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ぼけつのさき
名前も知らない脇役
















「優斗、もう時間だよ、」



「…。…そうだな…悪い、先に行く。」

「うん。お疲れ、琴子ちゃんと拓斗によろしくね」

「ああ、」






バサリ、とジャージを持ち上げてコートから離れていく優斗。
いつもの光景に赤くなった空で目を細めつつも見つめているとその先に見えた2人の姿。

一人はあの馬鹿な女で、もう一人がさ…あ、…な、何だったかな…?







頭を傾けつつもあの平の部員の事を思い浮かべる。
…確か少し前に転入してきてすぐにテニス部に入ってきては居たけれど平凡と言うかどちらかと言うとレベルの低いテニスの実力に部員全体ががっかりした記憶はまだ古くはなかったはず。
何と言うか、僕もあまり話したことがないからどうもこうも言えないけど、多分性格も普通の奴なんだろう。別にがっかりしたはしたが別に大きく騒がれるような…たとえば跡部のようなぶっ飛んだ性格では無いだろうし。あまり興味はないけど、あの下山田がソイツと一緒と言う事で頭を働かせる。


うーん…えっと…









「どうかしたんですか?」

「え?」







後ろから声を掛けられたのでそちらに顔を向けるも、声ですぐに判った。片平、さん。
振り向いた先にいた片平さんはボールが一杯になった籠をそれぞれの手に一つずつ持っていて。それを感じさせないような顔で僕を見ていた。





「か…片平さん、そのボールの量はさすがに重いから、ぼ、僕持つよ?!」

「え、ぁ、大丈夫ですよ篠原くん。こんなのまだまだ楽なものです。家に帰ったらもっと__ぁ、や、…な、なんでもありません。ハイ。」

「?」



顔を青くした片平さんに頭を傾ける、なんてしつつもまだまだ知らない片平さんに好奇心がわく。まだ何かあるよなぁ、この子。じわじわ出してくのって結構僕好きなんだよね。その要素があるだけ面白い。「はぁ…」なんて溜息をついた彼女に目を細めた。



「そ、それでどうかしたんですか?何だかこううにーって眉毛が寄っていましたよ?」


彼女がその「うにーっ」の状態を自分で表現してくれたので、自分のその時の顔を自覚する。そんなに顰めてたか、僕。


「いや…大したことじゃ無いんだけどね、…ぁー…でも片平さんは知らないか。」

「?」

「あそこの下山田先輩と一緒に居る部員なんだけどね、」

「へ、」



くるり、と片平さんの髪が揺れたのを何となく感じとったので話を続ける。




「テニス部に入ったばっかりの片平さんは多分初めて見るんだろうけど、最近確かテニス部に入ってきて三年生の先輩なんだけど、


僕あんまり人の名前とか覚えるの得意じゃ無くて…さ、あはは。誰だったかなーッて…、「さくらい なおと先輩、です…」あ!そうだった!そうそうありがとう片平さん!って、片平さん櫻井先輩のこと知っ、…」




あぁ櫻井尚人!と思い感謝の言葉を零しながらも彼女に顔を向けると、彼女は尋常でないぐらい真っ赤になっていて。て、まさか…




「そっか、片平さん櫻井先輩のことすきなんだ」

ガゴンっ!!












ゴロゴロゴロゴロ…



「…え?な、ぇっ?!あ!う、ああ!す、すみませ…!あああ!もう私何やって…!」



片平さんの持っていた籠は見事に二つとも片平さんの手から離れたようで黄色いボールがごろごろと転がる。



「ううん、大丈夫だよー、そっかー平部員って櫻井先輩の事だったんだね」

しゃがんでボールを取り始めた片平さんにならって僕もボールを拾い集める。空はもう赤でもうすぐダウンが始まるけど後で一人で走ればいいことだ。



「し、篠原くん、な、なんでし、知って!?」


あせあせあせ。
ってぇ、あんな反応されたら誰でも判るでしょー片平さーん。
っていうかいまさらだけど君、どんだけ古い反応してくれるんだか。
好きな人見つけただけで真っ赤になって、それで好きな人がばれて微妙に意識飛んで手に持ってるのもの落とすなんて。
別にきらいじゃないけどさ。そう言うの。




「あんなに先輩見て赤くなったら誰でも判るよ、そっかーそうなんだー片平さん櫻井先輩のことがー…」
「あ、ああ!あ、え、わ、私そんな顔に…?!て言うか篠原くんそ、そんな、いわ、言わないでくだ…はず、恥ずか…」


「あらっ!まぁ雪ちゃんどうしたのこのボール!」









「お…、小野寺君、」

「お、小野寺くんー…」





きっとダウンとしてのグラウンドのダッシュをサボっているのだろう小野寺は何と言うかナイスタイミングと言うか妙な時に現れて。うげ、と思いつつも片平さんとともに名前を零す。そうしたら夕日で余計赤くなった髪を揺らしてこちらに寄って来た小野寺は僕らの顔を見てぴきり、と停止して。

ん…?なんて思った瞬間すぐさまいつものどこから来るか判らない素早さでシュバっと片平さんへ近寄り、片平さんの顔を両手で包んで見つめてからぎゅるんっと僕へ顔を向けた。


「ちょっとゆうちゃん!アンタなに雪ちゃんを泣かせてるのよ!」
「「ええっ?!」」

僕と片平さんの声が重なる。

「この可憐な瞳が潤んじゃって…可哀想に…大丈夫よ、ゆうちゃんなんて本当にいろんな分厚い皮被ったしょーもない男なんだから雪ちゃんがあの毒舌で泣くことはないわ。」
「小野寺君…?」

「え…あ、ぁあの…」


「あーもうゆうちゃんも小学生の男の子じゃないんだから、もう立派な高校生でしょ?!もーイやよねーデリカシーがない男って!」
「…ちょっと待とうか小野寺くん…!」

ぐわし!僕は小野寺の肩を掴むも、むんっと肩で払われてしまった。


この力のどこが男じゃないって言ってんだこの男…!!



「でも雪ちゃんも雪ちゃんよ、こんな男にか弱い涙なんか見せたらそれこそイチコロよ!だからそう簡単に泣いちゃだめ!強い女になってここぞっ!って時に使う…ゲフげふッ…流すのが涙なのよ!」

「は…ハイ!判りました…!」

片平さんはしゅぴっと右手を使って警礼して。



「って判っちゃだめだから片平さん…!君はそんな小野寺君みたいな女の子になっちゃ…」
「やぁん!ゆうちゃんったら私をようやく女の子って認めてくれたのね!」
「違うッ!!!」






「はぁ…はァ…小野寺君と話すと疲れるよ…!」

「あぁあ…その息切れな感じのゆうちゃん…いいわぁ…!ついでに脱いでみない?」




ゴッ!!


バタっ!

「へっあ!?お、小野寺くんっ?!」

片平さんの後ろで小野寺を殴る。片平さんはそれに気が付いたが
でも小野寺の方が身長でかいからあまりクリーンヒットにならないからそれもムカつくんだけど。



「一体何が…だ、大丈夫ですか小野寺くん…!」

「きっと何処からかテニスボールが飛んできたんだね、でも大丈夫、片平さん。小野寺君は人一倍痛みには強いから。」



「う…ゆ、ゆうちゃん…中々成長したわね…いいわ…そ、それがゆうちゃんの愛だって言うなら、私いくらでも…!」


「ね?」





なんとなくもすっきりした顔を片平さんに向けると片平さんも「ハイ、小野寺君が無事でよかったです」なんて零して、笑った。ついでに小野寺は踏んでおいた。

ま…2人の事をすっかり忘れてなんて、片平さんみたいに抜けたことはしなかったけど。




































やばいなぁ、うう、小説のテンポ忘れた…!





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