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短篇集

 見慣れぬ風景が続く中、ある物が目に飛び込んだ。

 谷。川でもあるのだろうかと覗き込む。

 そこには水などなかった。

 線路。それを飲み込むトンネル。

 電車が通っていた事を思い出すと同時に。

 ここから飛び込んだら。

 とんでもない想像を振り払い、更に前に進んだ。

 今の場所、雪が積もると何だか絵になりそうだな、と思ったりした。


 山に向かって歩いているようだったが、風景が開けてきた。

 見慣れた看板はチェーン店のコンビニ。

 いい加減足が疲れてきた。靴擦れも起こしそうだ。

 顔も冷たい。温かいとは言えない手で触れても、手の方がよほど温かく感じる。

 そろそろ、引き返そう。

 コンビニを通り過ぎて、横断歩道が見えた。

 何となく待ってみる。

 同じ道を引き返すより、対向車線の方が風景も変わる。

 それともあの奥の道を行ってみようか――

 振り返ると、少し離れた所に病院があった。

 『内科・神経科』――何となく文字をなぞる。

「寒いねぇ」

 その時、突然話しかけられた。

 私など誰も知らない筈の街で。

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