出逢い
「…何か既に懐かしいかも」

僕はそう呟きながら、母校の門をくぐる。



卒業して3ヶ月。

その間に僕は一つ歳を取り、長年続けていたバンドが解散を迎えた。

「…いい加減だったしね、あいつら」

そんな愚痴めいたものを聞いて貰おうと、高等部にいるであろう後輩で友人の藤井 京也の元へ向かう途中、何を思ってか、つい中等部の敷地に足を踏み入れてしまい、そこで彼女に出会ったのだ。



囁く様な「G線上のアリア」が僕の耳にある鼓膜を震わせる。

「…誰が歌ってるんだろ…?」

今は授業中の筈なのに……。


訝りながらも、僕は無意識に声がする方へと足を動かす。


理想的な声。


既に新しいバンドを作ろうと考え、ヴォーカリストを捜していた僕は、彼女を新しいヴォーカルに迎えたいと直感的に思った。



若い芝生を踏み歩を進める。

それは自分の意識とは関係なしに、本能が喉の渇きを潤すかの如く、オアシスを求め行くのに近かった。



「………………ぁ………」

後ろ姿を認める。

華奢な身体、風に靡く髪は陽を受けてキラキラと揺れ、その内から発っせられる切なくて泣き出しそうな歌声。



僕の求める理想の女の子そのものであった。



「…あの…君…」

恐る恐る声を掛けると、彼女はゆっくりと振り返り、そして何処から出たのか解らない程の悲鳴を上げた。

「きゃああああぁぁぁぁぁ!!!」

そんな彼女を茫然自失で見ていると、何処かで悲鳴を聞き付けた教師達が飛び出て来て、彼女を僕から引き離す様にして連れて行ってしまう。



「……な、なんだったんだ?一体…」

その場に立ち尽くす僕に、

「あら、飴屋君…?」

聞き憶えのある声が僕の名前を告げた。


続く。

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あきゅろす。
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