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木手永四郎専用部屋(短編)
チョコ 2/14↑







バレンタインなんて大っ嫌いだ!!!









初恋の惨敗以来バレンタインが嫌いだ。
どんなに頑張ったってどうせ振られるんだし・・・
友達は誰にあげるとかワイワイいってるけど、あたしは一つも用意してない。
教室の甘い匂いと男子の痛い視線に耐えられず屋上へ逃げた












「あ〜〜〜〜めんどくさ!」







熱いくらいの陽気にうんざりしながら貯水タンクの上に登ると空を見上げて転がった。
ちょっと熱いけどまぁいいっか・・・
うとうと夢に吸い込まれてしばしの休息をとった。



















『あの、好きなんです!』

「・・・・受け取れません。」

『・・・・ぐすっ。貰ってくれてもいいじゃん・・・・酷いっ』














誰かの話し声に下に目をやると同じクラスの木手と結構かわいい女の子がなにやらもめている。
女の子の手にはチョコらしき包み
木手は困った顔で断っていた。
あ〜あ〜かわいそ!





ふと木手と目があってしまった・・・気まずい・・・
目線をそらしてそのまま転がった。
数分間受けとる受け取らないともめていたようだが、諦めたのか足音が遠ざかった
どうやらおさまったのかな(笑)




空は少しオレンジに染まり始めていた・・・








木「ねぇ、」

いきなり木手が梯子から顔を覗かせた。
ガバッと起き上がると木手はす〜っと登って来た
隣に腰を降ろすとため息を一つ・・・


木「ゴーヤーさんはあげないの?」

「え、なんで?」

木「いえ、朝から誰にもあげてないでしょう?」

「な、なんで知ってんのよ」

木「・・・・」

「あたしは誰にもあげない主義なの!」

木「あ、そう・・・」

「みんな断ってんの?」

木「え?」

「さっき断ってたから・・・」

木「俺は平古場君とは違いますからね!」

「あははは!!あいつ朝から凄い貰ってたもんね〜」

木「一つも用意してないんですか?」

「うん」

木「友チョコも?」

「木手が友チョコの存在を知ってるほうがびっくりだね(笑)」

木「・・・・そんなにおかしいですか?」

「結構ね!」

木「は〜〜〜それ位知ってますよ、俺だって。」

「あ、そう〜(笑)」

苦笑いする木手がおかしくてケラケラ笑っているとなにやら階段の方から凄まじい足音がした。
あたしは扉の方に顔をやって何事かと目を凝らす・・・
次の瞬間視界は反転、空が見えたかと思うと目の前に木手の制服・・・・  何の冗談?
木手に抱き付かれてそのまま床に転がる自分に呆然としつつ、ふと我に返る・・・



「ちょっ!!!ん〜〜〜〜」

左手が口を塞ぎ、右手はあたしの頭の下、木手の顔はすぐ近くにあって思わず目をそらす。
 

木「黙って・・・・」








『いた〜〜〜〜?』

「いな〜〜〜〜い!!!!」

『どこ行ったんだろう木手〜〜〜〜』

「もう少し探す?」

『うん』

「平古場が屋上って言ってたのに〜〜〜」






どうやら女の子二人が木手を探している様子。
バタバタと足音がすると女の子は屋上から出て行ったみたいだ。



木「・・・・平古場君後でゴーヤーですね・・・」

ため息を付く木手の顔が近い・・・ってか苦しい・・・

「ん〜〜〜(木手〜)」

木「あ、すみません!」

塞いだ手を離すと申し訳なさそうに少し笑う・・・
起き上がろうとすると木手の右手が肩を掴み静止させられた・・・







あの・・・・














じっと木手を見上げると、木手もこっちをじっと見ている・・・  なんか言いたげな顔・・・・?











「木手・・・・?」








木手は左手でゴソゴソなにやら出すとあたしの開いた胸元に箱をそっと差し入れた・・・


はい?何ですかこれ・・・・?





ぽかんとするあたしを木手はクスリと笑うとぎゅっと手を回し耳元で囁いた・・・















木「逆チョコです。」










木手はあたしを抱き起こし髪をひと撫ですると、涼しげな顔で立ち上がり梯子を降りていってしまった・・・







胸元からポトリとスカートに落ちた箱をゆっくりと開けてみる・・・
高そうな箱の中にはまん丸のチョコが綺麗に並んでいてカードが一枚乗せられていた。











少しでも俺に興味を持ってくれたら嬉しいです。





木手










綺麗な字が並んでいた。








一粒口に運ぶと蓋を閉めて立ち上がった。
















『逆チョコ』


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あきゅろす。
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