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木手永四郎専用部屋(短編)
拒否権 2007/12/25↑




「永四郎・・・別れよう・・・・」



コレがあたしが出した結論。
永四郎は何も言わなかった。
何も言わずにジッとあたしの目を見ている。
通いなれた永四郎の部屋。
永四郎の視線に耐え切れず立ち上がろうとすると腕を掴まれた。



永「俺はまだ帰っていいとは言ってませんが・・・」

「・・・・・・・」

永「理由はなんなんです?」

「他に好きな人が出来たから。」

永「もっとマシな嘘をついたらどうです?」

あたしの腕を掴む手に力がこもる。

「・・・・・・・・」

永「早く本当の理由を言いなさいよ?」

「・・・・疲れただけ・・・・」

永「・・・・・そうですか・・・・」

ため息混じりにそう言った永四郎は怖い顔をしていた。冷たい瞳が苦しい・・・・











しばらくの沈黙・・












掴まれた腕を開放されると同時に永四郎は口を開いた



永「帰りなさいよ。」






あたしは黙って永四郎の部屋を出た。
外は冬独特の冷たく張り詰めた空気。
あたしはゆっくりと駅へ歩き出した。
いつもなら駅まで永四郎が送ってくれる・・・
でもこれからはもう永四郎があたしの隣に立つ事はない。   









永遠に・・・・・









この場所を歩く事ももうない・・・・きっと・・・・











「永四郎・・・・・・・」
小さく呟いて空を見上げた。
自分で決めたことなのに・・・・。
永四郎は後数ヶ月で沖縄に帰ってしまう・・・・
あたしは地元での就職が内定していた。
遠距離なんて耐えられなかった。
でも・・・何もかも捨ててついていくなんてあたしには出来なかった。
出合ってまだ半年・・・・結婚とか考えてるわけでもなくここで終わらせるのがいいと思ったあたしなりの結論・・・・。
好きだけじゃダメな時もあるよね・・・・





駅のホーム電車を待つ間、頭の中は永四郎と過ごしたこの半年の事を思い出していた。
最終電車に乗り家に着いた。
玄関を開け電気を点ける・・・・・・
部屋は永四郎との思い出の品ばかり。
左手の指輪をゆっくり外しテーブルの上に置いた。




はあ・・・・・・・・・・・・




ベッドに転がり枕を抱きしめ我慢していた感情に身を任せた。







次の日からあたしは何も手に着かずぼ〜っとただ家と大学の往復・・・・・
友達の誘いも断り家に篭った。





こんな調子で大学も卒業を迎えた。
卒業式で永四郎の後姿を見かけた・・・広いキャンパスでこんなに遠くからでも永四郎が見えるなんて・・・馬鹿だなあたし・・・・
でも元気そう・・・・よかった・・・・・








新しい生活が始まる・・・・・




♪〜

携帯が音をたてた・・・。


「はい!」

永「サワー・・・・?」

「永四郎?」

永「まだ俺の声を覚えていてくれましたか・・・」

「忘れるわけn・・・・」
言いかけた言葉を必死に止めてグッと堪えた。
なんで今頃電話なんて・・・・


永「さっき沖縄に着きました。」

「そう・・・・」


永「・・・・・・・あの時は聞けなかった事を聞いても構いませんか?」


あの時・・・・・・・?
永四郎の声はどこか弱弱しかった・・・・


「・・・・うん・・・・・」


永「俺が嫌いですか?」

嫌いなわけない・・・そう言ってしまいたかった。
でも永四郎は沖縄・・・・言ったってもうどうにもならない・・・・ 





どうにもならないならいっそ本当の事を言ってしまえばすっきりするんだし・・・・・




「好きだよ・・・でも遠距離は無理って思ったから。それだけ・・・・」


永「そんな事だろうと思いました・・・。サワーが俺を忘れられるはずがない・・・・」


「・・・・・・・・」


永「早く玄関を開けなさいよ!」

「(゜Д゜) ハア??」

何を言ってるのかさっぱり・・・・


永「いいから早く開けなさいよ!・・・でないとドアを壊しますよ?」

「ちょっ!!!待って!!!」







バタバタバタバタバタバタ・・・・・ガッチャン!!!






「嘘・・・・・・」

目の前には永四郎の姿。
ニッコリ笑う永四郎があたしを見下ろしている・・・。

「なんで・・・沖縄じゃ・・・・?」

なんで今頃・・・・こんな事・・・・・


永「迎えに来ました。」

「え・・・?」

永「明後日沖縄に帰りましょう。キミもね!」

「(゜Д゜) ハア??」

永「イヤなんですか?」

「だってあたし達別れたじゃん。」

永「俺は別れるとは言ってないでしょう?帰ってもいいとは言いましたがね。」

「・・・だってあたしこっちで就職とか・・・その・・・・あの・・・・」

永「内定なら俺が断っておきましたよ。部屋もサワーの親にお願いして引き払う準備は進んでいます!つまりサワーに拒否権はない!(妖笑)」


もう何がなんだか・・・・・・・・・


永「サワー」

ぎゅっと腕に包まれてしばらくぶりの体温に包まれる。

永「後悔はさせません。黙って俺に着いて来てください。」




この言葉を言ってもらいたかったんだあたし・・・・

もう迷わない・・・・















慌しく荷物を詰めると飛行機に飛び乗った。
これから先どんなに辛くても永四郎となら・・・・
きっと大丈夫。






END
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

旅立ちの季節になりますね・・・・。
卒業。進学。就職。学生カップルには試練のとき。
好きな人と離れてしまうのは寂しいですよね。
男には頑張ってもらいたいものですo(*^▽^*)oあはっ♪


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