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批評想草
第三作目A
■神話(この作品は冒頭に神話を添えていました)

 世界観を一から作り出すファンタジーによくある天地創造の話で、世界の成り立ちもそれほど珍しくありません。

 気になったのは語り口が寓話のようで寓話になりきれていないところや、人間の扱いが使い古しのものであるところ。所謂「よくあるタイプ」のもので新しさが感じられなかったです。

 それでも、物語を盛り上げようという気持ちは強く伝わってくるし、発想の一部に個性を感じました。未熟なエピローグではありますが、感触は良い。最初の部分で次を読もうという気持ちを湧かせられるのは高評価ポイントです。

■小説・A
 これ、一番最初から失敗しています。
 それは、主人公であるアスタールクの「夜明けに屋根の上から街を眺める」という日課が生かされていないことです。
 このシーンは、今から語られる世界を広げる重大なシーンです。ですが、そのシーンにある描写は極めて少なく、街を描ききれていませんでした。

 また、主人公が街を愛しているというこれまた良い材料があるというのに、街に対する感情表現もさほど多くないので情報が少ないままに終わり、曖昧にしか想像できないという結果を招いています。それは人物描写にも言えることでした。テンポがよくすらすら読めるのに、描写の印象があまりイメージとして残らないのは悲しいことです。

 このまま続けると作者と読者の想像する世界とで、溝がどんどん深くなってしまい、最後には違和感を作ることになりかねません。想像力の格差を産まないように、描写は的確に配置していきましょう。

 また、曖昧な描写も格差を生む原因です。綺麗といった描写を使うときは、どういうふうにそうなのかをきちんと書きましょう。
 特に異国っぽいというのは、どう異国なのか分からない。そもそも異世界の話。異世界の異国って何さ、分からんとなります。

 分からない、といえば日本語。時々、意味を間違ったまま使用している単語が見かけられます。自信がない単語を使うときは辞書で一度しらべてください。混乱します。

 混乱、といえば回想と場面転換。文章を書くのってしんどいです。自分の脳みそ削るみたいなものですから。
 だからって回想や場面転換を米印プラス一行で済まそうなんて考えは頂けません。漫画じゃあ黒く塗れば簡単に回想シーンに入れるかもしれませんが、この作品は小説です。(米印があったら駄目という意味ではなく)

 そういえばジブリ並に人が多く出てましたが、ある程度は整理することをお勧めします。人々の数は後々の街での展開を考えると良い味をだすと思われるかもしれませんがそれは逆で、各人の印象が薄まっています。

 名前はむやみに与えない、似たようなキャラクターは合体させる、などして、やりくりを。
 このままではどんどん生み出されるキャラクターに振り回され、物語の核心がうやむやになる危険があります。

 さて、軽く微塵切りにしたところで、よかったとこをば。

 描写などは小説じゃないじゃん脚本じゃんと思えるくらい薄かったのですが、一人称の大きな武器である「主人公の思考を基にした比喩」はしっくりときていました。
「一気に食べたもんだから、喉が渋滞を起こす」など、分かりやすい比喩表現は心を和ませるだけでなく、主人公の性格と状況をよく表していました。

 ただし、分かりにくくならないよう注意を。実際わからないのが幾つかありました。

 比喩と同じく、主人公もよい温かみを出しています。前向きで少年っぽい純粋な思考は、気持ちいいものがあります。
 ただしよくあるタイプの主人公のため、これといった特徴が無いのが難点です。このままでは、ダークさから共感しやすいB主人公に呑まれてしまいます。

 打開策としてあげるのは「明るい心」といったこれまたスタンダードな武器です。

 これがどんな逆境でも折れることなく通る、または困難に挫けそうになったときにも壊れなかったとき、たぶん誰もが主人公を認めざるおえなくなります。
 ですが曲がらないでつっきるというのは、実は凄く難しい。この主人公は、諸刃の武器といえます。



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あきゅろす。
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