木手永四郎専用部屋(短編) 合鍵 5/10↑ 永「俺とやりに来たんでしょ?・・・・・そんな所に立ってないで、早く脱ぎなさいよ!それとも・・・脱がして欲しいんですか?・・・・もしかしてこの間みたいに甘い事言われたいの?」 冷たい目線があたしの体を撫でる。 その横を身支度を整えた女が笑いながら 「じゃぁまたね、永四郎」と通り過ぎていく。 ベッドには黒のボクサーパンツだけの永四郎の姿、乱れたシーツを目の前にあたしはただ立ちつくし視界が歪んだ。 ホンの数分前までこの男を愛していた。 永四郎も同じ気持ちでいてくれてると思っていた、 たまたま休みになった平日。 あたしは驚かせようと合鍵で永四郎の部屋を訪れた、 何度か訪れたその部屋はいつもと変わりなく綺麗に整頓されていた。 ただ違ったのは、永四郎が知らない女とベッドにいる事だった。 顔色一つ変える事無くあたしを見てる。 永「面倒ですから泣かないで下さいよ?」 「・・・・・・・・」 唇を噛み締めて涙を堪えた。 この数週間の記憶が走馬灯のように浮かんで胸を締め付けた。 永「やるの?やらないの?」 めんどくさそうに吐かれる冷たい言葉。 一ミリも動けないあたしの足・・・・ ココから逃げたいのに・・・・ 永「全く・・・どうして連絡しないで来るんです?」 煙草に火をつけて白い煙を吐きながらあたしを見てる。 「・・・・・・・・・」 永「サワー?・・・・・」 煙草を灰皿に押し付けて立ち上がりあたしに近寄る。 さっきまで他の女を抱いていた手が触れる・・・・ 今までは安心出来た大きな手が、今は怖くて仕方ない。 「・・・・わんなぃで・・・・・触んないで!!」 永「・・・・・・じゃぁ帰りなさいよ」 「言われなくても帰る!!!馬鹿!!」 飛び出した部屋。 治まらない深い悲しみ、怒り、脱力感。 夢なら早く覚めてよ・・・・ フラフラと自宅に戻り玄関で座り込んだ。 我慢してた感情が一気に溢れだす・・・・・・ 一晩中泣き続けた、声も枯れてしまうほどに・・・・ 永四郎のあの冷たい視線が焼きついて離れない。 忘れられたらどんなに楽だろう・・・・ 出会わなきゃ良かった。 あんな男・・・・・ 携帯の音に目を覚ますと、会社からのものだった。 とっくに始業時間は過ぎていた。 あの場所に行かなきゃいけないと思うと吐き気がした・・・・・ 同じフロアーにあいつはいるのだから・・・・ 行けば顔を見なければいけない。 「すぐ行きます。すみません・・・・」 でもココで辞めたらなんか悔しい気がして、腫れた目を冷やし気合を入れて会社へと脚を向けた。 最悪な事にドアを開けると永四郎が目の前に・・・・ 永「遅刻ですよ?」 誰のせいだと思ってんのよ!!!! 睨みつけてシカト、イスに座るとPCのスイッチを入れた。 与えられた仕事をこなして行くと背中に嫌な気配を感じる・・・・・・ 永「まだ昨日の事怒ってるんですか?」 「・・・・・・」 平然とあたしのPCを覗きながら耳元で吐かれる言葉。 何処まで最低なんだろうこの人・・・・ こんな人が好きだった自分が信じられない。 永「サワー・・・・?」 「・・・・・もうあたしに話しかけないでくれますか?あとコレもお返しします!」 負けるもんかと合鍵を押し付ける。 一週間前に貰った指輪も一緒に・・・・・ 永「そうですか・・・・・・まぁキミも所詮普通の女だったと言う事ですね!」 普通の女? 意味わかんない! その前に何?その開き直り・・・・ まぁ謝る価値もないって事か・・・ 所詮永四郎にとってあたしは遊びの女の中の一人だったって事・・・・・ お昼近くコピー室でせっせと資料作成。 ウイーーーーン・・・・・ゴゴゴゴゴゴッ・・・・・ ウイーーーーン・・・・・ゴゴゴッゴッ・・・・・・ ピーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!! ((o(>皿<)o)) キィィィ!! 紙詰まり? 壊れたの? ちょっと!!!急いでんのに!!!!!!!! 叩いても、電源を入れなおしても動かない。 「(|||ノ`□´)ノコノヤロオオオォォォー!!!!!」 イラッとして思わずヒールで機械を蹴飛ばした。 永「ククッ・・・・・何してるんです?機械が可愛そうでしょうが!」 「!!!フンッ!!」 永「治してあげましょうか?」 「結構です!!」 永「急いでるんじゃないんですか?」 「・・・・・木手さんの助けはいりません!!」 永「そう・・・・じゃぁソレ治せるんですか?ククッ・・・・素直じゃないですね?可愛げがない女はモテませんよ?」 妖しい笑みを浮かべていた。 この人何がしたいの? 「・・・・・・・・・」 永「急いでるんでしょ?」 あたしを押しのけて機械を開ける、数分で機械は動き出した。 永「どうぞ?」 「・・・・・・・ぁりがと・・・・・」 永「お礼に今夜俺の部屋に来てもらいましょうか?」 「(゜Д゜) ハア??」 永「来なかったら俺が行きますからね?」 目の前であたしの部屋の合鍵をチラつかせながら永四郎は背を向けた。 何がしたいの? 永四郎・・・・・・ 会社の玄関で立ち尽くす、 右へ行けば自宅。 左へ行けば永四郎の家・・・・・ 行きたくないな。 あたしは右へ足を進めた。 自宅に近付いた頃に携帯が音をたてた、画面には永四郎の文字。 保留して電源を落として携帯を鞄にしまった。 永「来なさいと言ったでしょう?」 部屋に入ると当たり前のようにコーヒーを飲んでいる永四郎・・・・・ 「なっ!!何やってんの?出てってよ!!」 永「全く・・・・キミは素直じゃない。」 カップをテーブルに置いてゆっくりと近付いてあたしの腕を掴み引き寄せた。 永四郎の行動が全くわかんない・・・・ 永「どうして怒ってくれないんです?浮気した事、責めればいいでしょう!!なんで喚いてくれないんです?どうして・・・・・サワー・・・・俺はキミにとってそれだけの男なのですか?俺のこと好きじゃなかったんですか?」 永四郎の声は少し震えてて、抱きしめる腕は苦しいくらいにあたしを締め付けて放さない・・・・・ 「何言ってんの・・・?意味わかんない・・・・」 永「ヤキモチやいて欲しかったんですよ・・・・キミが休みだと知ってくると思ったから、平古場君に女装してもらいました・・・・」 「(゜Д゜) ハア??ひっ平古場君って・・・営業の?」 永「ええ・・・そうです。」 「・・・・・・・」 永「信じられないんですか・・・・?」 「信じろって方が・・・・おかしいでしょ?」 永「じゃぁ今から平古場君を呼びます!」 腕を離して携帯を鞄から出し、話を始めた永四郎。 あたしは永四郎の部屋での出来事を思い出していた・・・ 永四郎はあの時、服を脱いでいたけど、女の方は乱れていただけだった。 女の人にしては背が高いな〜と思った・・・ でも綺麗だった。 一時間ほどでインターホンが鳴り、そこにはこの間の女が立っていた。 永四郎に招かれて部屋に入って来た女はニッコリ笑い・・・ 凛「しんけんだまされたんばぁ?わんじゅんにちゅらさんやっし〜〜〜」 満足げにそう話す。 その声は紛れもなく平古場君だった・・・ それでも疑いの目を向けるあたしに平古場君は目の前で化粧を落とし服を着がえた。 凛「や〜が怒ったらネタバラししようと思ってたあんに!じゅんに帰るから出来なかったさぁ〜」 「そう・・・・」 永「信じてくれましたか?」 「・・・・・・」 永「許して・・・・くれますか?」 永四郎は優しい困った顔をした。 永「もっと我が儘言ってください・・・・もっと俺を束縛してください。 お願いです・・・・サワー・・・・」 永四郎に嫌われたくないから、物分りのいいフリしてたあたしが永四郎には冷たいと思わせてしまっていた・・・ 初めからもっと素直になればよかった・・・・ 「・・・・・・うん・・・・」 覚悟してよね? 永四郎・・・・・・・ END [前へ][次へ] |