絶チル小説 H 皆本は部屋から去り、場には智尾と蕾見しかいなくなった。 蕾見「別にあの子がいてもいいんだけど、まぁいいわ…。」 さっきの若々しく振る舞っていた口調とは一転、少し声のトーンを落とし、真剣な口調となる蕾見。 ソファーに腰掛けている智尾は、もちろん何の話なのかは知らず、蕾見にその事を聞く。 智尾「で、僕に話とは?」 蕾見「率直に聞くわ。あなた、一体どこから来たの?」 蕾見の話…それは、智尾の詳細だった。 蕾見「私は紫穂ちゃんと同じように、サイコメトラーでもあるの。あなたを透視したら、完全に一部分の記憶が無くなってたの。」 この質問に対し、智尾は不安な口調になりつつ喋った。 不安になるその理由は、智尾に答える選択肢が1つしかないため。 智尾「それが……、どうしても、思い出せないんです…。自分がどこで生まれ、どうやって育ち、どう過ごしていたのか…。でも、自分に超能力があるというのは、何でか知っていたんです…。…それで気付いたら、バベルの前にいたんです…。」 智尾は、自分が覚えている限りの自分の存在を全て、蕾見に話した。 蕾見「………、…まぁ、それが知っている限りなら、仕方ないわね。」 智尾「すいません…。」 蕾見は唸りを上げながら考え、少しは納得した。 蕾見「で、もう1つ聞きたい事があるんだけど…。」 智尾「はい?」 蕾見はまだ聞きたい事柄があるようで、それも智尾に伝える。 そして智尾に寄り添うように、蕾見もソファーに腰を下ろした。 しかし朝の薫とは違い、女の子独特のにおいはせず、代わりに化粧水の匂いが智尾の鼻をくすぐった。 智尾「………。」 蕾見は智尾の顔をじっと見つめ、こう言った。 蕾見「あなたさ……チルドレン達とはどの辺まで行ったの?」 智尾「はぁいぃぃ!?」 緩み切った蕾見の口調から繰り出された質問は、それもまた緩み切ったどうでもいい質問だった。 蕾見「「強がるなよ」とか言いながら抱きしめたりとか、「素顔の方が綺麗だね」ってセリフで口説いたりとかぁ、「ずっとそばにいてあげる」って言いながら唇を奪ったりとか、そんなことまだしてないの?」 智尾「はわわわわわわ……!!!そそそ!そんなことし、しししてませんよ!!」 智尾は耳に至るまでの顔を赤くし、同時に否定した。 そんな智尾の気を察し、蕾見は重要かつどうでもいい助言をした。 蕾見「君は少しチルドレン達を気にしすぎよ。もっと楽に接しないと。」 智尾「は、はぁ…。」 蕾見「女の子っていうのは、知ってる人なら下の名前で呼ばれても、別に怒ったりしないからね。君の当面の目標は、あの3人を下の名前で呼べるようになりなさい!」 蕾見のくだらなくもためになる熱弁は終わった。 その後蕾見は眠くなったと言い、自室に篭ってしまった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |