批評想草
第九作目A
携帯初心者さんによく見られる傾向の欠点が目立ちます。
文章の始めを一マスあけない・三点リーダ「!」「?」などが多すぎる・ギャル文字使用・記号での感情表現・「」の最後に「。」の使用・「が」「の」連続使用などの基本的文章作成における欠点。
文章を作成する時の流儀はきちんと守ってください。
また、改行・三点リーダや「!」などの効果が多い問題ですが、きちんと見直さなければなりません。
改行、三点リーダや「!」「?」は記号なので、多すぎると雰囲気を壊してしまいますし、文章の味わいを殺してしまいます。人物や意味も薄まってしまいます。
回想などに使用するのも出来れば避けるようにしてください。
常に基本にそって文章を作るよう、癖を付けてください
次に、上記の指摘以外の文章力における注意にまいります。
比喩かな? とも思ったのですが、そうは思えなかったので指摘しておきます。
時折、日本語の使い方が間違っています。
例えば「淵を切ったように」とありますが、これは「堰を切ったように」じゃないかな? と。
戸惑いを読者に与えないよう、的確な言葉を選べるようにしてください。
また、二重の意味を持つ文章が多く、どちらのイメージでいけばいいのか迷うことがありました。
例えば、「円のように丸くふくらんでくる」という文章。一見どこが、と思われるかもしれませんが、これは「腹痛が痛い」と同じです。
要するに、同等のイメージを与える言葉を並列に繋げてしまっているということ。
またこの例文の更にいけないところは、イメージが平面→立体へと移行してしまっていること。物語がぼやける部分なので、立体→平面でなければならないです。
場面によって次元を統一してください。
この作品は、比喩を多分に使っています。そのためよく雰囲気は出せているのですが、たまに意味が汲み取れないことがあります。
比喩を使うのは良いことだと思うのですが、他人の想像力によりかかる効果ですので、流れに沿って使うようにしてください。
別の話ではあるのですが、似たような問題だと思ったので加えますと、文章イメージの混線が起こる組み合わせを選んでしまっています。
例えば「自身の頭を割らんがごとく抱え込み」とありますが、これでは頭を叩いていると勘違いしてしまいます。「自身の頭を押しつぶすがごとく抱え込み」または「頭を抱え込む、自身の頭を割らんが如く」という風に、選択を正しく行えるように力をつけてください。
こういった要素から、今回は文章の力加減が安定してないように思いました。文章力は、揃えるようにしてください。
描写についてですが、説明の不足が見られます。
最初に異常な事件が起きているようなのですが、とても異常に思えません。異常性をもう少し描いてほしかった。
また、少女が屋敷に迷い込むシーン。黒い屋敷がどう黒いのか分かりません。闇で黒いのか、壁が黒いのか。
このような曖昧な説明が多数見られ、無い方がよいと思ってしまうので、説明するところはきちんとしてください。
また「綺麗」の連発は「綺麗」を固定することが出来ません、むしろ逆効果です。単語での描写は、小出しにはせず大事にしてください。
構成としては、エピソードや感情の重複が見られ、何度も読み返さなければなりませんでした。
場面転換も「セリフで始まるもの・終わらせるもの」「擬音での切り替え」が多く、混乱が生じやすいです。
流れも途切れがちで、複線が荒いために緊張感が半減してしまっています。エロスとプシケーの神話が出たので、プシケーのエロス探しの旅も盛り込むのかな、と思ったらなんだか違う。
構成としては、もっと練るべきだったのでは、と思います。
また、ラストですが、少し味気なかったです。手紙だけで自己完結してしまっていて、手紙の主の気持ちが汲み取れなかったです。
それとともに、記憶の一部喪失原因、母の死、過去との関係、なぜ嘘をついたのか、薔薇はいつから咲いたのか……など多くの謎も消化しきれていないので、なんだか読んでいて置き去りにされているように感じました。
感性としては「薔薇=綺麗」「死体=綺麗」という固定観念に囚われすぎているように思いました。
感性における固定観念はマンネリにつながってしまうので、主人公が母の死により薔薇恐怖症だとか、屋敷の棺にあるものは汚かったなどのストーリーに合わせて観念を再構築するようにしてください。
じゃあ、まとめを。
色々と書きましたが、第一作目としては出来ている方だと思います。「小説」らしいですから(小説らしく書くということって案外むずかしいんですよ)。
依頼者さまは、勉強もそれなりに習慣づいているようなので、基本を見直せばこれからグンと成長します。描きたいものも定まっているようなので、それらの知識を思う存分どんどん掘り下げていってください。
ガンバです。
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