愛玩乙女
第20話 抵抗 *
「…ぃ…や…やめて…ッ」
蜜は力の限り抵抗を試みるも、大の大人の男性三人掛かりで蜜を抑えつけている為、殆ど意味を成さなかった。
「やめ…てぇ…やだぁッ…ッ」
悲鳴上げようが、眦から涙を流そうが、押さえられた手足が解放される事等なく、逆に男達の嗜虐心を煽っていく。
「無駄よ無駄。貴女がどれだけ暴れようが、泣こうが、敬夜は貴女を助けになんて来れないわよ?いい加減、薬も効いてるんだから、快楽に溺れたらいいじゃない」
クスクスと笑い残酷な言葉を吐く女性は、蜜の髪を鷲掴みして上に向けると、
「前と同じなんて思わない事ね?『お人形』さん?」
ニヤリと冷たく笑う。
「どう…して、こんな事…するんです…か…」
「『どうして』?決まってるじゃない、貴女の所為で、敬夜は私から離れてしまったわ。私はね、あの氷の様な敬夜が好きだったのに、貴女が変えちゃったのよ!」
「ッ…ぃ…た…」
「痛いって言ってられるのも今の内よ、……ほら、さっさとやっちゃって」
髪を思い切り引っ張られ、痛みを訴える蜜を無視し、女性は、顎で蜜を抑える男達に命令を下す。
「二度と、自分から敬夜に逢いたいなんて思わなくなる位、目茶苦茶にして構わないわよ?」
そう言って、魔女の様な高笑いをあげた。
脚を押さえ付けていた男が、唾を音を鳴らして飲み込み、舌嘗めずりをする。
「……じゃあ、お言葉に甘えて……」
厭らしく嘗める様に見詰め、蜜の躯を纏う制服を、乱暴に引き裂く。
「…ッッ…ぃ…やああぁぁ……ッッ」
「………蜜…何処に…行ったんだ…?」
敬夜は用事のある朔と別れた後も、正門を睨み、何度も独りごちると、そこに綾香の姿を見付け、慌てて降り、彼女の名前を呼んだ。
「……え?蜜ちゃんですか?今日、昼に逢ってからは見てませんが」
「何か変わった事…なかった?」
「変わった事…………あ、そう言えば、敬夜さん、お昼頃、蜜ちゃんに忘れ物を届けに来ませんでしたか?」
「忘れ物?……いや、ないけど?」
「それが?」と続けると、有力な情報が、綾香の口から齎せられた。
「今日、昼頃に、事務室から放送があったんです。大体、忘れ物とかを届ける際、必ずあそこで手続きしなくてはいけませんから…」
「じゃあ、一度、事務室で聞いて来る。ありがとう綾香ちゃん!」
敬夜は綾香に礼を言うと、急いで事務室がある舎屋に向かった。
やはり、蜜に忘れ物の届けがあったらしい。
それは女性で、敬夜の代理という名目で蜜を呼び出したというのだ。
事務員に、その女性の特徴を尋ねると、敬夜の推理していた人物と被った。
「………ミ…ク……あ…いつ…っ」
固く握り締めた拳から、血が滲む程、悔しさを露にした後、急いで車に戻り、まだそこに居た綾香に、
「綾香ちゃん、心配しなくて大丈夫だから」
無理に作った笑顔で言い、車を猛発進させた。
「ほら、何だかんだ言って、しっかり濡れてるじゃねぇかよ」
蜜の胎内を乱雑に掻き回し、潤ったのを知ると、男の一人が皮肉混じりに言う。
クチュ…グジュ…ン…クチ…クチュ…。
「……ふ…ぁッ…あ…ん…やぁ…ッ」
頭の中では嫌な気持ちで一杯なのに、躯は快感に忠実で、無意識に腰が揺れ、胎内の蜜は滴る。
「ガキの癖に、感度いいな、コイツ……」
「コイツ、敬夜の女なんだろ?」
「何だアイツ、ロリコンじゃねぇか」
蜜の頭上で、嘲笑しながら敬夜を揶揄しているのが解っているのに、蜜は反論する事さえ出来ず、胎内を掻き回される悦楽に身を任せていた。
「そろそろ挿れるとするか」
「あ、狡いぞ、俺に犯らせろよ」
「だったら俺も」
「あーっ、俺の次がお前な?」
脚を押さえる男が主導権を握り、順番を決めてしまうと、蜜の膝を大きく開き、露わとなった男の欲望を無理矢理捩込んだ。
「い…やあぁぁ…ッッ…たかやぁ…ッッ」
「じゃ、すぐに解ったらこの携帯に連絡して?」
敬夜は何処かに架けた携帯を切ると、もう一件架け出した。
「…………あ、もしもし、朔さん?敬夜です。やっぱり蜜は誘拐されてました。そして、犯人はミクです」
『ちょ…ちょっと待て、敬夜。今、何処に居るんだ?』
「今、ミクの居所を知る為に人を使っていて、そいつの所に向かっている最中ですが?」
『取り敢えず、今すぐこっちに来い!必ずだぞ?いいな!?』
「…………解りました。今近くなんで寄りますよ」
敬夜は朔にそう返して、携帯を切り、助手席に放る。
ポト、と音をたてて携帯が転がるソコには、いつもなら蜜の明るく笑う笑顔と、可愛らしい声が溢れている筈なのに、それがない。
「み…つ…!!」
震える声をあげ、敬夜は彼女の名前を呼んだのだった。
「ふぁ、あんッ…ぁあ…ッ…く…んッッ」
男達が代わる代わる入れ代わって、腰を振り、律動する度に、蜜は壊れた人形の様に躯を揺らし、反応の声を零す。
蜜の胎内には、男達の吐き出した欲液が混じり合い、溢れてドロリと大腿を濡らしていた。
「ふふっ、本当に『お人形』になっちゃったわ。それも壊れた……ね?クスクスッ」
女性は、男達の動きに合わせて揺れ動く蜜の、生気のない涙に濡れた灰色の瞳を見詰め、嗤う。
だが、そんな声さえも、蜜の耳に届く事はなかった。
――敬…夜……助け…て……――
「よう、来たか、敬夜」
「何です?一体……」
「まあ、座れ」
開店前の『velvet eden』の中に入ると、そこには二人、顔を腫らし形が変わった同僚が、くの字になり倒れていた。
「どうしたんです、一体?」
「お前が、コイツ等を殺す前に痛め付けといたんだ。……敬夜、怒らずによく聞け。お嬢ちゃんの行方は、コイツ等が知ってる」
「!!……な…んで…っ」
憤り立ち上がろうとするのを、朔が敬夜の肩を押さえ付けて止める。
「ちょっと待て!!」
「離して下さい!!どうしてコイツ等が!!」
「だ〜か〜ら〜、そんなに頭にカッカと血を昇らせんな。そんなんだと、お嬢ちゃんを無事に助ける事も難しくなる!」
「だったら……どうすれば……」
「まあ、俺に考えがある。任せてみないか?」
そう言って、ニヤリと笑った。
「アイツ等の話だと、お嬢ちゃんを誘拐したのは、主犯のミクの他に、うちのホストが三人」
「……何…故……」
「ん〜〜、どうやら、お前に対する反感があるのを、ミクが嗅ぎ取って、話を持ち掛けたらしいんだがよ、ま、あれだ。アイツ等は、孤高のNo.2であるお前が気に入らないんだと」
「……そんな…くだらない理由…で?蜜は、誘拐…されたんですか…?」
肩を震わせ、怒りが滲み出る敬夜に、
「済まない、敬夜。俺が至らなかったばかりに、お前とお嬢ちゃんに迷惑をかけちまった」
朔は頭を下げ謝る。とても悔しいのだろう、拳は固く握られ、微かに震えていた。
そんな朔の姿を見て、急速に怒りが削がれてしまった敬夜は、
「朔さん、その件は後にして、一先ず、朔さんの作戦を教えてくれませんか?」
朔へ気まずそうに、話を持ち掛けた。
続く。
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