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短篇集

 最初はただ、いつもの買い物だった。



 一日中薄暗い部屋に閉じ篭っていると、現実に置いて行かれそうだ。

 それが恐ろしくもあり、心地良くもあり。

 『引きこもり』とはよく言ったモノで、確かに引きこもれば引きこもる程、外に出たくなくなる。

 でも本当はきっと、出してくれる何かを待っているんだ。


 私はそうはいかない。待ってたら餓死する。

 何より自分で思っている以上に人好きなのだ。

 『ひとりぼっち』はとりあえず中断して、外出の準備。

 適当に服を引っ張り出し、温かさ重視のコートを羽織り。

 昨日買ったばかりのブーツを履いた。

 新しい靴に慣れる為などと自分に言い聞かせながら、履きたいだけだ。

 大体、靴を買うのはあまり好きではない。

 自分に合う靴がなかなか無い。買っても靴ずれを起こすのがオチ。

 それがこの靴はぴったり…くる気がした。無理矢理気に入ろうとしているだけかもしれない。

 だが、そこはロングブーツ。今日の様な寒い日には持って来いだ。

 何の用があるわけでもない。ただ、飲み物が底を尽きそうなのと、甘いものが食べたい衝動に駆られて、近所のスーパーに向かった。



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