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木手永四郎専用部屋(短編)
「NO」 10/1↑
永「はぁ〜何故分かってくれないんです?」





電話越しの声は溜息混じり、「分かってくれない」そう言いたいのはあたしの方も同じだった。
いつもあたし達の話し合いは平行線を辿って結論は出ない、決まってあたしは同じ言葉で永四郎を困らせた


「じゃぁいい・・・永四郎なんて嫌い」

永「サワー・・・待ちなさいよ、だから何度も言ってるでしょうが!」

「だからもういいってば!!」

永「ったく・・・・キミって人は・・・」

これ以上話をしても無駄だと一方的に電話を切るそんな喧嘩をもう何回してる?
顔を見て話せない遠距離を恨んだ・・・・
恋人なら傍に居たいと思うのは当たり前じゃないの?
就職を控えたあたしは沖縄行きを希望していた
永四郎の近くに行きたい・・・・
永四郎はそれを頑なに拒んでいた。

永「女の子の一人暮らしは危ないでしょうが!」

決まって永四郎はこう言う。

友達は毎日彼氏と会えるのにあたしは数ヶ月に一回。
寂しい時間をどれだけ過ごしたと思う?
永四郎は寂しくないの?
逢いたい時に逢える距離に居たくないの?



就職活動を始めなければいけない期限はとっくに過ぎていた。

これ以上もめてる暇はない・・・













凛「永四郎〜」

永「なんです?平古場君」

凛「今日はお楽しみやっし〜〜〜」

永「何の事です?」

凛「隠すな!隠すなっ!わかっと〜さ〜邪魔なんてしないさ〜」

永「だから!!何の事です?」

凛「・・・・ゴーヤー来てるあんに?」

永「来てるはずないでしょう!」

凛「あい!わんの見間違いか・・・?昨日空港でゴーヤーを見たんど〜」

永「見間違いです。サワーが俺に黙って来てる訳がない」

凛「・・・・でも、確かにゴーヤーだったさ〜」

永「・・・・・」














平古場君に見られていたとも知らず、あたしは部屋を探し始めた。
部屋が決まったらそのまま黙って帰るんだ、もしバレでもしたら永四郎は怒るに違いない。
あれ程ダメだと言ったでしょう?って・・・・


何ヶ所か回って海に近い見晴らしのいい物件に決めた。
何もかも終わってから逢いに行くんだ!
それで、それでもう来ちゃったから仕方ないでしょ?って言うんだ!

そんな事を考えながら顔をニヤつかせた・・・・
新しい生活の事を考えると永四郎だって喜んでくれる!

ホテルに着きベッドに転がると携帯を眺めた。
タイミングよく永四郎からの着信

永「今何処にいるんです?」

「え?家だよ」

永「はぁ〜・・・・そうですよね・・・」

「なんで?」

永「いえ、何でもありません。」

「ふ〜ん」

永「ホントに家ですか?」

「だから!なんで?疑うの?」

永「平古場君が昨日空港でサワーを見たと言ってたんです・・・・まさかとは思いますが一人で沖縄に来ようなど思わないで下さいね?」

「なんでそんなに嫌がるの?」

永「危ないからです!」

「もう子供じゃないんだからさ〜」

永「サワー・・・またあの話をしようとしてるんですか?だったら返事はNOです!」

「はいはい、分かってるって。」

現在地を知られる訳にはいかない、食って掛りそうな自分を宥める。

永「サワー・・・」

「ん?」

永「危ない事はしないと約束してください。」

「・・・・ぅん・・・・」

永「絶対ですよ?」

「・・・・ぅん。」



もう就職先も決まったと分かったらなんて言うだろう・・・・
嘘を付いている罪悪感がない訳じゃない。
でもどうしても永四郎の傍に行きたかった・・・
永四郎が拒めば拒むほどその思いは強くなって
何が何でもって意地みたいにこんな事してる・・・

4年間の遠距離順調に来た訳じゃない・・・
喧嘩もしたし、別れ話も無かった訳じゃない
逢いたくても逢えないの分かってるから逢いたいとかも言えなかった。
傍にいて欲しい時は数え切れないほど
好きだから傍にいたい・・・



それに・・・・永四郎はあたしに触れたことがない・・・キスしたり抱きしめたりはするけど、それ以上は何もしない。
ホテルの部屋にあたしが泊まる事すら拒んだ。

健全な男が・・・そんなのおかしくない?
いつまで経っても子供扱いで正直不安だった、沖縄に女が居るんじゃないかってココロのどこかで疑ってた

もう一度静かに聞いた・・・・




「永四郎・・・」

永「なんです?」

「何であたしが沖縄に行くのそんなに嫌なの?」

永「危ないからです。」

「それだけ?」

永「他に何があるんです?」

「・・・・・」

永「疑ってるんですか?」

「そこまで嫌がるっておかしいよね・・・はっきり言うね、あたし以外に女が居るんじゃないかって思った事あるよ。」

永「はぁ〜〜〜〜居る訳がないでしょう」

「・・・・そう・・・・」

永「信じられないんですか?」

「・・・・・・」

何もかもぶちまけてしまいたくなった・・・
でも今は我慢、我慢、

「信じてるよ。」

永「俺もです。」



(ノ_-;)ハア…
電話を切って何とも言えない胸の苦しさに気付く・・・

もしかしたら喜んでくれないかも知れない・・・

あたしは遅い夕飯を取る為に外に出た。
小さな沖縄料理のお店のドアを開けると・・・













凛「ゴーヤー・・・?やっぱり来てたんば〜〜」

「平古場君・・・?」

凛「永四郎のやつ〜〜〜」

「言ってないの・・・だから黙っててくれない?お願い」

偶然食事に来ていた平古場君と会ってしまった。
カウンターで少し話し込んだ
あたしが今やろうとしている事とか考えてる事とか・・・
平古場君はうん、うん、って聞いてくれた。

凛「ゴーヤー・・・その計画白紙に出来ないんば?」

「なんで?」

凛「いや、わんの口からは言えないやっしが・・・や〜は本土に戻って就職しめ〜」

「なんで・・・・なんで・・・・なんで・・・?」

凛「・・・・・・やったーちゃんと話しないといけないさ〜」

平古場君の言ってる事はよく分かんなくてただ泣きそうになった・・・・
平古場君はなんくるないさ〜って言ってくれると思ってたから・・・

凛「永四郎に電話してやるから、ちゃんと話せ、な?」

「・・・・やだ、絶対に怒る。」

凛「このままじゃ後悔するさ〜」

あたしの返事を待たずに平古場君は携帯を耳にあてた。

凛「永四郎、話があるやっしが今から来れるか?あぁ・・・んじゃまっと〜さ〜」

「ひ、平古場君・・・・ダメ、今やっぱり逢えないよ・・・・」

あたしは急いで勘定を済ませると店から走り出た。
タクシーを拾ってホテルに逃げ帰った・・・
永四郎の怒った顔見るのが怖かった・・・・

シャワーを浴びてバスタオルのままぼんやり荷物を片付けた
明日朝の便で帰ろう。
もう後戻りは出来ない・・・









ビ===!!!
ドアホンがけたたましくなってあたしは覗き窓から廊下を見てドアの前に座り込んだ。

永四郎が見えたから・・・・




永「サワー・・・・」

トントンと叩かれるドア・・・・

永「サワー・・・開けなさいよ・・・・」

背中に伝わる振動に罪悪感が込み上げる・・・

永「サワー、聞えてるんでしょう?早く開けなさいよ。開けないのなら俺がどうするか位分かるでしょう?」


このまま開けなければきっと永四郎はドアを無理にでも開けてしまう・・・・

どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・・

開けるしか選択肢はない・・・





カチャッ











「・・・・・・」

永「キミって人は・・・・」


困った顔の永四郎が見下ろしている・・・
気まずい沈黙が流れる
ゆっくりと永四郎が部屋に入って来た、あたしは俯いて背を向けた。


永「サワー・・・」

何も言えない、顔を見れない・・・

「・・・・・・」

永「サワー!!」

低い声に肩を震わせた。

「・・・・・・・・」

永「何で黙って来たんです?」

「・・・・ダメ・・・って・・・・言われる・・・・・から・・・・・・」

永「来た目的は?」

「・・・・・・」

永「逢いたかったからだけですか?」

「・・・・・・」

永「それだけじゃないでしょう?」

「・・・・・・」

もうダメだ・・・・・・・

「どうしでも傍に居たかったんだもん・・・」

永「それは前にも話したでしょう?」

「・・・・・・」

傍にあったバスローブを手に取るとあたしに羽織らせベッドに座らせる、隣に座った永四郎の腕が肩に回されると引き寄せられた・・・・


永「黙って引越して来るつもりだったんですか?」

「うん・・・・」

永「・・・・危ないでしょうが・・・・」

「もう子供じゃないもん」

永「・・・・・はぁ〜・・・返事はNOだと言ったはずです。全て白紙に戻して本土に帰りなさい。」


永四郎は嬉しくないんだ・・・・
あたしの一人善がりだったんだ
傍に居たいのはあたしだけだったんだ



あたしホント馬鹿だな・・・・





「どうしてもダメ?」

永「えぇ・・・」

「そぅ・・・・」



なんか、もうダメだと思った
何もかも終わったそんな気がしてあたしの熱は一気に冷めた。


明日着る服を手にとってバスルームに入るとパサパサと着がえた、永四郎の顔を見れないまま鞄を手に背を向ける


永「サワー・・・」

「ばいばい永四郎」



こんな時間に飛行機が飛んでいるはずもなく、空港のベンチに座り込んだ。

誰も見当たらない空港は不気味な程静かで薄暗い、窓の外は星が綺麗だった

あたしの馬鹿な頭を冷やすには丁度いいのかも知れないな・・・

白い、白い月があたしを見下ろしていた。


この4年間が頭の中で走馬灯のように蘇る
充実した日々とは言えないけど、幸せだった時間も確かにあった











もう、終わったんだ・・・・・・










?「ゴーヤー」













「平古場君・・・」

凛「帰るんば?」

「うん」

凛「じゃぁちゃんと話出来たあんに?」

「・・・・・・」

ゆっくりと隣に座った平古場君はあたしの顔を覗き込む。


凛「ゴーヤー」


今になって急に我慢が出来なくなったみたいだ
ジワジワと歪んでくる視界
見上げた月がまんまるからぐにゃぐにゃになってポタリと落ちる・・・


凛「ゴーヤー・・・あい!!どうしたんば?泣くなって!なぁ!!永四郎と何かあったんば?」

「・・・・・・・別れた・・・・」

凛「ゆくしだろ?だって永四郎はもうすぐ!」

永「平古場君!!」

凛「永四郎!!遅いさ〜」

「・・・・・」




永四郎は少し怖い顔で立ってた、大きなトランクを持って・・・


永「・・・サワー」

「・・・・・・」

凛「永四郎行くんば?」

永「えぇ・・・もう単位は取れてるので卒業式くらい出なくても大丈夫です。」

凛「そっか、じゃぁわんは帰るさ〜。じゃ〜や〜またな永四郎!」

永「えぇ、また。」





ベンチが軋み熱が伝わる



永「誤解させてすみませんでした。驚かせようと思ったんですよ・・・・サワー・・・もぅ就職先も部屋も決めてあります。」

「はぁ・・?」

永「だから、明日サワーと一緒に本土に行きます。明後日もその次の日も一緒にいられますよ。」

「・・・え・・・?」

永「俺だって傍に居たいと思っていると言えば分かってもらえますか?」


「永四郎の馬鹿」

永「サワー大事にします、落ち着いたら一緒に生活しませんか?」

「・・・・・うん・・・・」






空港で朝を迎えたあたしと永四郎は飛行機に乗り込んだ、これから離れていた時間を埋めるんだ・・・





END
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この後二人がどうなったかはまたそのうち。



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あきゅろす。
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