再会
彼女は俗に言う「保健室の先生」で、以前彼女と交際をした事もあり、先程の少女の異変を聞く事が出来たのだが…。

その場所はいかんせん、悲鳴を上げその後倒れた彼女が眠る保健室だったのだ。



そんな事を気にかける様子もない昔の彼女は、あっけらかんとして僕にコーヒーを奨めながら話し出す。

「あれも『男性恐怖症』って言うのかしらね?
いきなり見知らぬ男性に声を掛けられたり、身体に触れられるとああやって悲鳴を上げるの。でも…」

ふと、言い淀み、彼女は話しを止めてしまった。

「『でも』何?」

「うん、以前、入学した当社は明るくて元気な娘だったのよ?それが半年前いきなり休学して、漸く出て来たと思ったら、もう今の状態になってたの…」

最後は溜息混じりに話すと、彼女は温くなりだしたコーヒーに口を付け、飲み込んだ。



「…だから、蓮君だけじゃないのよ?あんな風に反応するの。
ごめんなさいね、何時もは私が傍に居るんだけど、丁度席を外していたものだから」

「いや、別に良いよ?」

頭を机に擦り付けそうな程、謝る元彼女を制して顔を上げさせる。

「で、蓮君はどうして此処に?」

彼女が僕に問い質そうとした所で、背後からカーテンのレールが滑る音が聞こえ、僕は思わず身を竦めてしまった。

「あら起きても大丈夫?緋鷺さん」

「…あ、はい。何とか…」

僕の背中から聞こえる彼女の声は、どこか元気なく聞こえた。

「コーヒーとお茶あるけど、どっちが良い?」

「…じゃあ、お茶で…」

「直ぐに用意するから座ってて?」

元彼女は、笑顔を彼女に見せてそう言うと、急須にポットのお湯を入れながら、

「あ、その子は大丈夫だからね?安心して良いよ?」

僕の事を言っているのだろうか?

安心させる様な口調で彼女に話していた。



不意に視線が合う。



深い漆黒の瞳は何かしらの想いを含んで、真っ直ぐに僕を見ていた。


続く。

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