:
ぼけつのさき
放課後への、期待
「ねぇ、知ってる?」
「んー?」
「テニス部にね、新しいマネが出来たんだって!」
「え、まじ?!」
「うん、確かね、二年で片平、とかそんな名前なんだけどさー」
「2年?!ぅわ…よくやるよねぇ…」
「ほーんと。早速ファンクラブの人達も動き出してるらしいし、結構ヤバいんじゃ無い?」
「あーアイツもいるしね」
「ねー…。確かにテニス部の人たちってみんなカッコいいけどあたしは絶対、ぜぇったいパスだね」
「あったしもーアタシ見学で十分だわ!」
「だよねー!」
きゃいきゃいと隣で聞こえる女子軍団の声。
ヘッドフォンを付けつつ寝ようと机に伏していても聞こえるんだよ、うっせぇなシメてやろうか。こちとら俺もテニス部員だよ、忘れてんじゃねぇだろうな。跡部サマやらに言っといてやろうか。言っとくけど俺は低血圧なんだよ。一旦5限目寝た俺にはお前らの声はまじウザいわけ。寝起きじゃなくてもうざいけど。
赤みがかかった目の前の髪をぼーっと見つつもうるさい声にイライラが募るばかり。寝起きの俺にアイツの話を聞こえさすな。こんなに音量を上げてても聞こえる女子生徒の声は甲高いというかキャンキャンうるせぇ。
「ぁ…噂をすれば、だよ」
「うーわー…」
ざわり、と揺れ動いた声に顔を上げる。全体が視線を向けている先には多くの友達と笑いあいながらも廊下を歩く、確か片平、雪ちゃん。昨日確か前の方で跡部サマが紹介してたっけ。
窓からは光が射していて彼女の元々薄い色素の瞳が金色のように反射する。
「……まだ始まって無いみたいだね」
「いや…ファンクラブの方はもう動きだしているらしいよ。美恵言ってたし。」
「でも怪我とか見えないけど…」
「いや、いつも通り見えない所に怪我してんじゃん?」
「あ、そっか。」
するり、と視界から居なくなった雪ちゃん。いつものように騒ぎが戻る。
ホント、何も知らないような顔で笑っていたし、あの馬鹿な女は始めていない様子。それにあのアホな部員たちも。
それに息を吐きつつも聞こえた女子生徒の言葉に疑問を抱える。ファンクラブが動き出している…って、普通だったら友達も避け始めるんじゃねぇの?でも、あの雪ちゃんの近くには友達が居た。
…へぇ。
「やるわね…」
「ん?あ、起きたんだ。もうすぐで駄目だよーちゃんと起きて無いと」
「あぁ…うん。次は気を付ける。」
するり、と視線を窓へと向けた。その先にはテニスコート。
…興味がわいた。今日、話しかけてみようかな、俺。
ぼぅっと、窓の外を見る。いい天気。
ちょっと遅れちゃったけどお昼に屋上に入った時にも気持ちい風が流れてたし、今日の練習は何となく楽しいものになりそう。
あーあ、雪チャン。ちゃんと今日仕事してくれんのかしら?
どうせなら果歩ちゃんが死んじゃう前に来てほしかったなぁ。そしたら果歩チャンに雪ちゃんの指導任せるのに。
あーでも果歩チャンお口堅く無いからなぁ…雪チャンに何かゲロっちゃうかも。それも楽しいかもしれないけど、ちょっと前にそんなパターンあったのよねぇ。
ぐるぐる、ノートにピンクのシャーペンを走らせる。
今は生物の時間。先生がいろいろ説明してるけどもう判ってるところだし。綾乃って勉強もできちゃうんだよねぇ、これが。…まぁお父様が家庭教師勝手に付けたからなんだけど。それに綾乃大学は私立の文系に進む予定だから生物なんて要らないのよね。
「はぁ…」
昨日は綾乃、雪チャンにイライラしちゃったけど、今ではそんなに気にしてない。大体雪チャンなんかの格下の言葉なんか気にする方がどうかしていたのよね、綾乃ったら。雪チャンなんてどーにでも出来る存在なんだし。綾乃は雪チャンよりは上なのよ?どうかしていたわ。焦るような存在でも何でもない。
それにこんなに早く終わらせるつもりなんて無いし。せっかく見つかった綾乃の思い通りの召使。雪チャンに今辞められると困るのよねぇ。綾乃最近ネイルサロン行ったから面倒なことしたくないし。ま、そこまで派手にやっていなくてヌーディーな色にしたから疑われるようなバカは無いけどねぇ。
あとは今日は綾乃、櫻井…何だっけ?なー…な、なお、と?尚人だったかしら?その雪チャンの思い人とも接触しておきたいし。
あ、そう思うとさらに楽しくなってきた!
櫻井尚人…って先に綾乃のモノにでもしておこうかなぁ?
クスリ、笑みを零しながらも6限目のチャイムが鳴るのを待った。
中途半端バッチコイ!
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