愛玩乙女
第17話 薔薇色の三日月 *
「…ひ…ゃぁ…ッ」

「まだ何もしてないよ?蜜」

くすくすと軽い笑い声をたてながら、蜜の耳元に唇を寄せるとそう甘く囁く。

「……ぅ…んっ」

涙をうっすらと浮かべ、上目で見上げる蜜の姿に、敬夜の心臓がドキリと高鳴った。
だが、そんな状態を抑え、蜜の耳朶を甘噛みしだす。

「んっ…ぁッッ」

蜜の甘い声が、バスルームに響き、それが蜜の羞恥心を高めるのか、耳を両手で押さえようとするも、敬夜は何度もそれを抑止した。

「ほら、ちゃんと肩まで浸からないと風邪ひいちゃうよ?」

敬夜が蜜の肩に手を置くと、彼女は湯舟から立ち上がり逃げ出そうとする。

それを知っていたのか、敬夜の腕は蜜の躯を引き寄せ顎を捕らえると、唇を塞ぐ。

「…ん……ふぅ…」

蜜の上唇を敬夜の唇がやんわりと挟む。
薄く開いた唇の間には、固く閉じた歯列が見え、敬夜は舌を尖らせると、歯茎をなぞった。

「ふぁッッ」

途端に、甘い吐息を零し固く閉じられた歯列が軽く開くのを知った敬夜は、好機とばかり舌を潜らせる。

蜜が敬夜の生温かい敬夜の舌から逃げようとしても、すぐに捕まり絡んでくる。

ピチャ、と唾液と舌が絡み混じる音が、バスルームに響いた途端、蜜は肩を跳ねさせた。

敬夜が薄く閉じていた片瞼を開く。
そこには、苺の様に顔全体を赤くさせた蜜の困った様な表情が映っていた。

―そんな表情も、男の欲を誘っているんだよ、蜜。

眉尻を下げて苦笑を作った敬夜は、それでも飽く事なく蜜の口腔を犯していく。
敬夜は人差し指を華奢な背中の中心に置くと、水滴が流れる様に、ツ、となぞった。

「ッあぁ…ッ」

蜜がピクンと躯を震わせ反らせると、

「…くす、可愛い…」

そう言って、敬夜は、彼女の反った喉元に唇を当て、強く吸う。

「ふぁ…ぁんっ」

更に反応させ、弓なりにのけ反る蜜の首筋や、鎖骨に薔薇色の印を刻み付けていく敬夜。
舌を這わせ、小さな膨らみを持つ双丘の先にあるピンクの小粒な実に辿り着くと、尖らせた舌で突いた。

「んあッ…あぁッッ」

可愛く唏く蜜の声が、敬夜の頭の芯を麻痺させる。

「…もっと…唏いて?…蜜…」

そう言い、唇で硬くなりだした実を挟み、覗かせた赤い舌で、小刻みに揺らした。

「ッ…ふッ…あぁッ…やぁ…っ」

快感に躯は素直に喜びを表した蜜の口から零れるのは、反対の否定の言葉。
敬夜はそれを知ると、不意に突起から唇を離し、

「…じゃあ、止めようか…」

悲しげに微笑い、蜜の躯を緩く押して、湯舟から出た。

「…ま、…待って!」

「何?」

立ち上がった敬夜は振り返り、蜜を見下ろす様に見詰める。
その表情のない双眸には、温かなバスルームが凍ってしまいそうな程に冷たく、蜜は思わず身を竦ませた。

「…行っちゃ…やだぁ…」

眦に浮かんだ涙が頬を一筋伝う。

「………」

無言で見遣る敬夜の瞳には、驚きが浮かび上がる。

「行か…ないで…敬夜…」

「そんなに、僕に行って欲しくないの?」

蜜がコクンと頷き返すと、敬夜は蜜の両脇に手を差し込み、湯舟から立ち上がらせニッコリと微笑んだ。

「?」

「言う事を聞いてあげるから、僕のお願いも聞いてくれる?」

「…う、うん…」

会話しながら、蜜の華奢な躯を抱き抱えた後、敬夜の前に立たせて告げる。

「……じゃあ、嘗めて?」

「何処を?」

言っている意味が解らず、首を傾げたまま尋ねると、敬夜は笑顔を崩さずに蜜の手を取り、中心部へ導く。

「…えっ?こ、此処?」

「そう、出来るよね?」

敬夜の要望に怯んでいた蜜に、

「ほら、早くしないと、風邪ひいちゃうから」

浴槽の渕に座り美貌を笑顔の形にしたままそう話す。

蜜は、ぷるぷると、首を振って抵抗してみたが、一枚上手な敬夜は、蜜の躯を抱き上げ自分の上に跨がせた途端、

「じゃあ、濡れてない此処に、無理矢理捩込むけど良い?」

蜜の秘所へと手を伸ばし、意地悪な声音で囁いた。

…く…ちゅ…ん…。

「…はぁ…あんッッ」

「あ…何だ、しっかり濡れてるね?これだったら、挿れても大丈夫…かな?」

甘く喘ぐ声を出す蜜に、敬夜は状況を説明すると、器用に膜を装着させ、蜜の胎内に突き上げる様にして挿入する。

「ひゃ…ぁんんッッ」

「ほら、簡単に入っちゃったね」

「…ふ…っ、あんッ…あッ…ぅぁ…ッッ」

快楽に声を震わせる蜜の胎内を掻き回し貫く。
肌と肌が叩き合う音と、突き上げる時に響く水音と、蜜の喘ぐ掠れ気味の声が、不定調和を奏でた。

「あっ、ぁあ…ッ、…ゃんっ…ッ」

蜜の甘く唏く声で、彼女の胎内にある自身が痛い程に張り詰める。
それなのに、蜜の肉壁は内にある敬夜の怒張した自身を、捕らえて離さなかった。

「……き……ツ…ッ……」

苦しげに呻く敬夜の鼓膜を擽る、蜜の甘い吐息と唏く声に、とうとう我慢の限界を超えていた敬夜は、律動する動きを速めると、

「ッィ…ク…ッッ」

「…ぃっ、ぁああぁ…ぁ…ッッ」

詰まる声と共に、彼女の胎内に大量の欲望を脈打ち吐き出した。

……ドクン…ドクン…ドクン……。

自分と蜜の鼓動が重なる。

達して、自分の躯を支える力を失くした蜜が凭れてくるのを、敬夜は包む様に抱き締めた。

上から覗き込むと、蜜の鎖骨の下が赤い三日月を浮かばせているのが見える。
それを見て、彼女が本気で達した事を知り、敬夜は、思わず笑みが零れ落ちた。

それだけで、昼間、つまらない嫉妬をしてしまった自分が、なんて下らない事をしたのか反省している所へ、

「…た…かや…?」

腕の中から弱々しい声が聞こえてくる。

「…なに?…」

敬夜がそっと囁くと、蜜の治まりかけた頬の赤みが、再び染まって色づいていた。

「……ぁ……の……ね……」

「その…」と言い淀む彼女の顔は、先程よりも真っ赤になっていて、怪訝な表情を見せる敬夜は、自分がまだ蜜の胎内に自身を埋めていて、それが再び脈打って吃立していた事に気付き、蜜の耳元に唇を寄せると、

「おっきくなったのが解ったんだ。…蜜がそんなにえっちだったなんて、知らなかったな…?」

意地悪く囁いた。

「……ッ」

ぷるぷる、と頭を振る彼女に、

「もう一回…しよ?今度はちゃんとベッドで…ね?」

そう敬夜が懇願する。

微かに頷き、蜜が了承するのを認めると、蜜の胎内から己を引き抜き、彼女の軽い躯を抱き上げ浴室から出て、寝室へと歩き出したのだった。

結局、敬夜が出勤するギリギリまで抱かれた蜜の躯のあちこちには、彼の付けた証が散りばめられ、余りの施しに、躯を起こす事すら出来なかったという。


続く。

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