邂逅
僕の大切な少女。
君の倖せを叶えてあげたいと
思っていたんだ―――。
閉鎖的なスタジオの中でも良く通る彼女の声に耳を傾ける。
こうして何度聴いても、心を奪われた気持ちになるんだろうね。
本当…、色々あったけど、僕の隣で歌い続けてくれる事に、感謝をしたい位だよ。
僕はチラリと、彼女に視線を投げる。
絹糸の様な艶めく髪を揺らし、僕の世界を歌ってくれる。
華奢な身体からは想像出来ない程の声量に負けじと、僕も弦を爪弾き、メロディを奏でる。
まるで僕等は戦友みたいだね。
意味もなく笑みを落としていると。
ふっ、と彼女の歌声は止まり、
「…蓮先輩、どうかしましたか?」
振り返りながら小首を傾げ、僕の歌姫は尋ねて来た。
「何でもないよ?さ、続きを始めようか」
僕はさりげなく返し、彼女の斜め後ろに立つと、肩から掛けたギターから最初の一音を奏で出す。
そして、歌姫は世界を紡ぐ。
そして、僕の世界は廻りだす。
まるで、哲学みたいだね。
万里の摂理。
理想郷を見付けた僕。
それは彼女…。
彼女、緋鷺…いや、今は藤井 綾香か。
と出会ったのは3年前。
当時彼女は14歳の中学生だった―――。
続く
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