愛玩乙女
第5話 秘密の発露 *
「じゃあ、これから言う事は、蜜と僕だけの秘密だよ?いいね?」
「うん」
僕が用意した朝食を取った後、蜜を車に乗せると、そう話を切り出した。
本当は、こんな嘘を蜜につかせて、良いとは思わない。
なるべくなら、そんな道は避けたいとも考えたが、それでは、蜜の心に傷を付けそうで、結局は、こんな方法しか浮かばなかったのだ。
そんな思いを馳せ、車は高速を走り、どんどん北へと向かって行く。
「これから僕のバンドが練習するスタジオに向かうんだけど、僕と蜜の事は、話す必要がある人間には僕から言うから、唯斗とかには『親戚』と答える事。解ったかな?」
「……うん」
そっと視線を蜜に動かすと、俯き返す姿を眼の端で見かけたが、何故か声を掛ける事を躊躇われていた。
多分、この物言いでは蜜を傷付けたかもしれない。
後で、きちんと向き合って話をしないと……。
蜂蜜色の髪が隠す程に俯く蜜を気にかけながら、僕はアクセルを強く踏み、急ぐ事にしたのだった。
細い砂利道を進み、小牧の某所にある朽ちた倉庫を改装したスタジオ前に到着する。
周りは閑静とは程遠く、自衛隊の飛行機が喧しく飛んでいるのが車のフロントが見えた。
「ちょっと外に出るね?」
僕はそう声を掛けたが、俯いたまま、なんら反応のない彼女に小さな溜息を落とし、車内から降りる。
秋というより冬に近い空は冷たく青く、澄み渡って、薄い雲がたなびいている。
そんな空を仰ぎ見た後、近くの自販機で、熱いコーヒーとココアを買うと、車へ急いで戻った。
「はい」
すっ、と差し出した温かいココアの缶を、蜜の小さな手が受け取るのを認めると、自分の分のコーヒー缶のプルタブを開けて喉に流し込む。
まだ熱さの残るコーヒーは、喉から胃に落ちていくのが良く解った。
漸く一心地つくと、まだ開けてさえいない缶を両手に包み、蜜が気落ちしているのに気付く。
「…蜜、飲まないの?」
「うぅん。…飲む…けど」
声を掛けた途端、言い淀む蜜の姿で、何を言おうとしたのか理解し、蜜のまだ開かれてない缶を取り上げると、包むように抱き締めた。
「……敬…夜?」
「もしかして、さっきの事気にしてる…とか?」
「ッッ」
胸に置かれた蜜の頭が、僅かに跳ねるのを感じる。
僕は『やっぱり』と頭の中で嘆息を落とすと、
「解って?
蜜の事を思って言った事だから…。
信じてくれないかな?」
混じり気のない言葉を、蜜の耳元で囁く。
「…信じる。敬夜は、私を拾ってくれたから。信じたい…」
些か彼女の言葉に疑問が浮かぶが、蜜の細過ぎる躰を抱えると、僕は自分の膝に乗せ、そっと唇を塞いだ。
「…ふ…っ…」
蜜の口腔の中に舌を入れ蠢かすと、微かにだが、蜜の舌が拙く絡み反応を返す。
それが堪らなく嬉しくて、技巧ちなく動く舌を甘噛みすると、腕の中に居る蜜の躰が、ヒクンと揺れた。
まだ、たったの一日。
時間にすれば18時間程度しか経っていないのにも拘わらず、僕の心は、この幼い少女の虜となり、どれだけ求めても足りない程、蜜に溺れきっていた。
「…み…つ…」
譫言の様に抑揚なく呼ぶと、肩に置かれた華奢な手が、僕の言葉に返事するように首へと回され緩く絡む。
耳元を囁きながら『敬夜』と自分の名前を呼ぶ蜜のささやかな声は、それだけで、彼女が『愛おしい』『欲しい』と躰が欲するのが解った。
舒に、蜜の着ているピンクのワンピースの裾からに手を差し込み、触れたショーツの上から、隠されたその部分をなぞる。
そこは既に潤いだし、しっとりと、僕の指を捕えるように絡み付いた彼女の蜜液が、卑猥な音を立てていた。
「キスだけで、こんなに…濡れてる…よ?」
「……ッ」
卑猥な囁きに、嫌々と頭を振り、顔を隠す蜜の羞恥心を更に煽る為、わざとそこの弄る音を立てた。
――……くちゅ…く…ち…ゅ……っ。
「…ふ…ぁ…ッ…」
下着の上からでも解る、硬くなりだした花芯を責める様になそっていくと、痙攣し、ビクビクと躰を反らせる蜜。
「…達ったの?」
そう尋ねるなくても、はっきりと解る絶頂した姿で、僕に凭れる蜜のショーツを脚から抜き、自分の上に跨がせると、怒張し、硬くなって痛い程の自身を下から突き上げる様に挿入した。
「…ひっ……ああぁぁ……ッッ」
蜜の薄い腰を押さえ、奥へと突き進む毎に、悲鳴のような声が聞こえるのにも構わずに、何度か浅く深くを繰り返すと、蜜の声は甘い声音に変わり、吐息混じりに漏れているだけだった。
「…蜜の…胎内…、凄く…熱い…」
淫靡な水音の隙間にそう呟いたけど、蜜の耳には届いてないのか、ただ、頭を振るだけで言葉が返る事はなかった。
蜜の小さな胎内が、僕の屹立をきつく絡め付け、次第に頭の芯が痺れだす。
車が大きく何度が揺れ、軋む音が激しくなったその瞬間、
「……っ…くッ」
息を詰め、蜜の中に膜を隔て、熱く白濁した体液を勢いよく注いだ。
達した僕は肩で呼吸を繰り返し、息を整えようとしたが、不意に蜜の円らな唇が、それを塞いだ。
「 」
ふと、静かに離れると、小さく蜜の唇が動く。
「蜜、どういう…」
彼女が発した言葉の意味が解らず、尋ねようとすると、運悪く後ろから車がやって来る。
排泄した避妊具を処理した後、乱れた服を直すと車から降り、やってきた車に蜜と近付く。
やって来たのは、昨日連絡したメンバーの京也と、彼と結婚した相手であり、「Alsay+Death(アルセイデ゙ス)」のヴォーカリストの「Hyne(ハイネ)」こと、綾香ちゃんであった。
僕は京也達が乗る車へと歩きながら、チラリと視線を蜜に動かし、先程囁いた言葉を反芻する。
――だって、私は敬夜の『お人形さん』だから……。
漸く練習を終え、外に出ると、そこに居る筈の蜜と、綾香ちゃんが居ない事に気付く。
次第に心を占める不安。
僕は成り振り構わず駆け出し、国道まで出て辺りを見回してみるけど、それらしき人物は見当たら所か、姿さえもない。
駆られてく焦燥感が、僕に冷静な判断を出来ないでいると、
「蜜ちゃんだっけ?
今、綾香と居る筈だろ?、少し落ち着けよ」
まるで窘めるようにして、京也が耳打ちしてきた。
『ちょっと待ってろ』と告げる京也は、綾香ちゃんに連絡を取ってるらしいのか、時折怒鳴ってるみたいに見えたが、僕はそれについて、気にかけるなんて余裕は全くなく、ただ、会話が早く終わって欲しいと、祈るばかりだった。
連絡が取れた京也が言うには、二人はスタジオから少し離れた小牧山近くのカフェに居るらしく、片付けを唯斗とドラムの有紀に任せ、京也の車でそこへと向かう事に。
「なぁ、敬夜」
唐突に京也の声が、僕の名前を呼ぶ。
「何?」
「…あのさ、間違いだったら謝るけど、あの蜜って子、もしかして、敬夜の恋人…とか?」
「っ、…な、なんで、そう思うの?」
余りに的を得た質問に、僕は何時もの様に飄々と答えられず、思わず吃ってしまう。
「いや…、さっきの敬夜の取り乱し方、普通じゃなかったからさ」
ハンドルを握り、前を見据えたまま京也が話す言葉を聞いた途端、何故か笑い出してしまった。
「なんだよっ。笑う事ないだろっ!?」
「いや、ゴメン。以外と鋭いな、と思って、さ」
拳を口許に当て、笑いを堪えながら言う僕に『やっぱり』と零す京也。
だが、ふと、帳が降りたように、翳りある表情に曇らせ、
「そう、思ってるのは、どうやら僕だけみたいだけどね……」
呟く僕に何も答えないまま、京也はアクセルを踏み込み、二人の居る場所へと、スピードを上げて走りだした。
続く
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