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短篇集

 思わず当初の目的の場所を素通りしてしまったのは、何の所為だろう。

 新しいブーツを履き慣れたくて、歩きたかったのかもしれない。

 運動不足をここぞとばかりに解消しようと思ったのかも知れない。

 どうせやる事も無いからと、暇潰しのつもりだったのかも知れない。

 ただ、何より。

 ふわふわと漂う雪を、見ていたかった。


 当ても無く、歩き始めた。


 ただ、本当に目的も無いから、真っ直ぐ大きな道を歩くより無かった。

 歩道は無くなり、狭い路肩を歩くと、トラックが邪魔そうに避けて走り去っていった。

 邪魔、だろうな。

 世の中に何の寄与も出来ない人間が、こんな所を歩いていても、邪魔なだけだろう。

 人は、目的無しに歩いていても、無駄なだけなんだ。

 雪のように、ただ自然にどこかに向かう事は出来ない。

 強引な意思など無いから、雪は儚げで、美しいのかも知れない。

 雪のように、なりたいなぁ…

 風景に見覚えが無くなる。

 どこまで歩くつもりだろう。

 雪のように、ふわふわと。

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あきゅろす。
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