郎さんはそのまま帰って行った。
あたしもすぐに部屋を出る。
鍵を閉めてポストに入れるとエレベーターに向かった。














エレベータの前には永四郎さんの姿。

永「もう帰るんですか?」

「はい!もう掃除は済みましたから!」

永「ホントにお母さんですね」

「アハハハ!!でしょう?」

永「迷惑じゃなかったら車で送りますよ?」

「いいんですか?」

永「ええ!カレーのお礼に!」

「やった〜〜〜!!」

あたし達はエレベーターに乗り込んだ。
ドアが閉まりゆっくりと降り始める・・・。
減っていく数字を見つめながらしばしの沈黙・・・。









ギイイイイイイイイイイイイイーーーーー!!!!

ガタン!!!!!!!!!!!!!!!!!
ものすごい振動と共にエレベーターがストップ!!!
ええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!

シンドラー製か??????????








電気も消え薄暗い空間・・・・・・・










永「止まったようですね・・・・・」

「・・・・・・・」

永四郎さんは冷静にボタンを全て押し、通話ボタンを押した・・・・・
応答はない・・・・


永「困りましたね・・・・」
カバンを探る手が止まり深いため息・・・・

永「携帯は車の中のようですね・・・・」

「あたしあります!!!」







パカッと開けた携帯は無常にも電池切れ・・・・・






「すみません電池が・・・・」

永「どうしましょうか・・・・・」
ドアを叩いても・・・声を上げても誰も答えてはくれない・・・・
ドアはそう簡単には開かない・・・・



永「しばらく座って待っていましょう!誰か気付いてくれるでしょう!」

「はい・・・・」


春と言えども夕方はまだ冷える・・・・・
暖房など付いているはずもないエレベーターは少し寒かった・・・・・・


永「寒いんですか?」

「大丈夫です!」

永「これを!!」

ジャケットを脱ぎ優しく肩に掛ける・・・・
目が合って逸らせない・・・・
優しい瞳が大丈夫と言ってるようにあたしの不安を取り除いていく・・・・・


「永四郎さんは寒くないですか?」

永「ええ!俺の事は気にしないでください!男ですから!」
きっと寒いに違いない・・・。
ジャケットを脱いだらYシャツ一枚・・・
あたし以上に寒いに決まってる・・・





30分・・・・・・・・










1時間・・・・・・・・
















助けは来ない・・・・・












あたし達は靴で扉を叩き続けた・・・・・
声を出すよりこの方がいいんだとテレビで見ていたから・・・・・








一時間半が過ぎ寒さが一段と増す・・・・・
手が冷たい・・・・・


永「サワーさん手を・・・・」

「え????」

永「寒いでしょう?」

あたしの両手を包むとゆっくりと擦り熱を集めた。
でも永四郎さんの手はあたしより冷たくて少しも暖かくない・・・・
当然か・・・・・シャツ一枚だもの・・・・・
あたしは申し訳ない気持ちでいっぱいだった・・・。
あたしに出来る事は一つしかなかった。

「永四郎さん・・・・イヤかも知れないけど・・・少し我慢してくださいね」

あたしは座る永四郎さんの足の間に膝を付き、首に腕を回した。体を摺り寄せ体温を分ける。
永四郎さんの体は冷え切っていた。
伝わる冷たさに驚くほど・・・・・・

永「・・・・・・サワーさん・・・」

「すみません・・・あたしがジャケット借りてしまったから・・・・少しはこうしてた方が暖かいと思って・・・・・」

永「暖かいですよ・・・・とても・・・・」



永四郎さんは少し笑ってあたしに手を回した。
触れてる場所が次第に暖かくなる・・・
お互いの鼓動が重なり合う・・・・




なんだろう・・・すごく心地いい・・・・・
凛とベッドにいるよりももっと落ち着く・・・・
離れたくないな・・・・・・
ずっとこうしてたい・・・・・・・









あたしはあまりの心地よさに安心して永四郎さんの鼓動に瞼を閉じた・・・・・・













「・・・・・xxxxxx・・・」

誰かの声がする・・・・・・





ドンッ!!!ドンッ!!!
永「早く開けてもらえませんか?」

「はい!すぐに!!!」


永「サワーさん・・・サワーさん??」

「ん・・・・・?・・・・・?」

永「やっと開けてもらえるようですよ?」



あたしは永四郎さんの腕の中で目が覚めた・・・
すごく長い時間がたったように思えた・・
こんなに安心して寝たのはいつ振りだろう・・・
寝ぼけたままのあたし体を無理に起そうともせずその腕に抱いたままドアが開くのを待つ・・・。








グイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!
ガッチャ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!







「大丈夫ですか????」
ようやくエレベーター会社の人がドアを開けてくれた・・・・・


永「サワーさん出ましょう!」

永四郎さんはそのままあたしを持ち上げた。

「永四郎さん!!歩けます!!大丈夫ですから降ろしてください!」

慌てるあたしを楽しむように優しく笑ってそのまま歩く・・・

永「車までこのまま行きましょう!」
優しい声が力を奪う・・・・
力強い腕が心を揺さぶる・・・・



車の助手席に座ったあたしはなんだかぼ〜〜っとしていた・・・・

永「少し待っていてください!」
そう言うと永四郎さんはマンションの中に行ってしまった。

数分後エレベーターの会社の人となにやら話をしながら出てきた・・・・。
手には暖かい飲み物を持って・・・・

永「どうぞ・・・・」

「有難う御座います・・・・」
手を温めながら一口流し込んだ・・・・。
こんな事してもらうのって最近なかったな・・・・。





会社の人と話が付いたのか、車に乗り込んで走り出す。

永「俺の家に寄ってから送っても構いませんか?」

「はい・・・・」

スピードを増した車はマフラーを響かせた・・・。
運転している姿もクラクラする・・・
20分ほど走った所で車はマンションに入っていった。
19歳の普通の給料ではとても住めるはずのないマンション・・・・・


永「疲れたでしょう?少し休んで行きませんか?」






あたしは恐る恐るマンションへと入った。
凛の部屋とは大違い・・・
綺麗に掃除された室内・・・
シンプルでモデルルームのような部屋・・・・
高そうなソファーに腰を降ろした。







永「何か飲みませんか?」

「ええっと・・・・」

永「コーヒーでも構いませんか?」

「はい・・・」

永四郎さんは手際よくコーヒーを入れ差し出した。

永「着がえてきますからゆっくりしていてくださいね」

そう言って奥の部屋に行ってしまった。
見渡す程広い部屋・・・
カーテンの向こうにはキラキラと光る夜景・・・・
なんか住んでいる世界がまるで違うように思えてならなかった・・・・。
あたしは誘われるようにベランダへと足を進めた。
外は少し寒かったが綺麗な夜景に見とれて寒さなんてどうでもよかった・・・・
ぼ〜〜〜っと光に魅せられて目を細めた・・・・






永「気に入りましたか??」
振り返ると着がえた永四郎さんがあたしを見下ろしていた・・・

「すみません勝手に・・・」

永「いえ!構いませんよ?」

ニッコリと笑ってあたしの隣に立つ永四郎さん・・・・
こんな風景を毎日この人は見ているんだな・・・・
もっと永四郎さんを知りたい・・・・
そう思った・・・・・





永「おや!もうこんな時間ですね・・・送りましょう!」

永四郎さんの言葉が胸を締め付ける・・・
このまま帰ったらもう会えないかもしれない・・・
連絡先を聞く勇気もない・・・

黙ってマンションを出た・・・・。
車に乗って家路に付いた。
流れる町の光があたしをいつもの現実へと引き戻した。
あっという間に自分の部屋に着いた。

「有難う御座いました。」

永「いえ!こちらこそ。」

車は夜の街に走り去った・・・・・。











あれから数日していつもの毎日。
仕事も終わり帰宅しようとしていると携帯がなった・・・・・。













「はい」


凛「サワー〜〜仕事終わったんばぁ?」

「うん」

凛「帰りにうちに寄って欲しいさぁ〜」

「あ・・・・ゴメン・・・今日は無理・・・・」

凛「えええええ!!!!!!なんか用事でもあるんば?」

「いやないけど・・・」


凛「じゃぁ別にいいあんにぃ〜〜〜〜」


「疲れてるから・・・・ゴメン・・・」


凛「なんなんばぁ?付き合い悪ぃ〜〜〜〜冷てぇ女さぁ〜〜〜〜〜」



お前に言われたくはない・・・・

「彼女呼べばいいじゃん!」


凛「はぁ〜〜〜???わんはや〜に会いたいんど〜〜なんでそんな風に言うんばぁ???しにムカツク!」


「あたしは凛のなんなのよ!!!!ばか!!」




ピッ!!!




今まで言えなかった事言ってしまった・・・・・
携帯の電源を落とすと家に帰って熱いお風呂に入った。
もう凛と会うのは辞めよう・・・・
自分が情けなくなるだけ・・・・
凛との間に未来はない・・・・













永四郎さん元気かな・・・・・・



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