短篇集
1
最初はただ、いつもの買い物だった。
一日中薄暗い部屋に閉じ篭っていると、現実に置いて行かれそうだ。
それが恐ろしくもあり、心地良くもあり。
『引きこもり』とはよく言ったモノで、確かに引きこもれば引きこもる程、外に出たくなくなる。
でも本当はきっと、出してくれる何かを待っているんだ。
私はそうはいかない。待ってたら餓死する。
何より自分で思っている以上に人好きなのだ。
『ひとりぼっち』はとりあえず中断して、外出の準備。
適当に服を引っ張り出し、温かさ重視のコートを羽織り。
昨日買ったばかりのブーツを履いた。
新しい靴に慣れる為などと自分に言い聞かせながら、履きたいだけだ。
大体、靴を買うのはあまり好きではない。
自分に合う靴がなかなか無い。買っても靴ずれを起こすのがオチ。
それがこの靴はぴったり…くる気がした。無理矢理気に入ろうとしているだけかもしれない。
だが、そこはロングブーツ。今日の様な寒い日には持って来いだ。
何の用があるわけでもない。ただ、飲み物が底を尽きそうなのと、甘いものが食べたい衝動に駆られて、近所のスーパーに向かった。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!