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ぼけつのさき
必要が無いだけ


























「ッ…もう時間だ。」

「ハっ…へッ…?あ、ほ、ホントだ」









二人して息を切らせながらも時計を見る。すでに昼休みの時間があと20分で終わってしまうような状態だった。毎度練習するときは15分前には終わらせるようにしているから終わりにするには丁度良いだろう。

ベンチにかけてあるジャージとドリンク、タオルなんかを持ち出して部室に向かう。後ろでは焦ったように鳳が帰りの準備をしているが別に気にしない。







ガチャリと部室への扉を開くとそこにはソファーに体育座りしたマネが居て。こちらに気づいている様子はない。何かを読んでいるようだ。机には食べかけの弁当と大量のタオルが置いてあった。


コツリ、と特に気にすることなくマネの後ろを通っていく。それに気がつくことのないマネに随分と集中していることが判る。それも気にせず何となくみた本の中身。



「……?」

「ッ!!」




びくんっ!と肩を揺らしてこちらを見上げてきたマネ。振り向く前にシュバっ!と閉めた本を胸に抱えている。見上げた瞳は微かに潤んで居て。…?




「び、びっくりしました…!」

「………。お前、何で今さらそんな…」




ちろり、と見えた本の表紙。「初めてのテニス」…?




「…お前、テニス初心者なのか」

「…は、ハイ。お恥ずかしいことに…」



じゃあ何でテニス部のマネになったんだと動きそうになった口を止める。そんなマネは今までのマネだったら大体そうだし、今までの事を考えるとルールブックなんて読んでいる片平の方がまだマシか。

そう思いながらも固まっているとガチャリと扉が開いて。そちらにマネとともに目を向けると鳳がそこに立っていて。



「あ、まだ居たんだ、そろそろ教室戻らないと授業遅れちゃうよ。」



二コリと笑ってマネに言った鳳は俺にはやっぱり違和感を感じて。今まで散々新しい下山田先輩以外のマネに冷たい対応しかしていなかったのを知っているから気味が悪い。
鳳は「俺と一緒だから」とか訳の判らないことを言っていたが、今までの対応をがらりと変える何かがこのマネにはあるのか…?




「あ、…え!え゛え゛ッ!!もうこんな時間ですか!うああ!そうですね授業に遅れてしまいます!」




パっと本は机に置いて弁当をいそいそとしまうマネ。小奇麗に畳まれて重なっているタオルはユラリと揺れる。…何時の間に干したんだ…?なんて思ったものの、無駄に金をかけているこの部室は二台だけとは言え、乾燥機付きの洗濯機があったことを思い出す。

スルリとマネから視線を外してロッカールームへ向かう。別にマネの事なんて気にする必要はない。




















「なんか、違うよね」

「は、」





横に来た鳳をシャツを脱ぎながらも見る。
その鳳も着替え始めていてカチャリと十字架が音を立てた。



「片平さん」
「興味無い」



ぷ、と笑った鳳は「日吉らしいなぁ」なんて零して。マネなんて興味を持ってどうする。部を乱す切っ掛けにしかすぎないだろ。気にするから面倒なことに巻き込まれるんだ。そんな事に気がつかない鳳や跡部さん達の気が俺には判らないね。

ジャージをハンガーにかけてネクタイを取り出す。




「何かよく判らないけど、きっと片平さんは続けるよ、マネージャー」

「………、」




今までで一番一番早くに辞めたマネの期間は1日らしいが、俺はそんなやつの顔なんか覚えていないしどうでもいい。確かに下山田先輩以外で一番長かった白川先輩の顔はある意味印象的だったから覚えては居るけれど他のマネは印象があまりない。印象は皆一緒で変な混ざった匂いがするとか睫が太いとか唇が無駄に光っているとか良く触るとか気持ちの悪い印象ばかりだ。


キュ、とネクタイを占めてロッカーを閉める。




「どうかな」




二ヤリと零したその笑みは鳳には気に入らなかったようで眉を寄せながらも見ていた。そんな事を気にせずに部室を出た。
背伸びしながら窓を閉めているマネージャを一目見てから、教室へと戻って行った。

































日吉ってこんな奴だっけ…?
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あきゅろす。
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