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TRPGリプレイ
1ー25
 時は少し遡って、正人とミナが夏祭りに向かっていた頃。
 キューは上田家にて、ここ2〜3日の経過について自問していた。
 なぜ、こんなことになったのか、と。
 目の前には皿にうず高く盛られた食事がある。
 米をドサーとよそい、野菜をバサーと和え、肉をドカーと盛った、キューの夕飯である。
 作った者の性格そのままに、豪快な食事であった。
 よほど大型の犬でさえ、食べきれるかは疑問だ。
 あまりの豪快さに、キューは思わず変な汗をかいてしまう。

(私だからいいようなものの、普通の犬だったらどうするつもりだったんだ……)

 そんな感想を抱きながら、キューは目の前の人物に目を向ける。

「今日はごちそうだよ、たくさん食べていいからね」

 カラカラと笑う勝美がキューの頭を撫でながら、呼び掛けた。
 酒が入っているらしく、顔が赤い。
 目線を夕飯に一端移し、再び勝美を見るキュー。

(正直、いっぱいいっぱいだ)

 声に出して言いたいのをこらえ、ただ撫でられるがままになる。
 あれは昨日の夜のことだ。
 一昨日と同じように縁側にしがみつき、ミナと話していたところ、その声を勝美に聞かれていたらしい。
 そして、風呂場に駆け込んだ勝美がキューを発見した。
 と、今のこの状況の始まりは、これで間違いないだろう。
 自分が喋っていたのがバレたのかと冷や冷やしたが、ミナが一人で喋っていたと勘違いしてくれたらしい。
 そのおかげで、正体を気取られずにすんだ。
 その日以来、勝美はキューにも世話をやき始めた。
 食事も寝床も、基本的に自分だけで賄えるので、必要なかったのだが。
 勝美があまりにも世話をやこうとするため、ついいたたまれずに受け入れてしまい、今に至っている。

「あんた、ミナちゃんとこの犬かい? ミナちゃんはいい子だねえ、あの子に飼われるなら、あんたも幸せだよ」

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