愛玩乙女
第3話 お人形さん *
お風呂で十分に温まった蜜を抱き抱えて、奥へと歩く敬夜に、彼女は疑問を尋ねた。

「あの…、敬夜?此処には一人で住んでいるの?」

「今まではね。でも、今日からは蜜もこの部屋の住人だよ?」

彼は、蜜に視線を合わせ、微笑む。

蜜の胸は、なんでもない敬夜の一言に、意味もなく、擽ったくなる。


奥は、これまた広いリビングダイニングで、全ての家具がモノトーンで纏められ、余り生活感がないようだ。

敬夜は、蜜をイタリア製のソファに座らせ、自分もその隣に腰掛ける。

適度に沈む心地よさに、蜜は眠ってしまいそうになるが、軽く頭を振り、眠気を紛らわす。
そんな蜜の頭をそっと引き寄せ、敬夜は、自分の膝に乗せると、

「眠っても良いよ」

そう優しく語りかける。

低く響くテノールの声が子守歌に聞こえ、何時しか蜜の瞼は、重く閉じられ、深淵の眠りへと堕ちていった。







「…あのさ、急に呼び出すの止めようよ、敬夜」

―誰…?

「悪いね、唯斗。で、持って来てくれた?」

―敬夜…、誰かと喋ってる?

「勿論。でも、大変だったんだからね。こんだけの用意すんの」

―…??

「あぁ、解ってるよ。ありがとう唯斗。感謝してる」

「……」

「…何?」

「何か、何時もと感じ違うよね?今日の敬夜。
もしかして、そこで眠ってるお人形さんのお陰?」

―『お人形さん』って、私の事?

「ゆ〜い〜と〜?」

「じょ、冗談だって。怒りっぽいなぁ…。カルシウム不足じゃない?」

―…ぷっ。この声の人、面白い。

「あ、起きた?蜜」

眼を開くと、上から覗き込む敬夜の傍で、もう一人、華奢な男の人が居るのが見えた。
多分、この人が『ゆいと』さんなのだろう。

蜜は起き上がり、初めて見る彼に「こんばんは」と告げる。
満面の笑みをした彼は、しゃがみ込み、蜜に目線の高さを合わせると自己紹介をしだした。

「こんばんは。え〜と、蜜ちゃん?俺は唯斗。よろしく」

そう言いながら、蜜の蜂蜜色した髪を撫でる。

「よろしくお願いします。蜜です」

小ぶりな頭をペコッと下げ、挨拶する蜜を見て、唯斗が、

「マジで可愛いね!頂戴、敬夜?」

玩具を欲しがる様に言うのを、敬夜は呆れながら、

「蜜は玩具じゃないよ」

と、窘める。

「それに、綾香ちゃんの事はどうした?」

「あ〜、無理無理。彼女、京也以外駄目なんだってさ」

「ふぅん」

「『ふぅん』って、冷たっ。折角、敬夜の無理難題を聞いてあげたのに、その態度はないんじゃない!?」

「…あの…」

蜜は、険悪な雰囲気の中、敬夜の袖を引っ張り呼び止めた。

「何?五月蝿かった?」

「違うの。…あの…、喧嘩しない…で?」

縋る様に見上げ、懇願する蜜にぼだされた敬夜と、唯斗は、深い溜息を吐く。

「喧嘩なんてしてないから」

と敬夜が答え、傍に居た唯斗は、うんうんと、頷いて見せた。

「そうそっ、何時もの事だから、安心して良いよ?蜜ちゃんっ」

蜜に向けられた二人の笑顔で、漸く、ほっ、とした顔になり、緩く微笑んだ。

「あ、そうだ。これ、蜜ちゃんにプレゼント。着てみて?」

唯斗さんは、蜜に大きな紙袋を差し出し、そう促した。
蜜はそれを受け取ると、さっきまで居た洗面所へと向う。

紙袋の中に手を入れ、沢山ある柔らかな触感の布の一枚を引き出す。
それは、白いレースや、リボンやフリルがいっぱいに飾られたワンピースだった。
他にもあるみたいだが、取り敢えず、今手にしている一枚に袖を通す。
まるで、測ったようにぴったりな服は、此処に来るまで着ていた服とは違い過ぎて、何だか恥ずかしくなってきた。

「蜜、着替えた?」

ドアがいきなり開き、敬夜が入って来る。
それから、蜜の前に座り込み、下から上へと、何度か舐め回す様に見てから、たじろぐ蜜に、

「似合うね。まるでお人形さんみたいだ」

と言って、粒らな薔薇色の唇に、自分の唇を合わせた。

「…んっ」

…ふ…ちゅ…。

舌を絡ませる湿った音が耳に入り、恥ずかしさで、ぴくりと、躯を跳ねさせる。

「…嫌?」

口付けたまま、尋ねる敬夜に、蜜は緩く頭を振って否定する。
すると、敬夜の細く長い指が、踝(くるぶし)からゆっくりと這い上がり触れて、その度に、ゾクゾクと背筋に震えみたいな物が走る。

結局、お風呂場でした行為は、中途半端な状態で止めてしまった為、蜜の躯は異常なまでに反応してしまう。

そんな状況を楽しむような敬夜の撫でる指が、ピタ、と止まる。
まだ、繋がっていた唇の形を歪ませ話す。

「蜜…、すっごく濡れてる。キスだけで、こんな風だと、これから躯が持たないよ?」

彼の唇が動く度に、舌先が微妙な動きをして、それが、むず痒い様なじれったさを更に感じさせた。

「…ふぁ…っ…」

「挿れて…良い?」

蜜は押し寄せ続ける快感に、敬夜の質問に、何も返せず、首を縦に振るだけしかできなかった。
敬夜は、蜜の秘部に触れ、溢れ滴る彼女の蜜を掬い、眼の前に翳し、突き付ける。

「…これだったら、初めに裂けた傷も、大丈夫みたいだね?」

蜜の愛液に塗れた指の向こうで、歪んだ笑みを見せる敬夜。
蜜は、自分の中にある淫らな部分に、恥ずかしくて、消えてしまいたくなる。
敬夜は、知ってか知らずか、

「じゃあ、蜜?挿れるから、スカートを上げて?」

蜜の羞恥心を煽るように、薄い笑顔をして告げた。
彼女は、嫌々と、首を激しく振って抵抗する。

「服、汚れちゃうよ?それに、早くしないと、唯斗が様子を見に来るかもしれないね?」

「…ぃっ…やだ…っ」

「じゃあ、早く…」

それでも抵抗してみる蜜に「やれやれ」と言いそうな顔をして、彼女を壁に手をつかせ、敬夜に背中を向けさせると、スカートを他下上げ、露になった蜜の濡れる花芯に、己を挿し入れた。

「……ぁあ…ッッ」

突き上げる程の快感が、蜜の細い躯を駆け巡り、まだ挿れたばかりというのに、すでに達しようとする彼女の耳元で、ガザガザ、と舌が蠢く音に混じり、声が聞こえる。

「あんまり、大きな声出すと、唯斗がきちゃうよ?蜜」

「…や…だぁ…。…あんッ」

唇を噛み、声を抑えようとしても、敬夜は意地悪するみたいに突き上げる為、なす術もなく、声が出てしまう。

「…だ、だめぇ…、たかや…ぁっ」

弱々しく抗う蜜を、後ろから抱き締め、動きを次第に速める。
素直に反応し、感じる蜜に、

「達く…よ?」

と囁き、彼女の折れそうな腰を抱え、今まで以上に、動きを加速させた次の瞬間、蜜の胎内に、熱い物が、敬夜の脈に合わせ吐き出された。

「……ぁぁぁ…っ」

消え入る様な悲鳴に近い声が、蜜の小さな口から発っせられたかと思うと、崩れ落ちそうになる。
敬夜は蜜を支え、吐き出された体液を受けきった透明な膜と共に、自身を引き抜く。

「…ご馳走様、蜜」

敬夜はそう囁くが、達して意識が朦朧となっている蜜には、届く事はなかった。


続く

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あきゅろす。
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