短篇集
3
思わず当初の目的の場所を素通りしてしまったのは、何の所為だろう。
新しいブーツを履き慣れたくて、歩きたかったのかもしれない。
運動不足をここぞとばかりに解消しようと思ったのかも知れない。
どうせやる事も無いからと、暇潰しのつもりだったのかも知れない。
ただ、何より。
ふわふわと漂う雪を、見ていたかった。
当ても無く、歩き始めた。
ただ、本当に目的も無いから、真っ直ぐ大きな道を歩くより無かった。
歩道は無くなり、狭い路肩を歩くと、トラックが邪魔そうに避けて走り去っていった。
邪魔、だろうな。
世の中に何の寄与も出来ない人間が、こんな所を歩いていても、邪魔なだけだろう。
人は、目的無しに歩いていても、無駄なだけなんだ。
雪のように、ただ自然にどこかに向かう事は出来ない。
強引な意思など無いから、雪は儚げで、美しいのかも知れない。
雪のように、なりたいなぁ…
風景に見覚えが無くなる。
どこまで歩くつもりだろう。
雪のように、ふわふわと。
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