RAPTORS 1 闇の中を駆ける。 光は遠い。何も見えない。 ただ焦る思いだけがある。 早く――早く。 間に合って欲しい――間に合え!! 「衝動だけでどうにかなると思っているのか?」 どぎり、と心臓が跳ねる。 緑葉は辺りを窺った。馬を駆ける速度を緩めぬまま。 それでも姿が見えない事は分かっている。 声の主は楜梛。 「またからかいに来たのですか?それとも始末しに?」 姿の見えぬ相手に問い返す。 「別に。味方として助けてやるだけさ」 「味方?」 思わぬ返答に警戒心を強める。 「一体、どの立場からの味方と言うのです…!?」 本心なら解っているのだろう。それなのに。 天の立場と言うのなら、危険だ。 守りたい人を、危険に曝す事になる。 「心配するな。お前自身の味方だと言っている」 半笑いの声。本心が掴めない。 「それは…」 「後ろ、尾けられてるって知ってるか?」 思わず今来た道を振り返る。 当然、目的の存在は見えない。 「見るな。気付かれるぞ」 ――誰だろう。 素朴な疑問は、少し切ない想いを残して。 「一人で天に入りたいだろう?俺の言う事を聞くと良い」 「…信じて良いのか?」 「それはお前自身が選ぶ事だな。ま、罠なんか無い。いつもの道楽さ」 「道ら…全く、気楽なお人だ」 気を損ねて皮肉を言う。 こちらは命懸けだと言うのに。 「それで?どうする、信じるか?」 闇が嘲笑っている。 お前など無力だ、と。 何も出来やしない、野垂れ死ぬだけの存在だ、と。 緑葉は虚空を睨みつけた。 「俺は、天に行く。あんたが道楽のつもりでも、それを、後悔させてやる」 「いい覚悟だ」 鼻で笑う声。 「林に入れ。巻ける様、案内してやろう」 闇が続く。 この先の光を、今度は、自ら切り開く為に。 “仲間”の為に。 [次へ#] [戻る] |