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批評想草
第十一作目@
■異世界ファンタジー

■ストーリー
 青年、少年の二人組が、不思議な世界で冒険の旅をする。

■総評
 総合すると平均より上の力があり、安心して読めます。
 ただ、読者の意欲を阻害してしまう問題点がいくつかあるので、それらをきちんと認識する必要があるように思いました。
 こりかたまっている状態ですので、少し柔らかくなった方がいいと思います。
 読者が入りこみやすい余地を残し、独創性を身に付け、「読ませたい小説」づくりを心がけてください。

■批評

 まずは文章について批評しますね。

 全体的な力は少し上と言えます。
 国語力もありますし、テンポも一定でバランスが良いです。

 三人称であるのに一人称的すぎる、微妙なカメラワーク、誤った単語や四時熟語の使用、「らしい・だった・から・という」などの他人事すぎる書き方、誤字に些細な違和感を感じますが、それらが不快であったり、意味が分からず読むのをやめてしまうということは無いかと思います。

 ただし、小説的な魅力、面白味に欠けていて、読むのが少々しんどいです。実際管理人は、後半にいくにつれ、読み飛ばしがちになってしまいました。

 それは、魅力うんぬん以外、文章自体の説明臭さにも原因があるように思います。
 依頼者様の頭の中には壮大な世界が羽を広げているのだと、思います。

 ですが、世界の情報、それらの多くは読者には必要のないものです。
 必要のない情報をいちいち説明されるために、読むのがだんだんと億劫になってしまう。説明が細かすぎるので想像の楽しみも少なくなり、疲労してしまう。道徳にも堅いので、なんだか教師の独鞭のように感じました。
 折角、依頼者様は世界を用意しているのに、説明が世界を壊している。なんだかもったいない気がします。我儘かもしれませんが、戦闘シーンくらいの配分で、普段のシーンを描いてほしいです。

 でも、依頼者が今の状態でよいのなら、いいです。説明口調はなれればまぁ大丈夫ですし……漢字の次に入る()や、「主人公にかわって説明するが」という文に、語り手は本当に説明がお好きなのだな、と思いましたし。携帯小説は書いて楽しけりゃナンボですから。

 ただそれで、読まない人間もいるだろうということを認識してほしいです。そしてそれはけして少なくないということを。
 管理人は京極夏彦のような説明口調の小説の小説が好きですが、この作品の説明臭さには疑問を得ました。つまり、それくらいの濃度且つ意味を感じられないのです。

 これを問題ととるか、個性ととるかは、依頼者様にお任せなのです。

 次は、「凡庸さ」について書きます。これから、設定、キャラクター、展開についてあげますが、全く共通の指摘をしていますので、それを踏まえて読んでください。

 えと、設定ですが、キャラクターや世界観などの基盤がとてもしっかりしており、安定しています。ああ、こんな感じだろうなというイメージがすぐ湧いてきます。ですがそれは、裏を返せば独創性・意外性・驚きが無いと言えます。
 例えば、「ギルド」「ハンター」といったもの。これらはすでに手垢がついていて、新しさを感じにくいものです。工夫を幾度も重ね調理しなければなりません。
 ですがそれが、殆んど感じられないのです。これではすぐに飽きられてしまうし、なんだか陳腐です。

 キャラクター。これにも新しさを感じませんでした。
 目や髪の色、装飾品など、よく作られているにはいます。性格や仕草もきちんと描かれている。

 ですが、皮肉なことで、それ故にライトファンタジーの借り物という雰囲気が浮彫りになってしまっているのです。
 人物を可愛く、かっこよく描く力がある分、残念に思います。
 主人公と相方の位置関係も曖昧です。主人公は情報、相方は戦闘……と分けないと特筆した特徴を感じられません。現に、二方が弾きあい、魅力が半減しているように感じました。
 凄みもよく分からないのです。凄いよ、凄いよと言われているのは分かるのですが、想像の余地があまり無い、他人事のような表現なので、凄さがうまく伝わらない。

 展開も、同じく。
 過去からの戦闘前振り、宿屋いって宿屋の娘と交流……よくある展開といった感がいなめません。予想通りのレールに乗っかりすぎています。キャラクターを気継に走らせるなど、脱線を少しさせる必要があるように思います。
 また、伏線の張り方が少々乱雑です。
 例えば、宿屋の娘の秘密。双剣の戦鬼の秘密がきちんと根深く張られていたのに対し、おろそかです。なんだかパッ浮かんだ話を無理に組み込んだという印象を受けてしまいました。伏線はどのようなものでも深く丁寧に張ってください。

 展開への引き込み方もちと乱雑です。作者には都合が良いかもしれませんが、読者には強引すぎてついていくのが辛いです。キッカケという起爆剤を巻き散らした上で点火! して下さい。

 話がちと長くなりましたね。

 まとめますと、「凡庸すぎる」といえます。
 読者が戦闘を多分に含んだファンタジーを求める時、それは「非日常」を求めていることとほぼ同じです。今の状態では、非日常が少し足りません。

 勿論、見たことがない世界をつくれというわけではないのです。ただもっと、トラップをつけてほしい。ほんの少しでよいので、新しさを加味してほしい。それだけです。

 もし、どうすればよく分からないという場合。そのときは、くろくま様の感情基盤として、そしてキャラクターの感情を基盤として、描いてください。
 他人の感情は非日常ですから、感情から描けば物事は非日常にならざるおえないので。

 「説明」そして「凡庸」をあげ、以上で書評とさせて頂きます。
 お付き合いいただき、ありがとうございます。少しでも役にたちましたら幸いです。
 鍛練頑張ってくださいね。


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