[携帯モード] [URL送信]

RAPTORS


 下り坂を駆け降りる。
 暗闇の中、疾風の如く。
 気持が先走り、足が連られ。
 止まる事を知らない。
――得体の知れぬ不安。
 早く、早く行かねば、と。
 間に合わない。
 ぞっとする。
 そしてまた足を速める。
「さながら風の精ねぇ」
 唐突に耳に入った声に、反射的に身構える。
「私よ?黒ちゃん。奇遇ね、こんな所で会うなんて」
 闇の中から茘枝が現れた。
「奇遇?ホントに偶然?」
 まさかずっと見られていたのではないか、と。
 茘枝は肩を竦めて、意味深に笑う。
――止めないのか。
「私は地に用があるの。急ぐから先に行くわよ?」
 言って、地面を蹴る。
 黒鷹は慌ててその背を追う。
「黒ちゃんはどうして行くの?」
「多分、茘枝と同じ理由。…やっぱり、お前が出るって事は、あっちは相当切羽詰まってるんだな?」
 茘枝は追ってくる黒鷹を振り返る。
「…いつからそんな勘の鋭い子になっちゃったの?」
「な…悪いか!?」
「だぁって、そんな黒ちゃん可愛くなぁい」
「……」
 そうは言われましても…、な心境。
「…お、俺ももう大人なんだからっ!いつまでもガキ扱いするなって!!」
「やだぁ、黒ちゃんはずーっとそのままがいいっ!」
「…えー…」
 顔をしかめる黒鷹に気付いて、茘枝はふっと笑う。
「アンタだけは、大人とか子供とか…男とか女とか、そんな分類に当て嵌まらないもの。“黒鷹”というだけの存在」
「……」
「だから、そのままで…ね?」
 唯一。
 唯一、以前から“本当の自分”に気付き、接してくれた人。
「急ごっ!!」
「勿論!」
 更にスピードを上げて。
 自分を待っていてくれる存在に向かって。




[*前へ][次へ#]

4/11ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!