:
ぼけつのさき
うつろな瞳
あー…眠ぃいぃ…
外は晴れ。窓からは午前中ではあるが十分なほどのあったかい光が差し込んで居て気持ちがいい。緩く開けられた窓の隙間からは生ぬるい風がフワリと入り込んで、それに窓の外の葉っぱもサラリ、と揺れ動いた。
クラスの前方では何だか多分…歴史のせんせーが何かよく判らない言葉を並べて説明していて、俺にはそれがマイナスイオン付きの眠りの呪文のように聞こえる。何だっけ、そんなの俺んちのゲームで何かあったと思ったんだけどなー。ス…スリープ?あれ。これじゃまんまだC−。もうちょっと何か捻りがあったような…あれ、っていうかそれって本当におれんちのゲームだっけ…?岳人んちでやったゲームにもそんなんあったきがする…。
またその窓の隙間からは風が流れて、ゆらゆらと俺の髪が揺れる。あれー?なんかせんせーの声だけじゃなく外での車の声も呪文に聞こえてきたC−…ああ、これは俺に眠れって言ってるんだよね、きっとそうだC−。気持ちいこんな日はお昼寝日和…あれ、今は昼じゃ無いけどまぁいいやーとりあえず寝ちゃおー…
ゆっくり、半分だった視界を無にしていく。
ボゴンッ!!
「……いたいぃいー…」
頭に感じた衝撃に耐えるために自分の手を頭も持っていく。ああああ、痛ぃいい、なんか気持ち良く眠れそうだったのにー…なんだC−これで俺のさっきまでの歴史の知識が抜け落ちたらどうしてくれるんだよー…
「寝るな芥川!大体お前は十分と言うほど毎度寝てるだろうが!」
自分の机に伏せながらもちろり、と上を見上げる。そこには想像はしていたが怒り顔のせんせーがそこに居て。手にはぐるんっと丸められた分厚い数学Vの教科書が。
「痛いC−…うぅぅ…ぅー……………すぅ…、」
「寝るなと言ってるだろうが!!」
__バシこーん!
「………」
「だめか…」
くすくす、と笑うクラスメートとがっくり肩を落としてもう完全に俺をスルーして数学のなんか公式を説明する先生の睡眠の呪文を共に、ゆっくりゆっくり意識を飛ばしていった。
ゆらゆら、
んー
ゆらゆら
「んんん゛……?」
ゆっくりと重い瞼を開けて行く。目に入ったのは白いシャツ。
んんん・・・?そして下は階段がぐるんとひっくりがえってぐるぐる。自分が動いている訳でも無いのに上へ上へと浮かんで行って階段は少しずつ小さくなるばかり。
さっきまでの眠りの呪文は無くなって、がやがやと聞こえる生徒の声。
ガチャン。
「遅ぇぞ樺地」
「…ウス」
ゆっさゆっさゆっさゆっさ。
ああ、俺樺地の肩に乗ってんだ。ああ、だから世界がぐるんぐるん。
「ハァ、まぁだ寝てんのかいなジローは」
「ジロー!ホラ!起きろっ飯!昼!だぞ!」
樺地がいつもの屋上で俺を床に下ろしてごろん。
そうすると忍足と岳人が近付いてきて。
「起きてるC−…」
「お、珍しい。」
「でも眠いC−…」
「ああ゛ん?」
あーあとべが怒ってるー
「お前は授業中も嫌と言うほど寝てるだろうが」
「えー俺「…あれ、新しいマネじゃねぇか?」うんんー…?」
雪、ちゃん?
ずりずりずり。
眠くて重い体をほぼほふく前進で声を出した宍戸の方へ向かう。宍戸は口に焼きそばパンをほおばりつつ、グラウンドの方を見下ろしていて。俺も同じようにフェンスの方へ行き、下を見下ろす。
あ、雪ちゃん。
雪ちゃんはててててと、部室の方へ駆けて行って。じーッと見つめていると自然にテニス部の部室に入って行った。
それはここにいたあとべや宍戸、忍足やがっくん、樺地も見ていて。
「…あいつ、何するつもりだ」
「部員の私物持っていくとかするんとちゃうん?」
笑いながらも宍戸の言葉を返した忍足は、ちょっとこわい。
「…部室の鍵、どうして持っていやがる」
「鍵っていつも誰が持ってるん?」
「俺と監督だけだ。」
んー
「じゃ監督から借りたんだろうねー」
「お、鳳と日吉。」
「いいところに。そう言えば練習するとか言ってたな」
テニス部の奴らが全員でグラウンド見下ろしているって言うの…っていうかグラウンドから見た俺らを想像してちょっと面白かったけど、じッと見つめてみる。鳳と日吉は2人で部室の中に入って行って。それでも俺は見続ける。
何も変化がなくて皆がお昼を食べだして談笑を始めても、俺はずっとみていたんだ。
テニス部の部室を、ずっと。
中途半端ごめんよ!
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