痛い所
それから約1ヶ月。
夏休みに入るギリギリまで彼女を追い掛け回し続けたが、最後まで首を縦に振られる事はなかった―――。
「…なぁ、良い加減諦めろよ」
「そうそう、女の子は彼女だけじゃないよ?」
「二人共、好き放題言ってくれるね…」
僕は京也と敬夜に呼び出され、京也の家へと赴くと、半ば強引に飲みに付き合わされる事となった。
正直、こんな所でのんびり構えてる訳にも、いかないんだけどな…。
ふと、小さく落とした溜息を耳にしたのか、
「蓮、もしかして、追い掛けまわしてる内に好きになった…とか?」
「マジで!?」
敬夜が発した一言に、京也が驚きの声を上げる。
…なんで、そうやって色恋沙汰にしたがるかな…。
「違うよ、ただ…」
「『ただ』…?」
言い淀む僕に、敬夜はスコッチのストレートを口にしながら、首を傾げた。
「……ただ、気にはなる。あんなに才野ある彼女を放って置きたくないし、出来るなら、彼女を笑顔にしてあげたい…」
酔ってる所為もあるかもしれない。
普段なら、こんな風に言う事のない台詞がつらつらと出てくる。
そんな僕の言葉を聞いてた敬夜は、一瞬眼を瞬かせた後、
「それって、普通『惚れた』とか言うんだよ?蓮」
くすり、と微声を零し、僕に告げた。
「蓮ってさ、自分から人を好きになった恋ないでしょ?」
そして、続けざまに痛い所を突いてくる。
確かに、冷静になって考えると、自分から行動を起こした事はない。
元彼女の保健医だって、彼女からだし、今までの彼女達も、なし崩しやら、気付けばとかだし…。
「蓮って、ロリコンだったんだな!」
グラスを掲げ、揶揄する京也に、
「京也だって、人の事言えないよね?この間の娘(コ)、中学生だったんじゃない?確か」
敬夜はニッコリと笑い意地悪に言う。
「ふん、敬夜には言われたくないね。年齢構わずじゃないか」
そして今度は反撃しだす京也。
はぁ…、この二人が犯罪に走らない様にするには、どうしたら良いんだろうね…。
僕は、新に芽生えた恋に気付く事なく、二人のやり取りに嘆息するばかりだった。
続く。
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