RAPTORS
1
七年前に通った道は、あの頃と殆ど変わっていなかった。
真実を見たくてこの空を渡ったあの日。
あの頃はこんな運命など想像もしなかった。
小刻みに震える小型の飛行船の振動。それもあの時のまま。
北側に、空に浮かぶ小島が見えた。
故郷の東谷(あずまや)島。
東軍の本拠地だ。
そもそも、東軍は地の民の子孫だ。
何百年と続く、天と地の戦争。その中で天に捕まり捕虜となった兵や、攫われて奴隷にされた人々が集結し叛乱した――それが東軍の始まり。
今となっては憎しみ合いの連鎖でしかないのでは、そう縷紅は思う。
それを断ち切るのが自分の役目ではないだろうかと、この数年考えるようになった。
それは天と地双方の国と東軍を知るからこそ。
そして、自分に流れているのは紛れもなく天の血だからだ。紅い髪がそれを証明している。
実際のところ、自分はこの国が好きなのだろうと思う。
宇宙(そら)に近いこの国が。
飛行船は静かに着陸した。
辺りは緑の草原。その向こうに、囲いが張り巡らされた 集落がある。
それが東軍の街だ。
縷紅は飛行船から降りた。
強い風が吹き付ける。
風に、被いている衣が攫われないように内側から掴んだ。
そうしながら野原を歩く。
ここを駆け抜けた自分は確かに幼かった。
世界は変わると信じていた。自分は変えられると思っていた。
犠牲の数など知らずに。
今ここを歩くのは、生き抜いて欲しい人がいるから。
世界は変わる。
世界を変える。
そしてそれ以上に、“守る”ということを知ったから。
自分にとっても、東軍にとっても、そして彼らにとっても、これが最後の戦いになるように。
七年前に軍の扉を叩いたその手で。
東軍の扉を叩いた。
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