RAPTORS 3 「つい腹減った八つ当たりで鶸殴っちゃったー。悪いな」 いつものように、全く悪びれる様子は無い。 「まぁ、せっかく帰って来たんだから殴られるくらいどうって事無ぇよ…って、そんな訳無ぇだろ!俺殴ったら腹いっぱいになるのか!?」 「それいいなぁ!一家に一台お前が有ったら便利だな!」 「俺ってば飢餓防止に役立つのかぁ…ってオイ」 「帰って早々、コントですか」 早い夕食を採りながら、にこやかに縷紅が言う。 「ネタが訳分からん上に、ボケとツッコミが逆だな」 隼が冷めた感想を言う。 「誰がコントだ、誰が」 迷惑そうに鶸が言って、一応コントは打ち切られた。 「それにしても、早いお帰りでしたね。本当に治ったんですか?」 「それがなぁ、隼と羅沙が荒治療してくれたお陰で、必要以上に早く治っちまったんだよなぁ」 「治してやったんだろ。感謝しとけ」 隼が無感情に言う。 「…羅沙とは…?」 縷紅が聞き馴染みの無い名を尋ねれば。 「ああ、島に住んでる、鶸のダチ」 「そう言えば…茘枝が言ってましたね」 「めちゃくちゃ世話になったからな、あの家には」 あくまで羅沙本人の事ではないらしい。 「あ、そうだ鶸。羅沙から伝言」 「…俺に?」 心外だったらしく、気付くのに一瞬の時間を要した。 「どうせ、良い事じゃねぇだろ」 「一度でいいから、島に帰って来い、って」 「……何で」 「華南も会いたがってたぜ。もし国が出来て余裕が出来たら、遊びに来いって」 複雑な表情を浮かべる鶸。 黒鷹にはその理由が分からない。 「何だ、嫌なのか?」 「――そうじゃない!そうじゃないけどっ…」 俯く鶸に、唯一事情を知る縷紅が穏やかに話し掛けた。 「私が言える立場ではありませんが…。少なくとも島の人達は“見放された”とは思っていませんよ」 「…そうかなぁ」 縷紅は頷いて、続けた。 「州侯とか、国の役職以前に、鶸自身が島の人達に好かれていたのではないですか?」 「……」 「何?お前嫌われてると思ったの?」 黒鷹が目を丸くして言う。 「バカだなぁ」 「んなっ!!?」 「少なくとも華南や羅沙はそんな事言ってなかった。お前、絶対帰れよ?そんなカン違いされてたら、あの二人も可哀相だ」 「…そうなのかなぁ」 「そうなんだって」 「…そうだな」 言って鶸は、やっと笑う。 「なんか、懐かしいな。早く帰りたくなった」 [*前へ][次へ#] [戻る] |