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ぼけつのさき
お楽しみは私に、苦痛は貴女に











待ちに待った6限目終了のチャイム。ガタリと自分の席を立って階段を下りていく。いつもは景吾や侑士のところに向かう所だけど、今日は昨日に引き続き雪チャンでも待ってみようかな、なんて思っちゃって。良い考えもでたし、今日はひどく気持ちがいい。

トントン、とこげ茶のあまり汚れの見えないローファーを履きながらも2年生の靴箱の方を見る。そこには待ち合わせもしていないし当然と言えば当然だけど雪チャンの姿は見つけられなくて。

ツマンナイなぁ。なんて思いつつも昇降口を抜け出すと見つけたセミロングのその姿。それに二ヤケそうになりつつもタッと走りだして抱きつく。











「__っひぎゃ!」



ビクンっ!と大げさなぐらい肩を揺らした雪チャンは綾乃だったら絶対出さないような声を出して。


「ふふ!驚いたー?」


セミロングの髪を揺らしながらもくるりと振り向いた雪チャンは目を一瞬見開くもぱっと笑って。




「あっ!こんにちは綾乃先輩!」

「うんっ!今日も部活頑張ろうね!」

「ハイ!」



抱きついていた腕を落とし、雪チャンの隣に移動する。雪チャンは綾乃が抱きついたからか顔を赤くしながらもニコニコ笑っていて。
昇降口前だったのでテニスコートへと自然に一緒に歩きだす。




「そう言えば景吾が言ってたんだけどねっ、今日はねー昨日と違って雪チャンはちゃんと平部員専用マネとして活動するんだって!」

「えっ?!えと、平部員専用マネとしてって…?」

「昨日は一緒にスコア付けとかドリンク作りとか基本的なこと教えたよね?」

「は、はい…」



ぎゅ、と握り締めていた雪チャンの手にはオレンジ色のメモ帳。
確か昨日はこれにメモを取っていたわねぇ




「だから雪チャンは平部員専用マネとして平部員の面倒を見なくちゃいけないの。一人で」

「ひっ一人でですか!」

「うん…大丈夫?」



ヘタりと眉を下ろしながらも一応ながら質問する。この子、ちゃんとレギュラー分、つまり綾乃の分の仕事忘れてないわよね?



「は、ハイ…!あ、あまり自信はないですが頑張りま、す!あ…綾乃先輩分の仕事って平部員用と基本的には変わらないですよ、ね…?」

「うんっ」

「で、でも…も、申し訳ないんですが、あの…た、多分今日スコア付けはレギュラー全員分まで手が届かないと思うんです…ご、ごめんなさい!」

「あぁ、大丈夫だよっ雪チャン全然慣れてないし、それにスコア付けってきちんとした試合じゃ無い限りは部員たちがみんなやってくれるから、ね?」

「そ、そうですか…よ、よかったです…!」




ハぁ…と胸元に手をやりながらも肩を下ろす雪チャン。




「後はコート整備とドリンクと洗濯だけ、ですよね…?」

「うんっ!雪チャン完璧だね!すごい!」


ぱんっとと手を合わせながらも笑顔で応える。


「っ…あ、ありがとうございます…!こ、これからも頑張りますね!」




さて、…そろそろ引いてみようかしら



「うんっ嬉しいっ!…で、でも流石に雪チャンに全部仕事お願いするのはダメだと綾乃思うの…」

「だ、大丈夫ですよっ…?!こ、これは自分で言ったことですし…!」

「でも…」

「大丈夫で、す!やっぱり綾乃先輩が応援した方がやる気でますし…!」



むん、と眉をあげながらも綾乃に言葉を零す雪チャン。
そうそうそのまま綾乃の思うように動いてちょうだい?



「…じゃ、じゃぁせめて綾乃、ドリンクぐらいは部員に配る!」

「で、でも…」

「このぐらいやらせて、ね?」




ギュ、と雪チャンの両手を握りしめて、ここでコテりと頭を傾けるっ、と。そうすると?



「っ…」

ほら、出来上がり。
雪チャンの顔がまっか。


「じゃ、じゃあレギュラー分だけお願いします!こ、これ以上は譲りません…!」


当然。そのつもり


「うんっ判った!ありがとう雪チャン!」










そんな事をしているうちに目の前にはすでにテニスコートが広がっていて。部員もちらほら見えていた。
周りにはいつも通りに女子の大群があって。
こちらに気が付いた女達はキッと私たちを見る。




…ぶっさいくぅ。





その視線に気が付いた雪チャンはビくり、と肩を揺らすも、綾乃はにこにこ笑いながらも足を動かす。
テンポを遅らせて動いた雪チャンも綾乃の後ろを付いてきて。
そのまま無言で部室に入る。






「…ふぅ。」

「………。」


無言の雪チャンに珍しい、と思いながらも視線を動かすと真っ青になっていて。

…あーぁ…、そう言う事。





「えっ…雪チャンどうかしたの…?」

「え、あ、い、イエ!な、何でも無いです!きょ、今日もがんばりましょうね!」



無理やり笑った雪チャンはタっと更衣室へと向かってしまった。









動き出したファンクラブに二ヤリ、と笑い、その後ろ姿を追った。







恋心と苛めに耐える心、どっちの方が強いのかしらね?




























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