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批評想草
第十八作目@
■FFZAC二次創作
■ストーリー
 セフィロスの兄弟たちの穏やかな日常を描いた作品。
長所:人物の可愛らしさ
短所:文章の弱さ

 空間ばかりで内容のあまり感じられない、息苦しい文章となっています。今後は、文章が与えるイメージに気を付けて、生き生きとした文章づくりをして下さい。

■批評

 まずは書き込みにありました、改行や見易さから入ります。
 この作品、改行が多く空間も広く感じ、とても読みづらかったです。少し読んではやめ、少し読んではやめを繰り返しました。(自分にも原因はあると思います。最近ぎっちりとした作品を読むことが多かったので)。

 でもこの作品には、「改行や見易さ」以前の問題としてあげられることがひとつあります。

 それは、「文章に魅力がないこと」です。
 空間に倒置された文章自体に読者を引き留める力がない。だから隙を感じ、読者は逃げてしまう。特に冒頭は隙だらけです。もし作品に触れる形が違っていたら、自分は最後まで読んでいないと思います。
 読みやすさうんぬんの前に依頼者様がすべきことは、「文章の魅力向上」です。

 では、どうして魅力の感じられない文章となってしまったのか、書きます。

 この小説を別のものに例えるならば、役者の動きを入れたミニ脚本です。
 状況描写、心理描写といったあらゆる描写が足りない。セリフに特徴がない。過去形が大量に使われている。どこかでみたような表現ばかり。
 そんな文章に改行をそえたとして、読み飛ばしやすくはなっても読みやすくはなりません。酸素濃度のうすい山で焚き火をするようなもの、逆に息苦しくなってしまいます。
 加えて、名詞を文末におく手法、体言止めの多用が、致命的なダメージを作品に与えています。

 この作品は、人物の名前を文末とすることが多いです。
 文末は、文章の性質を位置付ける最終エリアです。ここに疑問や驚愕や断定といったアクセントが置かれることにより、文が「性質、強さ、考え」を持ちます。そういった場所に名詞を置くのですから当然、文の「性質、強さ、考え」は減少します。
 また、体言止めは「物質をその場に置く」ような印象を人に与えます。実に投げ遣りで、そっけない手法なんです。

 ですから体言止めで表すことにより際立つのは「無機質、孤独、罵倒」といった生命兆候の少ない要素、乱雑な要素です。柔らかな生命力をもつ要素とは非常に相性が悪い。
 これは人物にもいえることで、体言止めで人物を動かすと、どうしてもその人物の生々しさが減少してしまいます。感覚的に言うならば人じゃない。作者の「駒」です。

 体言止めの多さ。
 これにより、動きとセリフの指定だけの文としか感じられないものとなっています。
 指定だけのである以上、作品は、他人の中にいる役者たちの想像力にすがりつくしかありません。

 文章の味を楽しむタイプの人、文章に身を任せて想像するタイプの人にとって、この作品は小説になりえない。

 後半は妹の思考が入ってくるのでまだ良いのですが、全体的にみると死んじゃってる! と言っても過言ではないと思います。

 では、そもそも何故。
 描写が少なく無機質な手法が横行し、魅力がなくなってしまったのか。

 最大の要因は文章に慣れていないこと、語彙が少ないことだと思います。
 これは、文章を書き続け或いは読み続ければ少しずつ身に付けられると思います。焦らずとも、自然に手に入る魅力です。

 そしてもうひとつの要因。
 それは、頭の中で展開される映像をきちんと観察していないことだと思います。

 依頼者様の想像世界には、色々なものがあるはずです。
 囁くように流れる空気、湖畔を泳ぐ魚の群れ、立ち尽くす少女の息遣い。それらが流れ、五感を刺激しているはずです。

 でも、今の依頼者様はその世界を垂れ流しているだけです。
 だから、映像をかきとめただけの脚本のような文章となってしまう。人物が駒のような扱いを受けてしまう。

 メモではなく観察を。焦らず、じっくりと世界を見渡すこと。
 また、出来れば感情ごと入り込むこと。

 そうすれば、自然と言葉は溢れてくると思います。
 あらゆる描写は、細かすぎるくらい浮かんでくるでかもしれません。セリフにもより感情が見えてくると思います。過去ではなく今起こっていることとして、それらを捕えられるはずです。

 そしてそれは、借り物の言葉ではなくて、依頼者様の言葉です。
 依頼者様は自分の作品を「拙い」と書かれましたよね。自分も、文章は「拙い」と思います。今回は特に、前半と後半の文章表現に差異があったことから、それが露呈してしまったと思います。

 ですがそれは、「成長の余地がある」ということでもあります。文章をよく読み、よく書き、自分の中で呼吸をする世界とゆっくり触れ合い、或いは対峙する。
 そうすれば少しずつ「拙い」は「美しい」に変わってゆくと思います。

 マイペースに少しずつ、力を身に付けていって下さい。

 今回は文章についてしか言及しませんでしたが、以上で批評とさせていただきます。

 最後まで目を通して下さり、ありがとうございました。


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あきゅろす。
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