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ぼけつのさき
灰色の駒
「部員全員集合!」
あとべの声に練習を続けていた部員の行動が止まる。
なんだよー跡部ー俺が珍しくもちゃんと部活やってる時にそんな事言わないでよねー。せっかく鳳がが妙にいらいらしててサーブはずしてる数数えてたのにー。
初夏にも入るこのころ、そう言えばテニス部にいればモテる為とかそん理由で入ってきた輩はすでに辞めて行ったなぁ…。そんな事を思いながら最初より少し少なくなったテニス部員を目に入れる。練習がこんなにきついとは思わなかったとか言う理由だったような…。そうだそうだー!練習疲れるんだぞー!
そんな事思いながらも俺も俺であとべの居る方向に走っていくとそこにいたのは綾乃と知らない女の子が前であとべと一緒に立っていた。
このパターンは、
「は…始めまして二年の片平雪です…!これからよろしくお願いします!」
あぁ、またかって思った。
確か白川が居なくなってから数人がすでに入っては辞めていっている。毎度のこと必ず綾乃が苛められたとか騒ぎがあって、それで泣いて走り去っていくマネージャーの姿を何度見たっけね?
「コイツは平専用マネになる。」
「平専用…?」
がっくんがぽろっと零した言葉にあとべは返事を返す。
「レギュラー専用は綾乃がいるだろ。」
「そうだな!」
思いっきりのいい笑顔で答えるがっくんを視界に入れながらも頭を動かす。そう言えば今までの辞めて行ったマネージャーは全員レギュラー専用マネを綾乃と一緒にやっていたはよねー?レギュラー目当てと見るからに判るような奴らばっかりだったから何か変な感じだな…俺は楽しくテニス出来ればいいんだけどさ。
「片平は仕事は覚えたか?」
「は…ハイ!一応ですが…」
「ならもう今日は見学だ。明日の朝練から仕事に入れ。」
「ハイ!」
元気に返事をしたえーっと…片平雪、ちゃんだっけ…?に視線を送る。化粧はしていない。髪は鎖骨あたりまでで特に特徴も無い普通の女の子。マネになるには珍しいタイプだよねー…。
「各自練習に戻れ!」
バラバラと約200人が走っていく中、雪ちゃんが平の練習場所に移動しているのを目に入れる。本当に平専用なんだー…。
そんな風に適当に見ながら俺はお気に入りのお昼寝の場所に行った。
あとべが悪いんだぞー俺がせっかく集中してたのに面倒なこと持ってきたからやる気が無くなったんだー。
くあぁ、と欠伸をかきつつ、テニスラケットを振って俺は足を進めた。
「始めまして僕、篠原優貴って言うんだ」
にっこり、そんな効果音を出しながらも新しく入った平部員専用マネージャーに声を掛けた。新しく入ってきた片平雪さん。確か二年で僕と同じ学年。
「ぁっ…!は…始めまして篠原君…!お疲れ様です!」
こちらに視線を送った瞬間目を見開いてガバリ、と頭を下げた片平さん。驚いた様子な彼女に目を丸くする。
あれ、
「えっと、うん始めまして。片平…雪、さんで良かったよね?」
「は、ハイ!」
「よかった!えっと…仕事覚えられた?」
「ぅあ…は、恥ずかしながらまだ完全に覚えていなくて…迷惑かけます。」
ペコリと同じく頭を下げた片平さんにあわあわと手をやる。
「い…いやいや全然平気だよっ?!今までマネも居なくて全部部員でやってきたから気にしないで!ねッ?」
「へ…今まで平部員にマネって居なかったんですか?」
ことり、と頭を傾けて質問してくる片平さんにこくり、と頷いてみせる。
「うん。今まではレギュラー専用の子だけだったからね…。どうして片平さんは平部員専用マネージャーに?」
「ぅ…あ、え、えっと…」
質問するととたんに顔を赤くした片平さんに?マークを付けながらも首を傾けた。
「会って間もない篠原君にこんなこと言うのも何だかへ、変なんですけど…」
僕よりも小さな背の片平さんが僕を見上げて口を開く。しかも頬を染めながら。
う、何か普通の高校男子にはこのアングルやばいかも。
「じ、実は平部員に私好きな人がいまして…」
「え、」
ぇ、
「えええええええええ?!!」
下を向いてしまった片平さんにもう一度
「ええええ!!?」
「し、篠原くん!こ、声が大きいですよっ!」
顔を真っ赤にしながら怒る片平さんに気がついて自分で自分の口を押さえる。ええええ?!ぼ…僕一応ながら二年でテニス部やってるけどそんなテニス部平部員が好きって人なんて聞いたこと無いよッ?!
「ほっ…本当に?!」
「ハイ…で…でもッ!あの…好きな人に近づきたいって気持ちはあるんですれけどマネの仕事とかぜ…絶対きちんとやるので、な、なので…」
ぐっと茶色の瞳がこちらを真剣に見る。
各段綺麗、とかそんなんじゃないけど、魅入る。
「だからお願いします…あ、綾乃先輩みたいに部員と支えあえるような関係になって、一緒に全国まで行きたいんです…!だから、し、篠原君達の邪魔はしないから一緒に居ること、…み、認めて…欲しい、です…」
少しずつ小さくなって行く声。きゅっとスカートを握ったその手は確かに白くて弱くて。でも言葉に強さは感じられた。そしてそれが真実だとも。
「うん、判ったよ。」
「ッ!」
ぱっと顔を上げた片平さんに笑顔を向ける。そうするとつられるように笑顔になった片平さん。
…………。
「でも!」
「?」
へにょん、と僕が「でも」の言葉を出した時に急激に下がった様子をみて面白くて笑いそうになりながらも真剣な顔で続ける。
「でも恋愛に目が行きすぎて仕事に身が入らないなんて思ったら辞めておらう事だってあるって思っててほしいんだ。」
「ぁ、ハイ。」
当然のような顔をして答えた片平さんに何だか目を丸くする。
「そんな状況に私がなりたくないって、思うんです。部員の皆…その人にも迷惑は絶対かけたくない。だから、篠原君。私が少しでも役に邪魔だと思ったら素直に言ってほしいです…。すぐにでも退部します。それが部員のためになるのなら、です。」
「片平さん…」
「私だって、全国行ってほしいって、…一緒に行きたいって思ってるんですよ!」
にっこり笑った片平さんは何だか輝いていて。不覚にも目を見開いてしまった。マネージャーっていつの間にか僕たちの間では迷惑なだけの存在だったけど、こんな言葉くれる…部員を支える人間がマネージャーって役目だったんだよね…。
そしてさっきの言葉、ファンクラブの子達に言ってあげた方がいいんじゃないかな、なんても不覚にも僕は思ってしまった訳で。
「だから仕事は早く覚えなくっちゃですね!」
うん!と小さく両手にガッツポーズのように力を入れた片平さんを見て目を細める。
「うん、僕も出来る限り片平さんを応援するよ。」
「!あ…ありがとうございます篠原君!」
片平さんと離れて平の部員が固まっている方向に足を向けた。
そこには3年の佐藤先輩やらなんやらが一部固まっていて、僕は口を開く。
「無害かな。」
「珍しいな、お前がセーフなんて判断するのは。」
ニヤ、と妙に鼻に付く笑いを零した佐藤先輩に目を向けつつも返事をする。
「今までいた女がみんな性悪女ばっかりだんだよ。」
フフ…ホント、今までどれだけ迷惑被ったか。それにレギュラー達が話を大きくして本当にこちらにはどれだけ面倒なことになったか。少なくとも跡部先輩のいらつきだけで外周を通常の2倍は走ったね。
「それに片平さんはアイツの性格知らないみたいだったよ。」
「転校生だからな。片平さん。」
あぁ、だからか。
「へぇ…それにしてもアイツにしては珍しいルートだよね。いつでも部活に入部が決まった瞬間に脅しにかかるのに。」
「まァ…下山田の事だからあきたんだろ。」
そうかもね。
「片平さんについては平気だよ。何も知らない、ある意味バカな子だけどアイツが何も手を出さなければ問題はないイイ子だったよ。仕事もきちんとやる子だろうね。微妙に完璧主義臭いから最初仕事がキチンと出来なくて落ち込みそうだけど。」
「へぇ…ま、じゃ平気だな。」
クスリ、と珍しくも笑った佐藤先輩を気にせずに僕も笑い、そして続ける。
「と、言うより面白い子だったかな。」
「は…?」
目を丸くしてこちらを見てきた佐藤先輩ににっこり笑いながら口を開く。
「果歩先輩の二の舞にだけはさせないようにしましょうね」
「ああ。」
助けてって言っていなかったあの子
助けてって言っていたあの子
………そして新たに入ってきたあの子。
これからどうやって話を作り出すのかな。
どうやってハッピーエンドに終わるのかな。
自分の好きに思うがままに。
ぁ、片平さんの好きな人の名前聞くの忘れた…。
平専用なので少しずつ主要平部員を出してみたり。
とりあえず篠原は黒。と言うよりかは二重人格。キャライメージは黒のフゥタ。くふふ。
続きが気になる方はぽちりとどうぞ!
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