:
ぼけつのさき
全ては貴女によるのよ。
カサリ、と校舎裏の草を綾乃が踏んだ音により振り向いた一人の女子生徒。
驚いてこちらを見た顔を見るに、どう上に見繕っても中の中の上の顔。
私は心の中で嘲笑い、今回勇気のある…イヤ、それを超えて馬鹿な挑戦者に歩み寄る。
「あなたが…私を呼んだ子なの…?」
「ハッ…ハイっ!!」
カっチンコッチンにかたまって紅潮した彼女の顔を見る。
何、この子。私に何か非難するために呼んだんじゃ無いの?
これじゃまるで告白じゃない。
「それで…私に何の用なのかな?」
「あっあのですね…えっと……。」
ソワソワと体を動かし、泳ぎっぱなしな状態の目の彼女を見る。一応他の女たちとは違う様子なので可愛い綾乃をやっておく。一部の奴はこれで綾乃側になってくれたりするのよね。やっぱり女の友達的やつはいた方が何かと役に立つし。言い訳とか、そこらへんだけだけど。
まぁでも早くしてくれないかしら。面倒臭いのは嫌いなのよね。
「あの…あの、えっと…
わ…私をテニス部のマネージャーにしてください!!!」
ガバリっ!!と効果音が付く勢いで頭を下げる彼女。
…はぁ?
多少なりとも私の疑問に思った気持が顔に現れたのだろう、彼女は顔をあげた後、口を開いた。
「あ…えっと…いきなりこんなこと言われてもこまりますよね…。
わ…私は二年の片平雪です。」
…この子女友達居ないのかしら?
確か私は自分で認めるほど女に嫌われているのよね。テニス部目的に近づいてくる女もいるけれど。
もし、女友達がいたらマネになるなんて言ったらすぐさま止められるハズ。
ま、どうだっていいけど。
「私は…数日前に転入してきて…それで…。」
あぁ、転入してきたばっかりであまり情報が無い訳ね。
「それで…」と続けようとして顔を紅潮させた女に、あぁこの子も一緒なわけね、なんて思う。
どーせ、誰か目当てなんでしょ?
「それで?」
「そ…それで…男子テニス部の方が好きになってしまったんです…。」
はい、綾乃ちゃん大当たりぃ。
ま、でもこの子はまだいい方よねぇ。一人で来たし。
…どうしよっかなぁ…。果歩チャンもいなくなったし…雑用は欲しい処よね。
でも、私純情なタイプ嫌いなのよね。なんか気持ち悪くって。人間て自分みたいに何考えてるか分からないでしょぉ?
うーん…一応珍しいタイプではあるのよねぇ。
どうしよっかなぁ…。
私が色々考え込んでいる姿を見て、何か勘違いしたのかあわてて口を開く彼女。
「あっあの…転入してきて綾乃先輩とテニス部の方々の様子を見て…綾乃先輩がテニス部の方々を支えていて、そんな関係に、私もなれたらなって…憧れて…。」
当然でしょ?綾乃だもの。
「ふ…不純な動機って自分でも判っています!!でもレギュラーと先輩までの関係とまでは行けると思っていませんが、私も氷帝の全国優勝の手伝いがしたいんです!!」
ほぉら、やっぱり純情タイプはイラつく。
「か…彼の近くにいれるだけで良いんですっ!!
もちろん、仕事は全部私がやります!!」
____ピクッ。
「好きな人の近くにいたい、なんて不純な動機でそう易々とマネージャーになれると思っていません!!
友達から聞きました、テニス部の人気を。そしてマネージャーにはなかなかなれない事を…!
なので!仕事は先輩の分を含め、全て私がやります!!
先輩は応援だけしてくれれば十分です!先輩の応援の方が選手たちもやる気が出ると思うし…。
だッ…だからお願「いいよ。」………ぇ?」
ニコリ、と微笑み、雪チャンの顔を見る。
「マネージャー、なってもいいよ。景吾に綾乃からお願いしてあげるっ。綾乃も雪チャンがマネージャーになってくれたら綾乃も嬉しいっ。」
ギュ、と雪チャンの手を取り、満面の笑顔を向ける。
固まっていた彼女の体がピクンっと跳ね、顔を赤くして興奮した様子で口を動かした。
「ほっ…本当ですか…?!本当に…。」
「うんっ!雪チャンは今日からテニス部のマネージャーだよっ!!」
「ぅ…ほ…ほぁああ〜〜…」
奇声を発し、訳が解らない、信じられない、と言うような顔の雪チャンに笑い続ける私。
あ、そう言えば一応聞いておこうかな。
誰にしろ、私のだから雪チャンの恋心が叶う日なんて来ないと思うけど。
「あの…それで雪チャン…雪チャンの好きな人って誰なの…?景吾ぉ?侑士ぃ?」
「あ…えっと…その…
さっ櫻井尚人先輩…です…。」
…誰?
「えっと…。」
「ひ…平のテニス部員で…あっ!さっ櫻井先輩も最近転入して来たって聞きました…!!」
…平部員?
あぁ、あの新入部員…?
「ふっ…くくっ…あ、あははは!!!」
「…?綾乃先輩…?」
「ふっふふっ…ごっごめんッ雪チャン…おもしろくって…っ!!」
「………?」
眼尻にある涙をすくい上げ、雪チャンの肩にポンっと私の手を乗せる。
「ごめんね。じゃ、今日から役割は平部員専用のマネージャーね?」
「平部員専用…?」
「だって、そうした方が櫻井クン?と近づけるでしょぉ?」
「はっ…はい!!ありがとうございますッ!!綾乃先輩っ!!!」
キラキラと目を輝かせる雪チャンに微笑みかける。
ふ…ふふ…くっ…あははっはは!!!!
あぁ!!本当に私が思い描いたようなマネージャーだわぁ!
好きな人を伝えること…そんなの人の一番の弱みじゃない!そんな情報を私に与えて、しかも好きな奴はレギュラーじゃなくて平部員!!!
あははは!!
なぁーんであんなイモたち好きになるのかしら!!入部したときチェックはしたけど、ハズレ!
平部員が好きってことは私のジャマはしない人間!もし雪チャンが嫉妬かなにかで私に反抗してくるようなら好きな奴でもなんでも使っちゃえばいいし。
平部員なんて居ても居なくても綾乃にとっては同じなの。そんなの一人でも二人でも綾乃が好きにできるお人形が増えるんならくれてやるわぁ。平部員をあてにするほど綾乃は落ちぶれてないし。
そして何より…仕事をすべて自分でやる、なんて…
ふふっ…
雪チャン?果歩チャンみたいに逃がさないよぉ?
こーんな良い召使、なかなか見つからないもの。
ちゃーんと、守ってね?
雪チャンは自分で言ったんだよぉ?『仕事は全部やる』って。
綾乃がやらせた訳じゃない。
綾乃はなぁーんにもしてないもの。
自分で言った事は自分でちゃぁーんとしないと。
ね?雪チャン?
約束を守ってくれるなら、綾乃は天使でいてあげる。
破った時は綾乃は何になるか知らないけれど。
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