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批評想草
第十二作目@
■DQ8の二次創作
■ストーリー
 ククールとゼシカが初めて出会ったときの話。

■総評
 描きたいものがあるのに、それを支える小説としての基盤が心もとない。
 二次創作というジャンルに甘えることのない創作を目指してほしいです。

■注意
 最初にお伝えしますと、自分は最近のゲームはプレイがしんどいものが多く、クリアーがなかなか出来ないのですが、ドラゴンクエスト8は数日でクリアーしたほど大好きです。
 ですがここでは、そういう要素は省いて、独自の創作と同等の扱いをするということを伝えておきます。
 一般の二次創作のレベルでは許されません。
 全く知らない人でも読むことに耐えるレベル。そして出来れば題材にした作品に興味をもつレベルを今後目指してほしいです。

 それを前ふりとして、批評を始めたいと思います。
 まず最初に文章の基本から。
 三点リーダの使用法と文章の頭に空白……はさておき、問題なのは文章力です。

 まずひとつ、語り手の意識が統一されていません。
 この小説は、三人称であるはずです。それなのに冒頭でゼシカの精神が簡単に転がりこみ、ククールの名前を思いだそうとする。動揺します。
 三人称の語り手は、例えるならば吟遊詩人です。もし詩人が軽やかに歌っている時に、キャラクターの名前を一瞬忘れたりしたら嫌ですよね。動揺します。
 ゼシカは〜ええっと〜ククール? ククール?のことを〜♪って歌う詩人嫌です、管理人は。
 語り手の意識はきちんと統一し、他のキャラクターとはきちんと区切るようにしてください。改行では区切ったことにはなりません。

 次に、場所の指定が分かりにくい。
 宿屋から場面が変わった時「いらっしゃ〜いの看板の前」という指定があります。
 ですがこの時「いらっしゃ〜い」が何か分からない。案内文なのか店なのか桂三枝なのか分からない。しかも結局、看板がどこにあるのか分からない。
 この場面指定では完全に不十分です。無い方がいい。

 また冒頭に「宿場・ドニの町」とありますが、これもあまりよろしくないです。宿場→ドニの町と視点が広がりますから、ドニの町の描写が必要になってしまう。この場合は「ドニという町の宿場」です。文章におけるカメラワークも意識してください。

 次に、言動の意味が分からない。

 例えば、冒頭。「乱闘」に巻き込まれ、ククールに「指輪」を渡されたとありますが、これが意味不明なのです。
 なぜ乱闘に巻き込まれ、指輪とはなんなのかが書かれていないから、乱闘と指輪がストーリーとして繋がっていない。

 ゲーム展開を少し忘れた管理人でさえ戸惑うのに、ゲームをしたことのない第三者はどう思うでしょうか。しかもこれ、本の一番前にある、一番読まれる可能性のある話です。試し読み作品として、危ないような気がしました。

 こういった説明と描写の不足が、場所や言動だけではなく、人物設定や物語の展開にまで侵食しています。これでは、お世辞にも小説と言えません。

 確かにゲームは、設定も物語も作家の創作前からあるものです。
 ですが、それに寄りかかり、自分の頭に浮かんでいるものをぽんぽん書いていては、小説は成立しません。小説は自分ではなく、他人に読ませるものなのですから、伝わらないと意味がない。
 二次創作という言い訳は、通用しません。

 文章の基本から発展して、次に小説としての面白味について書かせていただきます。
 この作品は、キャラクター萌のある人にはある程度受けるかもしれませんが、そのキャラクターに愛着が無い場合、つまらないと思われる可能性が多分にあります。実際、管理人は心がまったくときめきませんでした。
 なぜかといいますと、起承転結のない構成で出来ているのです。つまり、オチがなく、キャラクターの自己完結に終ってしまっている。悪くいいますと「あいつ気になる〜」というノロケ話だけなのです。

 ただし間違ってほしくないのですが、ノロケ話で面白く小説を描ききることは可能です。
 可能なんですが、それは文章としてのレベルをかなり必要とします。洗練された言葉、テンポ、絶妙な心理と情景の描写、あらゆる巧妙さと罠が必要です。
 言葉だけで物語なくとも既に心地よい……才能と経験で培われる最高級の武器です。

 が、はっきり言いますと依頼者様にはそれらがまだ身についていません。
 読書をし、多彩な描写を自身に溜め、文章を書くことでようやく肉となる力。それは依頼者様にはまだ足りていない。鍛練がまだまだ、必要なのです。
 まずは、起承転結のある作品を手掛け、それらを通して、どうすれば小説がより面白くなるのかを、研究して下さい。そうすれば、自ずと力がついてくはずです。

 依頼者様には、描きたいものがあるように思えます。

 ゼシカの女性としての豊かさと男性にも負けない凛とした性格、ククールの一見不真面目なのに実は一途で現実的なアンバランスの魅力。
 そして相反する二人の、微妙な関係。

 可愛らしく色っぽい思考描写から、それらが伝わってきます。ですが、今回掲げた小説としての技術の未熟さが、それらの壁となっています。
 壁を取り除き、自身の個性を生かし、誰もが楽しめる作品づくりをしてください。

 以上で書評とさせていただきます。少しでも役に立ちましたら、幸いです。


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あきゅろす。
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