RAPTORS
1
出発して半日。
黒鷹にしてみれば、それは見覚えのある道だった。
「…これって、今朝来た道じゃ…?」
司祭の住む寺院から、城跡への道。それを一行は歩いていた。
「遠いからさ、あそこで一泊しようと思って」
と、茘枝。
「鶸が居るのもこっちなんだ?」
「だから向かってるんじゃない」
「どうやって見つけたの?」
「それは企業秘密よ」
「企業…?」
「な訳ないだろ」
本気で考えてしまった黒鷹の頭を、隼が叩く。
夕日に、空が赤く染まりつつあった。
再びこの建物の前に立った黒鷹と隼。
初めての縷紅は、どんな所かと、辺りを見回している。
古い寺院の周りは雑草だらけ、そして奥は手入れのなされていない木々が並んでいる。
先頭に立った隼が、扉を叩いた。
扉が開き、司祭の顔が覗く。
「悪い、また今夜も世話になる」
「隼か」
「今日は四人で来た。黒鷹と――」
「はぁ〜い、茘枝でぇっす。お久しぶりぃ、司祭のおじちゃん!」
隼の言葉をさえぎった茘枝の自己主張に、司祭はにっこりとした。
一方で露骨に煩わしそうな顔をした隼が、続ける。
「…あと、新入りが一人。縷紅って名だ」
「初めまして。お世話になります」
縷紅と司祭は握手をし、縷紅は生真面目に頭を下げる。
「どうも、隼がお世話になっております」
「生憎、まだ世話にはなってねぇよ」
隼は苦い顔で言って、ずいと中に入った。
背後での茘枝と司祭の話が聞こえる。
「実はね、鶸が見つかったのよ!」
「本当ですか!?それは良かった…」
「うん、それで今お迎えに行く所。今日は遅くなるから、ここに寄ろうと思って…」
「それは、それは。どうぞごゆっくりなさって下さい」
「ありがと。いつも突然でゴメンね」
「いえいえ、一人でこんな所に居るのは寂しいものですから、嬉しゅうございます」
隼は寝室に入った。
縷紅と黒鷹が既に入っており、それぞれ自分が寝る寝台を決めている。
正確には、黒鷹が一方的に決め付けているのだが。
「あ、隼は俺の隣」
黒鷹は部屋に入った隼に気付いて言った。
「なんでそう決まってんだよ」
別にどこでも良かったが、決め付けられるのも面白くないので、反抗してみると。
「だって、危ねぇじゃん、朝」
…一応、黒鷹なりに気を使っているようだ。
「俺はお前の安全装置か」
「だって、縷紅だと危ないじゃん!」
“どうだっていいよ、こんな奴”とは、流石に隼も口には出さなかった。
「危ないって…何が危ないんですか?」
自分の名を出され、興味をそそられた縷紅。
にやりと隼は冷たく笑って言った。
「じゃあ明日の朝、お前が王子をお起こししろ。よく解るから」
「……?分かりました」
「いや、駄目っ!!危ない危ないっ!」
「……はぁ」
訳が解らず生返事をする縷紅。
「見れば解るから。なぁ隼、お前じゃないと駄目だから……迷惑だとは思うけど…」
「そんなマジに頼むな。気色悪い」
ますます混乱する縷紅。
何より、武器を持たずに寝ようという考えは、この二人には浮かばないらしい。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!