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木手永四郎専用部屋(短編)
純情男 2009/1/28↑










『手を繋いでも構いませんか』








この台詞を言わせるのにどんだけ掛かったと思う?










木手永四郎が殺し屋と呼ばれる少し前の話。
一つ年下の彼は弟の友達だった。
年の割りに落ち着いていて、礼儀正しく真面目、でも何処となく妖しい雰囲気であたしが興味を持つまでそう時間は掛からなかった。
あたしなりに友達のお姉ちゃんのイメージから女として見てもらえるように頑張ってみた。が・・・・木手は全く気づかない((o(>皿<)o))
痺れを切らしたあたしから告白。

弟に断りを入れてから返事を返したほど律儀な人。
木手との時間は穏やかで、居心地が良かったけれど数ヶ月経っても何もなかった。
せいぜい学校の行き帰り一緒とか、休みの日に家に来るくらい。


「ねぇ、手」

永「手?」

「うん、手」

永「手がどうかしましたか?」

いつもの帰り道あたしから手を差し出した、木手はあたしの手をまじまじを見ているだけ。
(ノ_-;)ハア… 

「手繋ごって言ってんの。」

永「//////」

真っ赤な顔で少し俯いて目を反らす、もぅまるで乙女ですよ。この反応・・・

「嫌なの?」

永「いえ。」

「ほら!!」

あたしからぎゅっと手を掴んで歩き出した、手を引かれてついて来る木手、少し冷たい手は優しく握り返してくるだけ。
真横に並ぶまでしばらく歩いた、後ろから凄いスピードで近づいてくる車の音に木手の手をぐっと引いた。

「危ない。」

永「すみません。」

引き寄せぐっと近づいた距離にまた赤面する木手を可愛いと思うあたしは相当やられてるんだと思う。











しばらくたった日曜日の午後木手の部屋であたしが借りてきたDVDを見ていた。
ずっと見たかった映画で、男と見るには少し甘く悲しい話で少し申し訳なかったけど強引に再生した

話もラストに近づき悲しさはMAXに、少しウルウルしながらふと隣の木手を横目で見る。



「泣き過ぎだから(笑)」

隣で自分よりも先に号泣する木手、ティシュを取り頬を伝う涙をそっと拭いてあげる

永「・・・・(泣)だって・・・」

そう言って目を潤ませる彼にそっと口付けた、奪ったと言うほうが正しいのかもしれない。
あまりに可愛らしい彼にたまらなくなったのだ


「木手を見てるとなんか守ってあげたくなるんだよ。」

目を見開いた彼に二度目のキスを落として髪をなでる
こんな純情男を心底愛してしまった


「木手はお姫様だね。」

永「じゃぁサワーさんは俺の王子様になってくれるんですね」

「そうだね(笑)」

こうなったらもう王子でも騎士でもなんにでもなってあげるよ

永「サワーさんはこんな俺の何処がいいんです?」

自信のない声で尋ねる木手に全部と答える。
真っ赤な顔になるのは分かってる、あたしが何を言っても真っ赤になる。
ねぇ、それは木手があたしを好きだからだよね?
あたしにだけ見せてくれる顔だよね?





木手の初めては何もかもあたしのものだよね?









そんな関係がしばらく続いて、あたしは卒業を迎えた。 この日ばかりは弟が羨ましくて仕方がなかった


永「明日から一緒に帰れなくなりますね・・・」

少し遠くの学校に進学するから、今まで通り会えなくなる。
卒業式の帰り道初めて木手は寂しそうな顔をした
たかが一年、されど一年。
二人にとってこの一年は果てしなく長いものに思えた。

「休みの日には会えるじゃない」

何もかも上手くいくと思ってた。
現実は甘くないって事を思い知る
あれから数ヶ月まともに会えてない
木手は部活に道場と忙しい日々を過ごしていて、日曜日も一日空いている事は多くなかった。
木手の噂は弟から聞いてはいたが、逢えない時間はいつの間にか二人の距離を遠ざけた
最初はテニスの試合を見に行っていたあたしも新しく出来た友達との約束を優先させるようになってた
もう終わりにしようなんて言葉はいらない程に遠くなってしまった。






また春が来た。


女「ねぇサワー!!一年生にかっこいい子がいるらしいよ〜見に行かない?」

「え〜まじで・・・・」

友達に手を引かれてテニスコートに向かう

弟「あ、ねーねー」

同じ学校に進学した弟に会う。

女「サワーの弟?」

「うん」

女「ねぇ、テニス部にかっこいい人いるんだよね?何処?」

弟「あ〜わんの事?」

ふざける弟に一発喰らわせて睨む。

弟「痛ぇ〜何するんばぁ〜」

「馬鹿!」

女「サワー!!!サワー!!サワー!!見て!あの人かっこいい〜〜〜〜〜」


弟「ねーねーは見ないほうがいいあんに」

「え・・・・あ、」

友達が指差す先に見えたのはぐんと背の伸びた木手の姿があった、隣で騒ぐ友達の声に木手は目を細めながらこっちを向いた。
あたしは思わず背を向けて、弟に何で木手がここにいるのかと聞いた。

弟「あい、言わなかったさ〜?」

「聞いてない!!」

あたしはそのまま教室に戻った。
自然消滅した恋に未練などあるはずもないのに、少し大人になった木手に戸惑う自分がいる。

もうとっくに終わったはずなのに・・・・






その日からあたしは、一年生を避け、テニス部を避け、テニスコートには近寄らなかった。







どんな顔をしていいのか分からなかった













夏を目前にあの場所を通りかかる。
何も変わってない風景に少し懐かしさを感じて歩く道
「手」そう言って繋いだ日が遠い昔だったみたい


























永「サワーさん・・・」



















振り返らなくても誰か分かるよ・・・
少し低くなった声に俯く












「久しぶり、だね・・・」






永「ええ。」












「・・・・・・」

永「・・・・・・・・」














ふっと木手の気配が動いて正面で止まる
顔を上げられないあたしの視界にすっと出された大きな手・・・・・・
































『手を繋いでも構いませんか』













その手をとったら動き出す新たな時間。



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あきゅろす。
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