RAPTORS
3
翌朝。
一行は司祭に礼を言い、寺院を後にした。
目指すは西海岸。
その辺りにお目当ての人物が居るらしい。
「今日はどこに泊まるの?」
「…さっき出たばかりじゃない」
黒鷹が目を輝かして訊いた言葉を、さらっと茘枝がかわす。
今日は丸一日歩く予定。
「だって、泊まる所がスイーツかどうかでやる気も違うじゃん」
「安心しなさい。好きなだけ鶸を殴っていいルームサービスがあるから」
「予約してあるのか?」
隼も話に入ってきた。
「ホテルの?」
「ばぁか。鶸の、だ」
「そう言えば、ホントに今日会えるの?」
「…いい賭けになるわね」
つまり、確率は低い。
「会えねぇんだろうな、どうせ」
「俺もそう思う」
隼が吐き捨てるように言った台詞に、黒鷹も同調した。
「ま、私の威厳に賭けて会わせてあげましょ」
茘枝は自信満々に言ったが。
「元から無ぇモン賭けてんじゃねぇよ」
隼にあしらわれた。
「あら失礼ね。ちゃんと根拠があって言ってるのに」
「根拠?」
茘枝は数歩後ろを歩く縷紅をチラっと見る。
「囮捜査…なんてね?」
「はぁ?」
「ほら、もうちょっとで海が見えるよ」
遠く、青い水平線が覗いた。
それが姿を現したのは、沿岸を歩き出して数時間後の事だった。
四人とも、感づいてはいたのだ。
――尾けられている、と。
その気配が、消えた。
誰からともなく、足を止める。
空気が凍りついた。
そして。
キィィンと、金属のぶつかり合う音が、海岸にこだました。
飛び道具を、黒鷹の抜いた刀が薙ぎ払った音だ。
「来やがった」
一連の早業の後、黒鷹は不敵な笑みを浮かべて言った。
そして間を置く事無く、次の金属音が響いた。
縷紅の細い刀身に、同じ様な剣が重なっている。
「私目当てか?」
クロスされた剣の向こうの顔に縷紅は問い掛けた。
答える気が無かったのか、絶命するのが先か、返答を聞く事は無かった。
茘枝が投げた苦無が、頭を直撃していた。
その後ろで隼が刀を交えていた。
黒鷹を目掛けた襲撃だったが、黒鷹に剣が届く前に、隼が止めていたのだ。
「甘いな」
隼の挑発に、手に感じる力が強くなった時――
ドス、と低い音がして、片方の剣はずるずると落ちた。
黒鷹が横腹に刺した刀を引き抜く。
「天の奴らだよな」
血糊を払いながら、黒鷹が言った。
「…まだ、居る」
隼が鋭い目で辺りを見回して、低く言った。
「囲まれている。大勢だ」
「何――!?」
人を尾行するのに大勢なのか、それとも援軍を呼ばれたのか。
考える暇は無かった。
どっと大軍が押しかけ、四人は戦いに散った。
黒鷹は最初に刀を交えた相手の顔を見て、目を見開いた。
見覚えのある顔、そして刺青…。
その相手も同じ――否、それ以上の驚きを顔に表している。
「鶸っ!?」
黒鷹は叫んでいた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!