:
ぼけつのさき
隠された意図
「おい岳人」
後ろから声を掛けられて「んあ?」なんて言いつつもテニスラケットを持って振り返った。そこにいたのは侑士が居なかったから一緒に撃ち合いしていた同じクラスのテニス部平部員の佐藤優斗。同じくテニスラケットを持ちながら妙に神妙な面持ちで俺を見ている。
なんだ…?
「アレ。」
クイッと親指を自分の後ろに向けられる。
「んだよ何…」
ハタ、と親指の先…つまり優斗の後ろに視線を向けると居たのは綾乃と知らない女。
まじ、かよ。
「お、おい優斗あれって…」
「ああ、多分新しいマネージャー。」
マネージャーとの単語に即座に視線を優斗に向けた。
「な…何だよ俺っそんなの聞いてねぇぞ!」
「俺だって聞いてない。」
しらっと答える優斗にイライラしつつも話を続ける。
クソクソ!また…
「また綾乃が苛められるってことか?!」
「岳人おま…声でかい」
やけに大人ぶってハァ…なんて溜息を吐きつつも俺に言葉を投げかけてくるのでムカつく。なんだよ!綾乃が苛められてるのなんて周知の事実だろ!?
「それに言ってんだろ岳人。白川は下山田のことなんかいじめてねぇって。」
あ。
そう言えばこいつとはこの話はしないって自分の中で決めたんだった。
優斗、綾乃のいじめられてる話を出せば必ず違うって否定すんだ。白川は違うって。白川が学校来ている時もずっとそう言ってて、最初優斗がこう言うんだから白川が綾乃いじめてるって信じて無かった。何か綾乃が勘違いしちまったんだって。いつだってこいつが言っていることは正しかったし、頭のイイ奴だったから。だけど…だけど優斗はあの綾乃の身体の傷を知らないからそんな事が言えるんだ!
いつもいつもこのテニス部でのマネに関して優斗は俺の言葉を否定するから俺はこの話題を避けていたんだった。
「ゆ…優斗は知らねぇからそんな事が言えんだよ!それにあいつが綾乃をいじめてたのだって明白だったじゃんか!」
「だからそれが違うって言ってんだろ。」
またしても溜息。
なんだよ優斗のアホ。いつもテニス部に関して以外だったら楽しくつるんでいられるやつだから余計ムカつく。クソクソ!頭のイイ奴だって思ってたのに…。
「そんな話じゃなくて新しいマネ」
「そうだった!」
優斗から視線を外して綾乃達の方へ目を向ける。
「あれ…?」
なんか仲良い感じじゃね…?
新しいマネらしき女と一緒に綾乃は笑っていて。綾乃がいろいろ指さしながら話しているから何か説明してんだと思うけど…終始笑顔だ。白川以外のマネと一緒にいた時だって最初からあんな笑顔じゃなかった。どこかぎこちない笑顔だった。今は、本当にうれしそう。
「下山田の友達なんだとよ。あの二年。」
「二年なのか?」
「ああ。」
「優斗、お前あの子知ってんの?」
ちろ、と俺よりも…p高い優斗の顔を見上げると優斗は新しいマネに目を向けたまま。
「いーや。全然。さっき下山田が亮と長太郎が話してるの聞いた。」
「ふーん……そっか!じゃ綾乃は苛められないな!」
綾乃が自分で友達って言ってんなら本当に友達なんだろ!あんなニコニコ笑ってんだし!よかった。俺、白川が居たころの皆、と言うかあの空気苦手だったんだ。
そう思いながら言うと優斗は何時も以上に「はぁ?」なんつー顔をして俺を見た。な、なんだよ!
「お前は……ハァ…」
「な、なんだよ!」
なんだかその可哀想なヤツを見るような目で俺を見るなよ!!
「…………、いや、そうだな。あの子、下山田を苛めないだろうな」
「だろ!だよな!良かった!じゃ綾乃の友達なら俺一回話してみ「待てい。」
グわしっと掴まれた俺の頭。地味に痛ぇ。
「な、何すんだよ急に!」
じたじたと動くも優斗は話してくれる様子は無い。放せよー!背が縮む!
「だからお前はちびなんだよ。」
「なッ!?何だと!クソクソ!お前180あるからって調子こくなよな!!」
ぐぬぬ…と俺の頭にある手を動かそうと努力をするも離れる様子はない。くそー!絶対次の試合の時思いっきり点差広げて勝ってやる!
「………。…お前があのコと話したらまた惚れられるぞ」
「はぁ?!」
「お前、今日の昼休みの中庭で2−Bのクラス31番の中沢由梨ちゃんに『始めて見た時から判っていました…岳人先輩が綾乃先輩の事好きな事。…で、でも私岳人先輩がす「うあああ!!!ちょ、や、止めろよ!!」
話を止めようとブンっと手を動かして殴ろうした。グーで。でもそれさえも優斗はするりとスルーして。一応ながらに口を止めた優斗に変な安心も得て。…クソクソ!
「お、お前それどこで…!」
「まぁ人の噂って言うのは流れ星よか早いって言うからな」
「に、したってその情報は細かすぎるだろ!!」
「俺、青学の乾のポジション目指してみようかな」
「じゃなくて!!オイ!優斗!!」
いつの間にか頭から優斗の手が外れていたのでたまらずぴょんぴょん飛ぶ。この時ばかりは優斗の蒼に近い黒の頭を見下ろすことが出来る。
「まぁ落ちつけって岳人。そんな訳でモテ男の岳人が新しいマネにでも真っ先に声かけてみろ。惚れられるぞ。」
「話すだけで惚れられたりなんかしねぇよ!そ、それにお前だって最近うちのクラスの奴に告られたって話聞いたぞ!」
「それはそれ、これはこれ。」
腰に手を当てて説明する優斗とは同い年何だって疑いたくなる。クソクソ!跡部と言い侑士と言い、何でここの部活の奴はみんな老けてんだ!背か!背なのか?!
「前のマネにも告られてたな」
「ぅ…」
「それに忍足ファンクラブの一年」
「ぁ…」
「話す以外にお前何かしたのか?」
「し、してねぇよ!!」
顔に熱が集中しているのが判りながらも否定する。
「だろ。だから気軽に話しかけたりはしない方がいいと思うぜ?……あの二年の子のためにも。」
「お…おう、そうする。」
「まぁ話しかけるなとは言わないけど、必要以上には止めておいた方がいいな。…特に下山田のいる前では。」
…?
「何でだ?」
「下山田とお前が仲良いのは俺たちも知ってるけど、女は嫉妬深い生き物だからな。…お前流に言うと下山田を守るためだ。」
「なるほどな!やっぱお前頭いいな!」
さすが優斗!頭イイ奴が近くにいるとイイ事あるな!
「おっし!じゃ優斗!侑士まだ来てねぇし一緒に練習しようぜ!」
「…ああ。」
練習中に視線を向けてもも綾乃はニコニコ笑顔でそれは空が赤に変わっても変わることはなかった。
このころの俺を思いだすと自分の馬鹿さ加減にイライラする。優斗の言葉の意味を、何も考えていなかったんだ。あの時の自分は、綾乃が一番だったんだ。
きっと、テニスよりも。
中途半端+名前変換無し申し訳ない…!
続きが気になる!なんて方はぽちりとどうぞ!
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