短篇集
4
見慣れぬ風景が続く中、ある物が目に飛び込んだ。
谷。川でもあるのだろうかと覗き込む。
そこには水などなかった。
線路。それを飲み込むトンネル。
電車が通っていた事を思い出すと同時に。
ここから飛び込んだら。
とんでもない想像を振り払い、更に前に進んだ。
今の場所、雪が積もると何だか絵になりそうだな、と思ったりした。
山に向かって歩いているようだったが、風景が開けてきた。
見慣れた看板はチェーン店のコンビニ。
いい加減足が疲れてきた。靴擦れも起こしそうだ。
顔も冷たい。温かいとは言えない手で触れても、手の方がよほど温かく感じる。
そろそろ、引き返そう。
コンビニを通り過ぎて、横断歩道が見えた。
何となく待ってみる。
同じ道を引き返すより、対向車線の方が風景も変わる。
それともあの奥の道を行ってみようか――
振り返ると、少し離れた所に病院があった。
『内科・神経科』――何となく文字をなぞる。
「寒いねぇ」
その時、突然話しかけられた。
私など誰も知らない筈の街で。
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